菜食料理と非菜食料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 02:51 UTC 版)
戒律を理由として、ヒンドゥー教徒の上位カーストの者やジャイナ教の菜食主義のための料理が古くから発達している。その他にも、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教、シク教など菜食をする宗教が多い。イード・アル=アドハーなど肉の消費が宗教儀礼の中で重要な位置を占めるイスラム教では肉食が肯定される。また、屠畜業に携わるダリット(不可触民)の社会では、肉を食事に取り入れてきた長い伝統がある。このように、インドの菜食と非菜食の伝統は宗教やカーストとの関係が深く、街のレストランでは菜食主義者と非菜食主義者の席は明確に分けられており、両者が同席することはない。 インドの菜食料理では、脂やゼラチンなどを含む一切の動物の肉や動物を原料とする食材を使用せず、卵も使用しない。しかし動物を傷つけずに得られる乳製品はよく使用され、インドの菜食主義者のほとんどは乳菜食主義者(ラクトヴェジタリアン)である。さらに各種の豆類、穀類、ナッツなども使用する為、栄養学的に肉食は必要ともされていない。ヒンドゥー教やシーク教の寺院で参拝者に無料でふるまわれる聖餐は菜食料理である。 ジャイナの中でも最も敬虔な信者は、植物であっても葉、茎、豆だけを食べ、ニンジン (ヒンディー語: ग़ाजल) や大根 (ヒンディー語: मूली) 、ニンニク (ヒンディー語: लहसुन) 、タマネギ (ヒンディー語: प्याज़) 、芋などの根の部分を食べない。これは「土中の虫などの生き物を殺さないため」ということが理由の一つである。さらに「その部分が“体”にあたる」という考え、つまり枝葉ではなく本体部分を殺すことにつながるとの考えから、できる限り植物さえも殺生することを避けることによる。同様に、ハチを殺す危険の大きい蜂蜜なども摂らない。タマネギやニンニクなど五葷の摂取を避ける習慣はバラモンにも見られる。一方、西ベンガル州やアッサム州など東インドの菜食主義者は魚も食べるペスクタリアンであることが多い。 非菜食の料理にも多くの種類があり、中央アジアからムスリムの征服者によって伝えられたものが多い。戒律上、全てのヒンドゥーは牛を聖なるものとして食べず、全てのムスリムは豚を汚れているものとして食べないので、一般にそれら由来の物は使われず、鶏肉、羊肉、山羊肉、魚介類などが非菜食料理の主な食材となる。最もよく食べられる肉は比較的値段の安い山羊肉で、インドではマトンと英訳される慣例があるが羊の肉ではない。鶏肉は比較的値段が高い。インド国民の所得が増加するに従い、食肉の消費量は増加している。
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