世界平和統一家庭連合 概説

世界平和統一家庭連合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 04:58 UTC 版)

概説

文鮮明(1982年)
左から岸信介池田勇人首相、朴正熙(1961年11月11日)
KCIA初代長官の金鍾泌
1978年11月1日に公表されたフレイザー報告書[31]

1957年、英語を話す4人の韓国陸軍の青年将校がそろって統一教会に入信した。すなわち朴普煕(パク・ポヒ)、韓相国(別名ブド・ハン)、金相仁(スチーブ・キム)、韓相吉(ハン・サンキル)の4人である。彼らはいずれも1961年5月の軍事クーデター以後、韓国政府との重要なコネを教団側に提供した。朴普煕は同年に陸軍武官補佐官として駐米韓国大使館に赴任し、韓相国はKCIA初代長官の金鍾泌の個人的な補佐となり、金相仁は金鍾泌の通訳を経てKCIAのメキシコ・シティ支局長となり、韓相吉は1960年代末にワシントンの韓国大使館付武官となった。統一教会は金鍾泌によって再編され、朴正熙政権が権力を確立するにつれ、兵器産業などのビジネスにも参入し、拡大発展していった[19]

1976年、韓国政府による米国議会および米国政府への買収工作(コリアゲート事件)が発覚。統一教会は政府およびKCIAと密接な関係を保ち、その要請により、ワシントンにある関係団体「韓国自由文化財団」や同市にあるディプロマット・ナショナル銀行などを通じて秘密活動の一翼を担ったことが明らかとされた[32][33][34][35]。何百万ドルもの資金を違法に調達して国境を越えて移動させ、米国内で反日デモを組織するなど韓国の国益を促進し、韓国の政治的目的を達成するために各種の工作を行った[18][36][37][38]

1958年5月、文鮮明の命を受けた宣教師崔奉春(西川勝)が釜山から密航船で日本に密入国した。1959年10月2日、新宿区戸塚町(現在の新宿区西早稲田)の時計店で最初の礼拝を行い、日本統一教会が発足した[39][40][41]1960年代後半から、教団系の学生団体である原理研究会による家庭崩壊、学業放棄が社会問題となり、霊感商法が社会問題になった1980年代以降、朝日新聞社や『週刊文春』によって大々的な批判キャンペーンが展開されたが、教団側は激しく反発し、信者によるデモなどが行われた[42]1984年には、世界日報編集長の副島嘉和が教団の反日思想等の実態について、内部告発を行った後に、襲撃を受ける事件が発生。その他にも、教団を批判した人物・マスメディアへの嫌がらせや、教団に関連した不可解な事件が多数発生している。反対派に「共産主義者」「サタン」といったレッテルを貼って攻撃をする[43]ほか、インターネットを通じて、一般人を装った書き込みをすることなどが指摘されている[44]

統一教会は、原理研究会による家庭破壊や学業放棄等の問題、霊感商法とマインドコントロールを応用した高額な物販と献金、勧誘・教化手法に関する問題や、教団が結婚相手を決める合同結婚式、信者間の養子縁組麻薬関連のマネーロンダリング密輸大韓民国中央情報部(KCIA)と連携した国際的な政治工作活動、反共産主義朝鮮半島の統一の支持、金日成時代からの北朝鮮との密接な関係、歴史修正主義文化共産主義論の流布、反夫婦別姓、反LGBT運動、世界各国の保守派・極右勢力との関係など、様々な問題で物議を醸している[18][11][45][46][47][48][49][50][51][52]

ホワイトハウスにて面会したニクソン大統領文鮮明(1974年)

統一教会は一般的にカルトとみなされている[27][53][54][45][55][56]。フランスでは反セクト法により、ロシアでは対テロ法により、規制と監視対象とした。また、中国においては1997年に「邪教」に認定されており、活動が禁止されている[57]イスラエルの対パレスチナ強硬派やフランスジャン=マリー・ル・ペン時代の国民戦線ニカラグアの反共ゲリラコントラなど、世界各国の保守強硬派あるいは極右勢力を後援していることでも知られている[48][58][59][60][61][62][49][51]。日本においては1960年代岸信介と接点を持ち、以降から反共産主義の活動を中心に、日本政界に浸透していった[63][64][65]。教団は現在に至るまで、国際勝共連合等の関連団体あるいはダミー団体を通じて、自由民主党等の保守政治家と密接な関係を保ち続けている[66]。なお自民党と教団系の国際勝共連合との協力関係は、1978年当時の福田赳夫内閣総理大臣が参議院予算委員会で公式に認めている。勝共連合から自民党へ多額の政治献金がなされていたこと、勝共連合からの借入金の存在が当時の自治省の資料より確認できる[67]

日本においては霊感商法による経済的被害が問題視されており、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、判明している分だけで、1987年から2021年までの被害件数は3万4537件で、被害総額は約1237億円に上る[68]。霊感商法の商材には関連企業で製造された印鑑・多宝塔・朝鮮人参濃縮液などが用いられた[69][70]2007年から2010年にかけて教団信者への特商法薬事法違反による摘発が合計13件と相次ぎ、2009年2月の新世事件では、教団の渋谷教会及び豪徳寺教会も強制捜査の対象となり、特商法違反(威迫・困惑)で5人が罰金刑、2名が執行猶予付きの懲役刑および罰金刑に処せられた[71]

霊感商法等の問題の背景には、文鮮明をはじめとする韓国人幹部の日本に対する恨(ハン)の感情が指摘されている[72]。文は大日本帝国統治下の朝鮮半島で出生し、その幼少期を「強大国に踏みにじられる弱小民族の苦痛と悲しみがなんであるかを骨髄にしみるほど体験した」と語っている。また、日本留学中には大韓民国臨時政府金九と協力、抗日地下運動に参加していたことも公言していた[73]。教団の教義では日本は「エバ国家」で「サタン(悪魔)側の国[74]」であるとされている[75][63][63][64]。また、教団は伊藤博文暗殺犯の安重根抗日運動の英雄とされる柳寛順を称える運動も展開していた[76][77]。文鮮明の教え(教義)の一つとして、文教祖の恨(ハン)を晴らすのは「エバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること」「天皇を自分(文鮮明)にひれ伏させること」としている[78][79][80][81]

青春を返せ裁判などの関連事件に携わった弁護士郷路征記によれば、信者は「マインドコントロール」を受けているため善悪の基準が転換し、客観的には悪とされる行為も、神のためであれば善であると信じるようになっている。このため信者は霊感商法や無言電話、違法な選挙運動などの反社会的な行為を平気で行うとされる[82][83]。統一教会の信者の特徴の1つとして「正体を隠す」ことが知られており[84]、信者であるか質問されても「信者でない」と嘘をつくこともある[85]。また、教団内部では「天的うそ」と呼ばれる方便があり、正体を隠しての勧誘や募金、宣伝活動など教団の活動のあらゆる側面で、教団外部の人間をだますことを正当化しているとされる[86][87]

教団は積極的な経済活動を行うことも知られており、米国では日本人信者を利用して水産会社を興し、全米の中・高級寿司屋向けの鮮魚流通の8割を占めて寿司を広めたりするなど多角的にビジネスを広げている[88]。韓国では財閥組織の扱いを受けており、その巨大な資金力を利用して国際的な政治力も獲得しているが[89]、教団の運営資金の7割は日本が担っており、その原資は日本における霊感商法や信者からの経済的搾取より得られた金であるとされる[90][91]。統一教会が大きく成長した最大の戦略的要因として、宗教学者北海道大学教授櫻井義秀は、統一教会が国別に機能を特化させる戦略をあげており、「宗教的競争力のなさを、政治・経済部門の事業多角化とグローバルな事業展開で乗り切ったこと」であると述べている[75]

信者は教団の経済活動のために酷使され、海外の危険地域等に送り出され犯罪に巻き込まれることも多い[92]。弁護士らは、金銭を収奪する献金や「霊感商法」よりも、信者の人生を浪費させる「献身」のほうがより悪質な被害を生んでいるとしている[93]。なお、統一教会では「アベルとカインの原則」と呼ばれる上下関係が徹底されている。信者は再臨のメシアである文鮮明を頂点として、教団内部の上司に対する絶対的服従が求められており、アベルに対する「報・連・相(報告・連絡・相談)」も指導されている。その対象は事務的なものだけでなく、私生活に関わることや心情的な内容までも求められる[94][95]。なお、日本の教団は「韓国支配」の体制になっており、方針を自主的に決定することはなく、韓国人幹部が日本の教会を統制し、地方レベルでも韓国人が支配する体制が敷かれている[96]

有田芳生は、統一教会の本質について、「多国籍企業を上回る準軍事的な国際政党」「宗教という仮面をかぶった経済=政治複合組織である」との見解を示し、その活動は日本韓国アメリカ合衆国をはじめ、世界を股にかけるものとしている[97]1978年11月1日に公表された米下院フレイザー委員会報告書では、「厳格な規律をもった国際政党の特徴を備えている」と評価されており、教団の最終目的を、教祖文鮮明を頂点とする「世界的な政教一致国家を樹立すること」だと断定している[97][98]。教祖の文鮮明本人は「現人神である自分を中心とする神国政治を創る」と言っていたとされる[99]

親世代が統一教会の信者である「2世信者」も社会問題となっている[100]。幼少期から信仰を強要されるなど、ドメスティック・バイオレンス(DV)の状態にあった当時の子供達は、信者や教会からの特定を恐れ、息をひそめ生活せざるを得ない等の理由により散在状態になっており、弁護団が救済の為に活動している状態である[63][64][63][64]

2012年9月3日に文鮮明が死去すると、文と韓鶴子の7男の文亨進は、母親の命により2013年2月に米国会長を解任された。2015年1月、文亨進は分家組織である世界平和統一聖殿(通称:サンクチュアリ教会)を、アメリカ統一教会とは別にアメリカ国内にて立ち上げた[101]。統一教会は現在、文亨進のサンクチュアリ教会を「脱会組織」とみなしている[101][102]。文亨進はトランプ支持者であるとされ、AR-15を重要視する“Rod of Iron Ministries”を率いている事で知られ、2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件にも参加した[103][104][105][106]

2023年10月13日、文部科学省は、宗教法人法に基づく統一教会の解散命令を東京地方裁判所に請求した[107]


注釈

  1. ^ ただし、選民思想に関しては若干の留保が必要である。なぜなら、韓国民を選民と考えるのは新宗教の統一教会に限ったことではなく、韓国内の伝統的なキリスト教でも一般的だからである[108][109][110]。これは、李氏朝鮮時代末期にキリスト教が朝鮮国内で本格的に宣教され始めた際、主としてアメリカのプロテスタントの宣教師たちが、朝鮮人を現代における、聖書内のイスラエルの民だと教えて布教したのが原因で、1919年3・1運動以前にすでに『選民』というキリスト教徒向けの雑誌が出版されているほどである[111]。 韓国キリスト教徒の選民思想は現代でも保持されている[112][113]
  2. ^ なお、LGBT、同性婚、夫婦別姓は、いずれも共産主義とは独立のリベラリズムの範囲の事柄である。
  3. ^ イギリス西部にありランカスター公がイギリス国王チャールズ3世の港町ランカスターとは異なる。
  4. ^ 日韓トンネル推進全国会議は2017年11月28日に東京都千代田区の海運クラブで結成された組織[230][231]。結成大会で元衆議院議員の宇野治が会長に選出された[232][233]
  5. ^ 「スパイ防止法制定促進国民会議」は、国際勝共連合が活動資金の大半を出して1979年に設立した団体[236][237][238]
  6. ^ 下村文科大臣の時にそれまでの慣例を破って認証されたため、共産党宮本徹衆院議員が当時の決裁文書の開示の請求をしたところ、認証理由などがすべて黒塗りの文書が開示された[247]
  7. ^ 前川喜平1997年文化庁宗務課長だったころに、教団が名称変更を求めてきたが実態に変更がないため認めなかったとしている[248][249]
  8. ^ 「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」は2022年8月29日から同年10月13日にかけて計7回開かれた。構成委員は河上正二菅野志桜里紀藤正樹、田浦道子、西田公昭、宮下修一、山田昭典、芳野直子の8人[259]
  9. ^ 「文鮮明は金百文が1952年釜山東来で避難中に執筆した原稿『堕落、復帰原理』を見て『原稿校正を見て差し上げる』と持って行って6ヶ月以上持って来ない騒動を起こした」[275]
  10. ^ 韓国語聖書に記載されている箇所、申命記15/1、2、3、9、31/10、ネヘミヤ10/31、マタイ18/27、マタイ18/32、ルカ7/42、ルカ7/43。
  11. ^ 原義:ラテン語「com 共に」+「passio 受難」
  12. ^ 札幌青春を返せ訴訟・最終準備書面 に詳しい説明がある。
  13. ^ 別名「気づきのセミナー」とも言い、「隠れた能力を開発する」などというふれこみで急増している「産業」である。受講料が非常に高額で、洗脳状態に陥りまともな社会生活ができなくなるなどと社会問題化した。[要出典]

出典

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