退所後の生活設計困難
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 17:09 UTC 版)
「児童養護施設」の記事における「退所後の生活設計困難」の解説
児童養護施設の子どもは9.3%が中卒で施設を退所し、そのうち約半数が卒業の翌年度中(2005年)に転職を経験している。高校中退は7.6%となっている。 虐待や親からの遺棄などの理由で児童養護施設に保護された子どもも施設退所後に生活困窮に陥りやすい。婦人保護施設長によると、そこで育った子どもは進学しなければ中卒でも施設を退所しなくてはならず、10代女性では行きずりに近い同棲後に妊娠し、相手の男性は姿を消し、婦人保護施設に入所するという例は後を絶たず、そうでなくとも施設退所後に性産業に従事して未婚の母となる場合もある。傾向としては、婦人保護施設の10代出産利用者ではひとり親家庭や生活保護受給者も多い。これらの10代の母は生活経験が乏しく、低学歴・就労経験不足して育児に危険性が伴う。また、幼少期の愛着障害を抱えた女子は無分別な社交性を身につけ、庇護してくれる男性を求める者もいるため、時として施設の男性職員と恋愛関係に発展させてしまうとの指摘もある。*代替養育環境に長期間いる子どもたちの措置解除後の状況は、生活保護率が同年齢層の人口の 18~19倍であり、施設を出た後には頼れる親や家族がいない中で産んだ子どもを保護する事例が児童相談所や市区町村の現場では頻繁に発生している。 九州・沖縄八県の児童養護施設で退園後に大学などに進学した者のうち四割が中途退学している。調査(八県の89施設を対象に、2000年からの5年間の進学児童数などについてのアンケート調査、九州社会福祉協議会連合会養護施設協議会が発行した「九州8県内児童養護施設出身者の大学・専門学校等進学後の実態調査研究報告書」)では「就学支度金制度」の支給条件など、正規雇用のみを対象とした現行の自立支援制度の不備を指摘していた。同期間中の進学者は166名でこのうち在学中のものを除き、卒業者が34名、すでに退学したものが29名だった。中途退学の要因としては「学力不足」11名(37.9%)、「生活費・学費不足」8名(27.5%)、「進路変更」4名(13%)となっている(「琉球新報」2005年7月27日)。これらの対応として、世田谷区では、平成28年度から区内の児童養護施設及び里親に措置された児童で、満18歳を迎えた年度末で措置解除となる者、又はなった者を対象として、原則として大学等への進学者は卒業まで、就職者は2年間の間、区営住宅内の旧生活協力員居住室をオーナーの了承のもと提供するなどの事業を行う。児童養護施設入所経験者からは大学進学のための経済的支援は以前より整ってきたためすでに拡充の段階を過ぎ、身近な先輩たちの体験談を通じて進路選択の情報を得て活かしていくことが必要になっているとの声がある。 児童養護施設出身者がまたその子どもも児童養護施設に預けるという「負の連鎖」「貧困の世代間再生産」も起きている。 保証人の問題で、進学や就職ができずにホームレス状態に陥ってしまうケースがある。 アメリカでは、里親や施設で生活している高校生は自立生活となる1年あるいは半年前から州などが提供する自立支援プログラムに参加し就労や生活トレーニングを行う。日本でも一部NPOなどがソーシャルスキル等の研修を行っている。 埼玉県では養護施設退所後に就職で免許が必要な人(平成28年3月卒業見込み者から対象)に費用として、18万5,000円の補助を開始。国、県の補助に県指定自動車教習所協会の支援が加われば、自己負担なく運転免許を取得することもできる事業が始まる。 国際調査によると、施設養護出身者は通常の10倍性産業に従事し、犯罪歴は40倍に上る。また、自殺者は500倍の出現率となっている。 京都市の調査では、高校進学率は92.3%高校中退率が25.3 %で高率となっている。また、収入が低く、年金加入率52.7%,医療保険の加入率が皆保険制度にも関わらず69.2%であった。回答年齢平均が22歳となっているがその14.3%が子育て世帯であると早期の家族形成をうかがわせるものとなっている。
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