韴霊剣とは? わかりやすく解説

布都御魂

(韴霊剣 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 06:30 UTC 版)

布都御魂(ふつのみたま)は、記紀神話に現れる霊剣。韴霊剣布都御魂剣(ふつみたまのつるぎ)とも言う。佐士布都神(さじふつのかみ)、甕布都神(みかふつのかみ)とも言う[1]

表記

佐士布都神の「さじ(佐士)」は「さひ(佐比=刀の古語)」の誤記と見られている[2]。他方、神名データベース(國學院大學)では、「指」を濁音化したもの、または両側からすぼまった状態をあらわす「狭」という説を載せている[1]

名称にある「ふつ」とは、「断ち切る様」をいう[3]

伝承

建御雷神(たけみかずちのかみ)はこれを用い、葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定した。神武東征の折り、ナガスネヒコ誅伐に失敗し、熊野山中で危機に陥った時、高倉下神武天皇の下に持参した剣が布都御魂で、その剣の霊力は軍勢を毒気から覚醒させ、活力を得てのちの戦争に勝利し、大和の征服に大いに役立ったとされる。

神武の治世にあっては、物部氏穂積氏らの祖と言われる宇摩志麻治命(うましまじのみこと)が宮中で祭ったが、崇神天皇の代に至り、同じく物部氏の伊香色雄命(いかがしこおのみこと)の手によって石上神宮に移され、御神体となる。同社の祭神である布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)は、布都御魂の霊とされる。

現存品

石上神宮

布都御魂はやがて拝殿の裏手の禁足地に埋められるが、明治7年(1874年)に当時の大宮司菅政友によって発掘され、本殿内陣に奉安され、御神体として祭られている。その際、刀鍛冶師月山貞一(初代)が作刀した布都御魂剣の複製2振が本殿中陣に奉安された。

菅政友によって発掘された物は、形状は内反り(通常の日本刀とは逆に刃の方に湾曲)の片刃の鉄刀。柄頭に環頭が付いている。全長は記録によって微妙に異なるが、85cm位である。

石上神宮にはともに天羽々斬(布都斯魂剣)も奉安されている。

鹿島神宮

一方、鹿島神宮にも布都御魂剣または韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)と称する巨大な直刀が伝わっている。由来は不明であるが、奈良時代末期から平安時代初期の制作とされる。国宝に指定されており、鹿島神宮の宝物館にて展示されている。

布都御魂は神武天皇に下される前は鹿島神宮の主神であるタケミカヅチのものであり、布都御魂が石上神宮に安置され鹿島に戻らなかったために作られた二代目が、現在鹿島に伝わる布都御魂剣であるという[4]

脚注

  1. ^ a b 佐士布都神”. 神名データベース. 國學院大學. 2024年4月29日閲覧。
  2. ^ 飯田道夫 『庚申信仰 庶民宗教の実像』 人文書院 2刷1990年 p.121
  3. ^ 『広辞苑』 第六版 岩波書店
  4. ^ 『新鹿島神宮誌 改訂版』 鹿島神宮社務所編 (2004)。pp.70–72。

関連項目

外部リンク


韴霊剣

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鹿島神宮」の記事における「韴霊剣」の解説

韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)は、神宮伝えられている神剣別称を「平国剣(くにむけのつるぎ)」。国宝指定されており、指定名称は「直刀黒漆平文大刀拵(ちょくとうくろうるしひょうもんたちごしらえ) 附 刀唐櫃」。古くより神宝として本殿内陣秘められていた。 長大直刀で、柄(つか)・鞘を含めた全長は2.71メートル刃長は2.24メートル測る制作年代定かでないが、刀身奈良時代から平安時代拵え平安時代の作と見られている。現存する伝世品出土品でない)の日本刀の中では古例1つであり、また刃長の点では最大作品とされる長大刀身作るために、途中4か所で刀身繋ぎ合わせるという極めて珍しい手法使っていることが判明しており、技術的に貴重な存在である。外装(柄・鞘)は、黒漆塗りの上平文ひょうもん金銀などの薄板貼っ文様を表す技法)や金銅透かし彫り金具装飾施した古様な技法よるもので、正倉院の「金銀鈿荘唐大刀」の流れを汲むものとされるフツノミタマ『古事記』『日本書紀』でも「韴霊剣」や「布都御魂剣」等として言及があり、神武天皇に際してタケミカヅチから高倉下通じてイワレビコ(神武天皇)に下された神剣としている。この剣は、神武天皇即位後に宮中祀られ、のち崇神天皇御世石上神宮奈良県天理市)に遷され祀られとされる鹿島神宮に伝わるフツノミタマは、上記のように初代フツノミタマがついに鹿島神元に帰ることはなかったので、後世改め作られたものだという。作刀に関しては、『常陸国風土記』にある砂鉄から剣を作ったという記述との関連指摘される

※この「韴霊剣」の解説は、「鹿島神宮」の解説の一部です。
「韴霊剣」を含む「鹿島神宮」の記事については、「鹿島神宮」の概要を参照ください。

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