心臓
★1.龍の心臓。
『ヴォルスンガ・サガ』19~20 シグルズは、ファーヴニルの変身した龍を殺し、その心臓を炙る。心臓の血をなめると鳥たちの言葉がわかるようになり、「龍の心臓を食べれば誰よりも賢くなる」との教えに従って、シグルズは心臓の一部を食べる。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第9話 子を望む王が、物知り老人の教えで、海の龍の心臓を生娘に料理させる。心臓を煮る香りが立ちのぼると生娘は身ごもり、部屋の家具もふくらむ。王妃は心臓を食べ、4日後に妃と生娘はともに男児を産む。
★2.魚の心臓。
『トビト書』(旧約聖書外典) サラはこれまでに7人の夫と結婚式をあげたが、夫たちは皆、その夜、まだ夫婦関係を結ぶ前に、悪魔アスモダイオスによって殺された。天使ラファエルがサラを救うべく、旅の青年トビヤを彼女の家へ導く。トビヤはサラと結婚式をあげ、ラファエルの教えにしたがって、魚の心臓と肝臓を香の灰の上でいぶす。その匂いで悪魔は逃げ去り、トビヤとサラは皆に祝福されて夫婦になる。
*黄金の鳥の心臓と肝臓を食べる→〔枕〕5の『二人兄弟』(グリム)KHM60。
★3.恋人の心臓。
『デカメロン』第4日第1話 公爵タンクレディは、娘が近侍の青年と恋人関係になったことを知り、青年を殺してその心臓を金の大盃に載せ、娘に送りつける。娘はそれに毒液を注いで飲み、死ぬ。
『デカメロン』第4日第9話 騎士が妻の愛人を殺してその心臓を料理し、何も知らぬ妻に食べさせる。料理を食べおわった後で、それが愛人の心臓であることを知らされた妻は、高所から身を投げて死ぬ。
★4.心臓を傷つける。
『王女の誕生日』(ワイルド) 王女の12歳の誕生祝いの余興に、森の醜い侏儒(=小人)が踊りを見せる。王女は喜び、「もっと踊りを見たい」と言って、侏儒を宮殿にとどめ置く。侏儒は、生まれて始めて宮殿で鏡を見て、自分の醜さに驚いて倒れる。侍従が王女に「侏儒は心臓が破れたので、もう踊れない」と説明すると、王女は「これから私の所へ遊びに来るものは、心臓のないものにしてね」と言う。
『雪の女王』(アンデルセン) 悪魔の鏡が地上に落ちてこなごなになり、かけらの1つが少年カイの心臓にささる。カイは、あらゆるものの悪い点・醜い所ばかりを見るようになる。やがてカイは、雪の女王にさらわれる→〔接吻〕1。
「お前見たな」(松谷みよ子『現代民話考』7「学校ほか」第1章「怪談」の2) 医科大学の学生寮でのこと。夜中に1人の学生が部屋から抜け出て行くのを、友達が不審に思って後をつけると、その学生は死体の血を吸っていた。友達は驚き、急いで部屋に帰って寝たふりをする。しばらくして戻って来た学生は、寮生たち1人1人の胸の鼓動を調べ、「おまえ見たな」と友達に言った(福島県)。
*夜、寄宿舎を抜け出て、死体を食いに行く→〔人肉食〕2bの『死屍(しかばね)を食う男』(葉山嘉樹)。
『デカメロン』(ボッカチオ)第3日第2話 馬丁が王に変装して妃を犯した。王は犯人をつきとめようと、下僕たちの寝る部屋へ行き、彼らの心臓の鼓動を調べる。馬丁は眠ったふりをしていたが、その動悸が激しいので、王は「この男が犯人だ」と思う〔*『ドイツ伝説集』(グリム)404「アギルルフとテウデリント」に類話〕→〔目印〕4。
『ゲスタ・ロマノルム』40 ある騎士が奥方の不貞の噂を聞き、神父に「真実を知りたい」と言う。神父は奥方とよもやま話を始め、奥方の手を取って脈搏に触れる。神父が、不貞の相手として噂されている人物のことを話題にすると、奥方の脈搏は速くなった。話題を夫(=騎士)のことに移すと、脈搏は静まった。
『告げ口心臓』(ポオ) 「わし」は同居する老人を殺し、死体を床下に隠す。警官が来たので、「わし」は死体の真上の位置に椅子を置き、質問に答える。老人の心臓の鼓動が「わし」の耳の中で聞こえ、その音がどんどん大きくなる。警官にも当然聞こえているのに、わざと知らぬ顔をしているのだと「わし」は思い、叫ぶ。「そうとも、おれが殺したんだ。これは床下の老人の心臓の音だ」〔*→〔動物教導〕2の『黒猫』に類似〕。
^_^心臓と同じ種類の言葉
Weblioに収録されているすべての辞書から^_^心臓を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- ^_^心臓のページへのリンク