葉の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 09:06 UTC 版)
現在の葉は、ほとんどの場合、光合成のための太陽光の量をなるべく多く捕えるために適応している。葉は何度も進化しており、またおそらくは、草食動物から身を守る(en:plant defence against herbivory)ための針状の突起に由来するかもしれない。 ライニーチャートから出土したリニア類 Rhyniophytaは、細く飾りのない軸の集合以上のものではなかった。前期デボン紀から後期デボン紀においては、トリメロフィトン Trimerophytinaが現れ、これが葉のようなものを持っていたと考えられる最初の証拠である。この維管束植物のグループは、胞子嚢に特徴がある。二分岐または三分岐した軸の終端が胞子嚢となっている 。プシロフィトン Template:Sanmeiのような植物は、棘状の突起を持っていた。それは小さく、尖っていて、茎から外へ伸びている。維管束は欠いている。 同じ頃、ゾステロフィルム類 Zosterophyllophytaが現れてきた。このグループは、腎臓型の胞子嚢が特徴で、短い水平方向への分岐があって、軸の近くに胞子嚢が形成される。これらは特徴的なH型の分岐をすることがある。このグループのほとんどは、軸にはっきりした棘を持っている。しかし、その中には維管束はなく、維管束のある突起の最初の証拠はライニーからのアステロキシロン属 Asteroxylonである。アステロキシロンの棘は、原始的な維管束を備えていた。少なくとも、中央の原生中心柱から個々の「葉」へ葉脈が分岐しているのが見て取れた。バラグワナチア Baragwanathiaとして知られる化石が、やや早く後期シルル紀に出現している。この生物においては、葉脈が葉の中を通っていて、中央脈(mid-vein)をなしている。一つの説として「突起仮説」は、葉は、トゲの状態を経由して、中心柱からの突起として発達したと言っている。しかし、小葉が軸の分岐の「網化」によって進化したということも可能性がある。 アステロキシロンとバラグワナチアは、原始的な小葉植物と広く認められている。小葉植物は現在でも生存していて、ミズニラなどもその一つである。ヒカゲノカズラは特徴的な小葉を持っている。葉には1本の維管束しかない。小葉は同じサイズまでしか生長しない。リンボクは1 m以上の小葉を誇るが、そのほとんどは1本の維管束しか備えていない。(例外はイワヒバである) 一般的には葉と言えば「大葉(en:megaphylls)」であり、これは別の起源を持つと考えられている。実際、これらは独立に4回は出現した。シダ類、トクサ類、原裸子植物、そして種子植物である。これらは二分岐した枝から現れ、重なり合って、ついには網目状になって、段階的に葉のような構造に進化してきた。大葉は、「テローム説」によれば、網目状になった一塊の枝から形成された。その証拠として葉隙の構造が挙げられる。葉の維管束が本体の枝に残した部分のことを「葉隙」と言うが、この構造が2つの小枝が分岐するのに似ている。大葉を進化させた上記の4つのグループは、後期デボン紀~前期石炭紀には最初に大葉を進化させ、急激に発展して石炭紀中期にはこの構造はほぼ固まった。 多様化の過程が落ちついたのは、発達上の制約によるものと考えられている。しかし、葉が進化するまでに長い時間を要したのは何故であろうか。植物が地上に現れてから、大葉が確認されるまで少なくとも5000万年もの時間がかかっている。しかし、小さくまばらな中葉は、前期デボン紀のエオフィロフィトン属 Eophyllophytonに見られるので、出現に対しての障壁はなかったはずである。これまでのところ、これらの知見を統合する説明としては、CO2がこの時期急激に減少したことが挙げられる。デボン紀の間に、約90%も減少した。これに対応して、気孔の密度も100倍に増加している。気孔は水の蒸発を可能にし、それは葉をしおれさせる。前期デボン紀の低い気孔密度は、蒸発が制限されていたことを示している。もし葉が多少でも生長したら、過熱しただろう。気孔密度を増加させられなかったのは、原始的な中心柱や、制限のある根の構造のため、すばやく十分に水を供給することができず、蒸発に追いつかなかったからである。 葉は常に有益というわけではないことは明らかである。というのは、二次的に葉を失うことがたびたび発生しているからである。有名な例は、サボテンや、大葉シダ植物のマツバランである。 二次的な進化が葉の起源を隠すことがあり得る。シダのいくつかの属は複雑な葉の形状を示し、偽中心柱に付いていて維管束の出っ張りとなり、葉隙がない。さらに、トクサ科の葉は、単に一つの葉脈だけがあり、すべて小葉のように見える。しかし、化石記録と分子遺伝学的証拠に照らして見ると、それらの先祖は複雑な葉脈の葉を持っており、現在の状態は二次的な単純化の結果によるものだという事がわかる。 落葉樹は、葉を持つことによるもう一つの不利益を処理している。一般的に、植物は日が短くなったときに葉を落とすと信じられているが、これは誤解である。最近の温室地球 (greenhouse Earth)に常緑樹は、北極圏で栄えている。冬の間に葉を落とす理由で一般的に認められているのは、天候に対処するためである。風の力、雪の重みは、表面積を増大させる葉がない方が快適である。季節的な葉の損失は、独立に何回か進化して、それはイチョウ類、球果植物門、被子植物門に見ることができる。葉の損失はまた、昆虫からの重圧への対応として生じた可能性もある。冬、あるいは乾期の間に完全に葉を失うことの方が、その修復のために資源を投資し続けるよりも安く付いたのかもしれない。
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