抗体医薬
別名:抗体医薬品
英語:antibody drugs
生体の防御機能である「抗体」(免疫グロブリン)を利用した医薬薬。
抗体は毒素などの抗原と結合して抗原の破壊・無力化・排除を促すはたらきを持っている。成分はタンパク質である。もともと体内で作られる物質であるが、抗体医薬はこれを投与して治療に用いる。
抗体は特定の抗原に反応してのみ機能する。この性質は「抗原抗体反応」と呼ばれる。抗体医薬も抗原抗体反応を利用し、特定の抗体を投与し増大させることで、特定の病状の抑制や緩和、治療を図ることが可能となっている。用途された抗体は特定の抗原以外の細胞などには反応しないため、副作用が生じにくい。
抗体医薬は、2010年代前半の時点では、抗体医薬の研究開発は進みつつあるものの、安価に大量生産する点で課題を残している状況といえる。抗体医薬は副作用の伴わないガン治療、アルツハイマー病の抑制、などに期待されており、登場が期待されておりながら満たされていない需要(アンメットメディカルニーズ)を満たす医薬品市場として有望視されている。
関連サイト:
抗体医薬の現状と課題 - 科学技術政策研究所 Science&Technology Trends
よくわかる抗体医薬品 - 中外製薬
抗体医薬品を知ろう - 協和発酵キリン
抗体医薬品
こうたい‐いやく〔カウタイ‐〕【抗体医薬】
抗体医薬品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/07 14:08 UTC 版)
抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体が作成可能になり、ヒト化抗体、ヒト抗体が開発されるに至って、現在では非常に多くの抗体医薬品が臨床で用いられている。抗体医薬品の種類にはマウス抗体に加えて、マウス抗体の定常領域をヒト型に変えたキメラ抗体、超可変領域だけがマウス由来のヒト化抗体、さらに遺伝子組換えマウスを用いて作成される完全ヒト化抗体がある。分子量150,000の全長のIgG抗体に加えて、定常領域(Fc)を除いたF(ab)’2やFab、可変領域のみを短いリンカーで連結した一本鎖抗体(scFv)などの構造的特徴の異なる抗体分子も抗体工学技術の進歩により開発されている。こうした構造改変により分子量が大きく変わることから体内動態は大きく変動する。抗体医薬品は高分子医薬品の中でも標的に対する選択性の高く体内で安定という特長がある。それゆえに抗体医薬品をもとにした多機能高分子医薬品が次々と開発されている。抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate)としてはカドサイラやゲムツズマブ オゾガマイシンなどで知られている。IgG融合蛋白質医薬品としてはエタネルセプトが有名である。また2種類の抗原部位を持つ二重特異性抗体(bispecific抗体)も開発されており、多様な機能性をもつ抗体医薬として開発が進められている。二重特異性抗体としてはエルツマキソマブなどが知られている。抗体医薬の作用は以下の5つが知られている。 抗体依存性細胞障害作用 抗体依存性細胞障害作用(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)では標的細胞表面の抗原に結合した抗体のFc領域を介してナチュラルキラー細胞や単球が集簇し、細胞から産出される細胞障害性メディエーターを介してがん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する。 補体依存性細胞障害作用 補体依存性細胞障害作用(complement-dependent cytotoxicity、CDC)では標的細胞表面の抗原に抗体が結合すると、抗体のFc領域に補体が結合し、連鎖的な補体の活性化反応が細胞表面で起こることで細胞を破壊する。 標的分子の中和 抗体がリガンドあるいは受容体に特異的に結合すると細胞内へのシグナルが遮断される。これにより標的分子の作用が中和する(阻害される)ことで効果を発揮する。 アゴニスト作用 細胞表面のレセプターに結合し、アゴニストと同様シグナル伝達を活性化する。 ドラッグデリバリー作用 薬物に抗体をコンジュゲートすることで抗体を細胞選択的送達にもちいることができる。これを抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)という。
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