高級車の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 09:49 UTC 版)
何をもって「高級」とするのかは、メーカーや販売先の国・地域、個人の主観と価値観に委ねられており、高級車の指し示す範囲にも明確かつ客観的な定義は存在しない。 一般的には、同様の排気量などの乗用車と比較して、高額・ハイクオリティであり、一般的な所得水準では、入手が困難であるか躊躇させるような乗用車をさし、特徴として大衆車に比べると『走行性能・静粛性能・室内装備』などが優れている場合が多い。よって、その国の所得水準や技術水準、ブランド価値や地域毎の販売戦略など諸条件に左右され、日本国内では高級車であっても本国や他国では大衆車の扱いという場合もある。。また日本国内では販売価格が異なる輸入車でも、お互いの生産国での認識は同じ車格といった場合もある。 従来は、車格(セグメント)や排気量が大きいほど高級という図式がほぼ該当していたが、セグメントの定義が単に寸法に起因しているため、近年では一部瓦解している。「最下級」と「最上級」のグレードで2倍以上の価格差が存在する車種もあり、高級車という位置づけでありながら大衆向けのグレードも用意する、またはその逆といった販売方法が採られることもある。車種によってはモデルチェンジによって大型化、大排気量化、装備の高級化、それによって価格の上昇が図られ、それまで「大衆車」扱いであったのが段階的に「高級車」化することもある。 独自の定義の一例として、ダイムラー・クライスラー日本(当時)では550万円以上の価格帯の輸入乗用車を「輸入プレミアムセグメント」としていた。 ゼネラルモーターズ (GM) の社長アルフレッド・スローンは自動車産業界の歴史を3期に区分し、1908年までの第一期が高価な自動車だけの高級市場、第二期は1920年代までのフォードが牽引した大衆車の時代、第三期がバリエーション豊かになった大衆高級車市場とし、低価格車から最高級車までのあらゆる需要に適用するフルラインシステムを消費者の欲望を駆り立てるための第三期におけるGMの経営方針として採用した。ヨーロッパや日本では階級(クラス)が固定されていたが、新興国のアメリカでは階級はなく、経済的、金銭的に成功した人々はその成功を認め合い、また、大衆は自らもそうなりたいと成功者に対し賞賛を送った。GMのフルラインは下層階級出身者のいわゆる「成金」でも、金銭的な成功の階段を昇ることが比較的容易なアメリカ型人生を販売戦略に組み入れたものだった。 第二次世界大戦敗戦後の焼け跡から復興した日本は一からの再スタートとなり、GM型の考えを参考にしたステップアップ型の高級車概念をメーカーが採用し定着した。例えば日産自動車は、セドリックや、グロリアが一般化してから相対的に高価なシーマを販売開始し上位への移行に成功した。トヨタ自動車は、クラウンが一般化してから相対的に高価なセルシオを日本で販売開始した。さらに日本でもレクサスブランドを創設した。これらはアメリカ型フルラインの上部に位置する車となる。あくまでスタンダードな車があって、差別化とより収益を得るための「ラグジュアリー」や「プレミアム(本来の意味では付加価値)」という概念である。 一方、上流階級(ハイクラス)と呼ばれる人々のための車は、これらとは別の意味での高級車(ハイクラスのための車)となる。しかし後者の高級車だけに頼ったメーカーの多くは経営の面で長続きしなかった。現代まで生き残ったメーカーではその多くがアメリカ型経営のイメージ戦略に組み入れられている。また一部残った第一期型高級車は、第三期型の経営の安定によって支えられている。
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