MM'ユニット方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 04:39 UTC 版)
2両の電動車をひとまとまり(= 1ユニット)として取り扱い、片方の電動車(M車と呼ぶ)に主制御器、主抵抗器、パンタグラフ(若干の異同がある)といった主電動機のコントロールに直接関係した機器を2両分、もう片方の電動車(M'車と呼ぶ)にMG、CPといった補機類を、2両(付随車があればその分も)に必要な規模で集約分散搭載することからMM'ユニット方式と呼ぶ。ただし私鉄に関しては同じような構成をとってもM車に対してM'車と呼ぶとは限らない。 1954年7月に完成した、近鉄モ1450形電車において、三菱電機と近畿日本鉄道との共同開発により、異なる機器を搭載する2種類の電動車を連結する事で1つの機構として成立する、1C8M制御によるユニット方式が実用化された(これに対し従来同様の1両分4台の主電動機を単位に制御する方式は1C4M制御や1M方式(下記参照)と呼ばれる)。 この方式は当初、カルダン駆動方式を採用する高性能車において、回生/発電ブレーキの常用を可能とするため、主電動機が低電圧・大電流・高回転化したことに対応して、直並列制御の組み合わせの自由度を高めるべく、より多数の主電動機を1台の制御器で制御する必要が生じたことから考案されたものであった。 だが、この方式のメリットはそれだけではなかった。2両分の機器を集約分散搭載した結果、各機器の製造・保守コストが大幅に削減され、さらにMGやCPについては発生容量が倍増したとしても重量は著しく増加するものではないため、ユニット全体の軽量化が実現されたのである。 この方式は近鉄モ1450形での長期試験において成功を収め、1460系以降の同社の一部の車両に採用されたばかりでなく、小田急電鉄などの三菱電機製品を採用する私鉄各社にも急速に伝播した。さらには国鉄101系電車へMM'ユニット方式としてこのアイデアが採用されたことによってそのノウハウが公開され、他の電機メーカー各社においても同種のシステム採用が可能となったため、この方式は以後一般化し、日本の各鉄道会社に幅広く普及している。 欠点としては、ユニット内の主要機器が故障するとユニット全車が走行不能、あるいは電動車として使用不能となる(一気に2両が無動力化し、かつ死重となる)こと、列車の最小運行単位が2両となり、1両単位での編成調整や単行運転が出来ないことが挙げられる。このため竣工時の南海電気鉄道21001系など比較的短編成で運行される一部の山岳線区向けの車両では、営業運転中の1ユニット故障が直接列車の運転不能に繋がる恐れがあると考えられ、冗長性確保の面からユニット構成をあえて回避する事例が見られる。 このシステムは長大編成の電車列車を、電気制動による抑速ブレーキ必須の連続急勾配区間を含む線区で長期にわたり運行してきた近鉄と、MGやCP、それに空気ブレーキまでグループ内で製造している三菱電機のコンビならではの卓抜なアイデアであり、この方式の実用化は特に国鉄における長大編成の機関車牽引による客車列車を動力分散方式の電車で置き換える上で、高価な制御器の数を減らすことによるイニシャルコストの減少や保守性の向上、編成全体の重量減による軌道破壊の減少、あるいは相対的な性能の向上など、後の新幹線電車の成功に繋がる重要な役割を果たした。 用途により、1ユニットが必ずしも運行時の最小単位となるとは限らない。例えば国鉄117系電車の場合、電動車自体は2両1ユニットであるが、電動車に運転台付きの車両が存在しないため、両端に制御車を連結した4両が最短の編成となる。
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