演劇 演劇の概要

演劇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 23:11 UTC 版)

主人と奴隷の役を演じているところが描かれた 古代ギリシア紀元前350年ころ)。
劇場建物内部のステージ客席
モリエールの『町人貴族』が舞台で演じられている様子 (Moreau le jeune画)
シェイクスピアヴェニスの商人』の、かつての上演の様子を再現した画

演劇は「芝居」ともいわれる。「芝居」は劇場がかつては野外にあるのが一般的で、観客が芝に座って観劇したことに由来するという[1]。「舞台」といわれることも多い。

概説

演劇とは、生身の俳優が舞台上で仕草や身振り、表情や台詞などを用いて演技し、物語や人物などを観客に対して見せる芸術である。大抵は、作者(劇作家)が筋書き(戯曲台本)を書き、それにもとづき俳優が舞台上で台詞・動作などを用いて演じ表現する。

また、演劇の多くには演出者演出家)がいて、劇作術にもとづいて俳優を指導する。舞台装置・照明・音楽・音響なども総合的に用いて効果をあげる。ゴードン・グレイグは演劇を「背景(舞台装置・照明などの「舞台」)と音(俳優が発する声・音楽・音響)が織りなすものである」とし、演劇を総合芸術であると捉えた[2]。このように、用いられる芸術分野は多岐に渡り、音楽舞踊舞台音響舞台照明舞台美術舞台機構、時には観客席側も含めた劇場空間、さらには劇場の建築物としてのデザインにまで至ることもある。演劇のために劇作家が執筆する戯曲は、単体でも文学作品となりうる。

演劇の起源と歴史

起源

演劇の起源には諸説ある。

  • 人類が本能的に持っている模倣への興味であるとの推察による説[3]小林愛雄)。
  • 呪術や宗教的儀式が発展し演劇となっていた説

古代ギリシアにおいては、悲劇の競演が行われる大ディオニュシア祭は、神ディオニュソスを称える祭儀としての側面をもっていた[4]。また呪術や宗教的儀式には、行為・現象の模倣やその再現が重要な要素として含まれていることも多い。

歴史

西洋演劇の淵源は、古代ギリシアに求められる。紀元前5世紀にはギリシア演劇アテナイにおいて最盛期を迎え、アイスキュロスソポクレスエウリピデスの三大作家を中心とするギリシア悲劇や、アリストパネスなどによるギリシア喜劇が成立した[5]紀元前4世紀に入るとギリシア演劇は沈滞したものの、その作品は長く地中海一帯で上演され続けた[6]古代ローマにおいてもギリシア演劇の影響を受けて演劇は盛んに行われ、各地にローマ劇場が建設されたものの、ローマ帝国の衰退とキリスト教の影響によって古代演劇もまた衰退していった[7]

その後、10世紀に入るとキリスト教の影響の元に宗教劇の記録が文献に現れるようになり[8]、13世紀からは宗教劇を主体とする中世演劇が隆盛を迎える[9]ルネサンスが始まると人文主義者らによって古代の演劇台本が再発見され、また活版印刷の発明によって台本の大量生産が可能となったために演劇は大きく変化することとなった[10]。16世紀末にはイタリアにおいてオペラが誕生し、ヨーロッパ各地に広まって盛んに催行されるようになった[11]

演劇の要素

演劇の要素として、伝統的には俳優戯曲観客の三つが挙げられてきた(演劇の三要素)[12][1]。これに劇場を加えて演劇の四要素とすることもある[1]。歴史的には初期の演劇には彼我の区別がなく、例えば古代ギリシャ演劇の初期段階では観客はおらず全員参加型の共同行為であった[12]

演劇が台本そのままではなく、観客の目の前で行われることで成立する性質は演劇の現前性(presence)と呼ばれる[12]。演劇を収録したビデオは演劇そのものではなく演劇の記録作品とされる[12]ウィリアム・シェイクスピアの作品は世界中で上演されているが、同じ台本であっても解釈が異なれば別の作品となる[12]。ウィリアム・シェイクスピアやジャン・ラシーヌの作品を特設スタジオで映画製作の手法で記録した作品もあるが、これらは演劇とは異なる新しい形態の映像芸術とみなされている[12]

また、演劇は映画のように複製的機械的に繰り返されることができない「一回性」の芸術である[1]。毎回の舞台は微妙に違い、同じ芝居は二度とないことから、演劇の本質的一回性とも呼ばれている[1][12]


  1. ^ a b c d e 〈要点〉日本演劇史~明治から現代へ~”. 新国立劇場 情報センター. 2023年4月14日閲覧。
  2. ^ 『俳優と超人形』ゴードン・グレイグ、訳 武田清、而立書房、2012年。
  3. ^ 西洋演劇史』小林愛雄、アカギ叢書 第44編、1914年。
  4. ^ 「138億年の音楽史」p126-127 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  5. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 21-24.
  6. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 24-25.
  7. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 33.
  8. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 35.
  9. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 37.
  10. ^ 『演劇の歴史』白水社, p. 53-54.
  11. ^ 『増補改訂版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』 p53-59 音楽之友社 2009年4月10日第1刷
  12. ^ a b c d e f g 安藤隆之「演劇とは何か」『文化科学研究』第11巻第1号、中京大学先端共同研究機構文化科学研究所、1999年12月31日、1-16頁、ISSN 0915-6461NAID 110004648957CRID 1050282812997318272 
  13. ^ しばいのまち 「舞台の始まりから終わりまでの流れをつかもう~役者編~」
  14. ^ 『現代演劇の地層―フランス不条理劇生成の基盤を探る』小田中章浩、ぺりかん社、2010年。
  15. ^ "静かな演劇|現代美術用語辞典" DNP Museum Information Japan, 2018年2月15日閲覧。


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