偏微分 偏微分の概要

偏微分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/11/07 08:47 UTC 版)

函数 f(x, y, …) の変数 x に関する偏微分は

f^\prime_x,\quad f_x,\quad \partial_x f,\quad \frac{\partial}{\partial x}f,\quad  \frac{\partial f}{\partial x}

など様々な表し方がある。一般に函数の偏微分はもとの函数と同じ引数を持つ函数であり、このことを

f_x(x, y, \ldots), \quad \frac{{\partial f}}{{\partial x}} (x, y, \ldots)

のように記法に明示的に含めてしまうこともある。偏微分記号 が数学において用いられた最初の例の一つは、1770年以降マルキ・ド・コンドルセによるものだが、それは偏差分の意味で用いられたものである。現代的な偏微分記法はアドリアン゠マリ・ルジャンドル[1] が導入しているが、後が続かなかった。これを1841年に再導入するのがカール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビである[2]

偏微分は方向微分の特別の場合である。また無限次元の場合にこれらはガトー微分に一般化される。

定義

2変数の場合

簡単のため、2 変数の場合のみを詳しく述べる。z = f(x, y) を R2 のある領域上で定義された実数値関数で、xy とは関数関係を持たずに独立に変化することができるとする。そして y を任意の値 b で固定すると、これを z = f(x; b) = f1(x) という変数 x の関数だと思うことができる。このとき、この z = f1(x) の x = a における微分係数

\begin{align} \frac{df_1}{dx}(a) 
  &= \lim_{\Delta x\to 0}\frac{f_1(a+\Delta x)-f_1(a)}{\Delta x}\\
  &= \lim_{\Delta x\to 0}\frac{f(a+\Delta x,b)-f(a,b)}{\Delta x}
\end{align}

z = f(x, y) の、点 (a, b) における x に関する偏微分係数とよぶ。この極限を

\left.\frac{\partial z}{\partial x}\right|_{(x,y)=(a,b)} 
  = \frac{\partial z}{\partial x}(a,b) 
  = f_x(a,b) = z_x|_{x=a,y=b}

などのように記す。z = f(x, y) を曲面と考えると、偏微分係数 fx(a, b) は領域上の点 (a, b) における、zx 方向の傾きを表している。領域 DR2 の各点 (x, y) で x に関する偏微分係数が存在するとき、これを x, y の関数と見た

\partial_x f(x,y) = f_x(x,y)=\frac{\partial z}{\partial x}
 =\lim_{\Delta x\to 0}\frac{f(x+\Delta x,y)-f(x,y)}{\Delta x}

z = f(x, y) の x に関する偏導関数と呼ぶ。領域 D の各点で偏導関数が定義できるとき、z は領域 D において x に関して偏微分可能であるという。

同様に、x を任意の値 a で固定してできる z = f(a; y) = f2(y) という y についての関数が、ある領域 D に属する y について微分可能なら

f_y(x,y) = \frac{\partial z}{\partial y} 
  := \lim_{\Delta y \to 0} \frac{f(x, y+\Delta y)-f(x,y)}{\Delta y}

zy についての偏微分といい、zD において y について偏微分可能であるという。

形式的な定義

一般の場合、u = f(x1, x2, ..., xn) の変数 xi (1 ≤ in) に関する偏微分または偏導関数とは、Rn のある領域 D の各点において極限

 \lim_{\Delta x_i \to 0}
  \frac{
    f(x_1,\ldots,x_i+\Delta x_i,\ldots,x_n)
    -f(x_1,\ldots,x_i,\ldots,x_n)
  }{
    \Delta x_i 
  }

が存在するとき、その極限として得られる D 上の関数のことをいい

\frac{\partial f}{\partial x} = f_x = \partial_x f = u_x

などであらわす。他に使われている変数を明示するときは

\left(\frac{\partial f}{\partial x}\right)_{y,z},\quad
 \partial_x f(x,y,z), \quad u_x|_{x_1,x_2,\ldots,x_n}

などの記法が使われる

高階偏導関数

偏導関数がさらに偏微分可能ならば、偏微分を繰り返して高階(高次)の偏導関数

\frac{\partial^2 f}{\partial x^2} = f_{xx} = \partial_{xx} f
\frac{\partial^2 f}{\partial x\,\partial y} = \frac{\partial}{\partial x}\left(\frac{\partial f}{\partial y}\right) = f_{yx}

などを考えることができる。一般に多重指数 α = (a1, a2, ..., an) に対して |α| = a1 + a2 + ... + an として

\partial_\alpha f = \frac{\partial^{|\alpha|}f}{\partial x_1^{a_1}\,\partial x_2^{a_2}\cdots\partial x_n^{a_n}} = f^{(\alpha)}

を定義することができる。

たとえば 2 変数の関数 f(x, y) が偏微分可能で、さらに二つの偏導関数 fx , fy が偏微分可能なとき、f の二階の偏導関数は

fxx , fxy , fyx , fyy

の 4 つが定義できる。ここで、二つの偏導関数 fxy , fyx は一般には異なる関数であるが、これらの偏導関数が連続、つまり元の関数が C2 級であるならば、両者は一致する(ヤングの定理)。 また、一致しないものとしては、たとえば全平面で定義される関数

f(x,y) = \begin{cases}
   \cfrac{xy(x^2-y^2)}{x^2+y^2} & (x,y)\ne (0,0), \\[10pt]
   0 & (x,y) = (0,0).
\end{cases}

が挙げられる。実際このときは fxy(0, 0) ≠ fyx(0, 0) となる。


  1. ^ Adrien-Marie Legendre, Sur la mainère de distinguer les maxima des minima dans le calcul des variations, Mém. Acad. Sci.,
  2. ^ Miller, Jeff (2009年6月14日). “Earliest Uses of Symbols of Calculus”. Earliest Uses of Various Mathematical Symbols. 2009年2月20日閲覧。


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