FE シリーズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 16:13 UTC 版)
「ボクスホール・ヴィクター」の記事における「FE シリーズ」の解説
トランスコンチネンタルとして知られる最後のヴィクター FEが1972年3月に発売された。この車は先代よりもかなり大きく見えたが、実際には幅は同じで大型化したバンパーにより全長が僅か2 in (5 cm) 長いだけであった。高くなった室内高とパッケージングの改良によりメーカーは前席足元で1.5インチ (38 mm)、後席足元の4インチ (100 mm)の拡張をトランクルームの容量に影響せずに確保したことを誇っていた。有効な頭上と肩周り空間の拡張は、ボディ側面パネルと側面窓の形状の変更により実現されていた。 このクラスの英国車の大部分がマニュアルトランスミッションを備えており、遅まきながらボクスホールも主要な競合車のフォード・ゼファーと共に先代のFDでは追い金が必要だった4速MTを標準装備とした。FEの重量増加はどうやらこの装備のために致し方ないものであったらしい。この4速MTは1,759 ccのヴィクターから3,294 ccの大トルクのヴェントゥーラ版まで全モデルで同じものを仕様しギヤ比も共通であった。当時の路上テストでは4気筒車が、この車の報道向け発表会の行われたポルトガルの山道では2速と3速の間が空きすぎていることに否定的な評価を受けた。 サスペンション構造は先代のものを踏襲していたが、先代で不評だった点に対する多数の細かな改良が加えられていた。ベースモデルを含む全てのモデルにアンチロールバーを標準設定とし、ヴィクターのアンダーステア傾向を抑えるために後輪のスプリングが固められていた。前輪のスプリングは当時の標準通りに柔らかいままであったが、輪間距離が1.7 in / 4 cm拡げられて車輪のジオメトリーはヴィクターの悪癖である「ノーズダイブ」(ブレーキ時に前車輪が沈み込む現象)傾向を抑え込むために改善が図られた。しかし、これは性能重視の批評家たちからの批判を集めることになった。 新しいヴィクターはそのフロア構造をオペル・レコルト Dと共有していたが、明確に異なるボディ、独自のサスペンション、レコルトのボール循環式に対してラック・アンド・ピニオン式のステアリング機構といった独自性を保っていた。顔回りは当時としては先進的なものであり、細いバンパーがグリルを横切りグリルの下1/3と車幅灯(4灯ヘッドライトのモデルの場合)がバンパーの下に位置していた。この人気の吸引力となる可能性のあった設えは、市場に出てナンバープレートを取り付けるとグリルの下部が完全にその陰に隠れてしまい完璧に魅力を失っていた。 ヴィクターと広範囲に類似点のあるリュッセルスハイム(Rüsselsheim)製の従兄弟との比較は避けられないものであった。後席から見た一番の相違点は、オペルのドアにはボクスホールのデザイナーが「切れ目のないクリーンな外観」を好んで取り去ってしまったクォーターガラスが残されており、その結果後部ドアの窓ガラスが完全にドア内に収納できることであった。ヴィクターの後席に座る者は窓を開けようとしても後輪のホイールアーチに邪魔されて高さ1/3辺りまでしか下げられず、これが間違いなく後部座席に座るであろう幼い子供を守るチャイルドロックを補完する安全装置となった。外から見る限りはどこにも共通のボディパネルを使用してはいなかったが、細部を注意してみるとドアノブやワイパー機構といった細かな部品をオペル・レコルト Dと共用していることが分かった。 ヴィクターFEはオペル車とは全く別個に設計された最後のボクスホール車であった。エンジンはFDシリーズから引き継いだもので、排気量は1、759 cc と 2,279 ccへと若干大きくされていた。短い期間だけ直列6気筒エンジンがヴェントゥーラと3300SLに搭載され、後者は事実上豪華なヴェントゥーラから飾りを取り払ったヴィクター エステートであった。エステートはレコルトのワゴン版よりも傾斜の強いハッチバック車のような後部形状をしており、前後重量配分は完全な50:50であった。 1974年にその他のモデルのモデルチェンジに伴い、ついにヴェントゥーラのエステート版が導入された。 世界的なオイルショックの影響により輸出は減少し、会社の混沌とした状況のイメージが増して行ったことで1970年代初めからボクスホールの凋落を引き起こしたことにより1976年初めにVXシリーズに引き継ぐまでに生産されたFEの販売台数は5万5,000台に留まった。
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