音声と声優
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 18:47 UTC 版)
グラフィックが女優による映像ではなく、絵による画像のアダルトゲームにおいては、キャラクターのセリフに合わせた音声データを出力させることがあり、その音声を担当するのはほとんどが声優である。声優がアダルトゲームに声をあてる場合、声優名を非公表とするか、またはアダルト用の別の芸名を使うことがほとんどである。 アダルトゲームへの音声の本格的な導入は、後述する音楽面と同様にCD-ROM・大容量ハードディスク・PCM・データ圧縮技術などのハードウェア・ソフトウェア両面の技術進歩と普及があって初めて可能になった要素で、時期的にはコンシューマゲーム機における導入とそれほど大差は無く、1990年代前半くらいから徐々に普及し始め、2000年代前半には普遍的なものになった。 コンピュータゲームの音声データ導入は、声優起用と音声収録のシステムとノウハウが確立されるまでの最初の数年間は試行錯誤の連続で、当初は規制基準が媒体によってまちまちであったため媒体ごとに声優を交代させる必要があり、1990年代中期の作品では1キャラあたり4-5人も声優がいるものも存在した。この流れも1999年の法改正(詳細別節)と、家庭用ゲーム機におけるハード間競争でソニーのPlayStation・PlayStation 2が優勢になったことを受け、1キャラクターあたりアダルト表現まで請け負う声優と、非アダルトの関連作品のみを担う声優の2名に大別されるケースが多くなった。 このような流れと平行して、コンピュータゲーム業界全体では「第三次声優ブーム」のあおりを受けて高騰の一途を辿る声優のギャラを巡り、1997年9月からCESAと日本俳優連合(日俳連)の間で交渉の場がもたれていた。だが、日俳連が「ギャラをランク制の設定額よりも高額なものにすること」「ハード間移植の際の音声二次使用料を支払うこと」などを要求したため、交渉は難航。仲裁に日本音声製作者連盟(音声連)が加わり、日俳連がかなり譲歩する形で1999年2月10日に合意、ゲームにもランク制が導入された。ただし、アダルトゲーム制作会社の場合はCESAに加盟していないため、この合意の適用外であり、そのためアダルトゲームへの声あてのギャラは、アニメや一般向けゲームよりもはるかに高額であると言われている。一例をあげるとチュアブルソフトは『スイートロビンガール』の声優一般公募の際、募集要項にヒロイン4名の報酬について500ワードまでについては基本報酬の50,000円以降は10ワード毎に500円を支払うと明記している。 アダルトであること以外の特徴として、アニメ作品の場合は出演者同士の掛け合い、すなわちアフレコで、基本的に自分の出番だけスタジオにいればよいのに対して、ゲームの音声収録は個別にスタジオのブースに入って収録する形式で、スタジオレンタル料との兼ね合いから短期間に集中して収録するため、1日あたりの拘束時間が長いということが挙げられる。特にアダルトゲームはノベル形式のアドベンチャーゲームが主流のため、セリフの量がアニメに比して多く、平均的な商業作品で台本はおよそ電話帳タウンページ2冊前後、メインヒロインではその1.5倍から2倍に達する分量があり(ただし、アニメ用と異なり、ゲームスタッフがプリンターとコピー機を駆使して作った簡易製本であることが多く、単純には比較できない)、ゲームの仕事が入ると他の仕事が入れづらく、スケジュールの都合がつかず出演できないという事情もある。 これらの事情から特定の声優に起用が集中する傾向があり、人気となれば年間に50本以上、中堅でも30本前後の作品で起用される。その結果、アダルトゲームとその関連作品の収録だけで年間スケジュールの大半が埋まってしまう声優も少なくない。
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