結合価理論に基づく基本5文型の定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/04 14:20 UTC 版)
「動詞型 (英語)」の記事における「結合価理論に基づく基本5文型の定義」の解説
ここでは、曖昧さや循環定義を排すため、結合価の立場から基本5文型を定義する[B1,B2, F1]。同時に、主語、目的語、補語の定義も行う。この立場は、機械的という点において、言語学的には通常の学校文法で行われる定義よりもよく受け入れられている[B1,B2]。この定義方法では、(V1)~(V3)における”箱”の中身を、箱同士の関係や、箱の位置などから主語(S)、動詞の目的語(O)、補語(C)の3種類に分類して、下記のように動詞型を分類する。その結果、文型の分類も可能となる。 先述のように、この方法では主語、目的語、補語の定義も、語の位置によって機械的に定める。つまり、主語、目的語、補語の判定方法を以て、これらの定義とする。このように定義することで、「文型という概念があることはわかったが、補語と目的語の違いが判別できない」といった混乱がさけられ、定義として完結しているため、自動詞、他動詞、主語、目的語、補語との間との循環定義を避けることができる。 S+V(第I文型)上述の(V1)のケースを第I文型とよぶ(V1)。の{箱1}に入る語句は「主部」(S)とする。 一般的には{箱1}(S)には主格の名詞相当語句が入る。 S+V+C(第II文型)上述の(V2)のケースで、{箱1}={箱2}の論理関係が成り立つ(成り立ち得る)場合を第II文型と呼ぶ。{箱1}に入る語句は「主部」(S)とし、{箱2}に入る語句は補語(C)という。一般的には{箱1}(S)には主格の名詞相当語句が入り、{箱2}(C)には名詞相当語句又は形容詞相当語句が入る。 S+V+O(第III文型)上述の(V2)のケースで、{箱1}={箱2}の論理関係が成り立ちえない場合を第III文型という。{箱1}に入る語句は「主部」(S)とし、{箱2}に入る語句は目的語(O)と言う。一般的には{箱1}(S)には名詞相当語句が入り、{箱2}(O)には名詞相当語句又は形容詞相当語句が入る。 S+V+O1+O2(第IV文型)上述の(V3)のケースで、{箱1}={箱2}の論理関係が成り立たない場合を第IV文型と呼ぶ。{箱1}に入る語句は「主部」(S)とし、{箱2}に入る語句は第一目的語(O1)、{箱3}に入る語句は第二目的語(O2)と言う。 S+V+O+C(第V文型)上述の(V3)のケースで、{箱2}と{箱3}の間に主語、述語の関係が成り立つケースを第V文型と呼ぶ。 上記のI~V文型において、それぞれの箱に入りえるものは、一般的には 「前置詞を伴わない名詞相当語句(名詞、代名詞、名詞句、名詞節)」 「名詞を修飾していず、前置詞句でない形容詞相相当語句(形容詞、形容詞句、形容詞節)」[注1] に限定される。また、これらが主語、目的語、補語のどれになりうるかは、概ね以下に示すとおりである。 主語 ほとんど例外なく主格の名詞相当語句である。主格の名詞相当語句とは、~は、~がと訳し、代名詞He、Sheで置き換えられる名詞、代名詞、名詞句あるいは名詞節のことである。 動詞の目的語 ほとんど例外なく目的格の名詞相当語句である。 補語 名詞を修飾していない形容詞相当語句 なお、通常は本記事における動詞の目的語のことを単に目的語ということが多く、また、目的語の定義を、「~を」や「~に」と訳する目的格の名詞相当語句としていることがある。この立場は大筋で正しく、見通しのよい説明である。ただし、「~を」や「~に」と訳する目的格の名詞相当語句であっても上述の意味での(IIIからV文型に現れるO)と考えないことが多々ある。正確には英語においては、目的語(「~を」、「~に」 に相当する語句)には、上述で定義した「動詞の目的語」(IIIからV文型に現れるO)以外に「前置詞の目的語」がある。例えば I go to school.(S V;1文型)/私は学校に通う は、上述の(V1)に分類し、「{箱1}={ I }」、動詞「go」と考える。つまり、「(V2)で、「{箱1}={ I }」、動詞「go」、「{箱3}={to school}」とは考えない。{to school}は、前置詞toに導かれる前置詞句であるが、日本人的な発想で訳をすると、「{I}=私、{go}={通う}、{to}={に}{school}={学校}」と訳しても(この場合は)間違いではない。しかし、{to school}のschoolは、「~に」の意味をもっていても、「動詞go」の目的語とはせず、「前置詞toの目的語」とする(詳細は目的語の項目を参照されたい)。 尚、1文型の動詞を用いて「~が~を~した」という文を使う場合に限れば、粗い言い方をすれば「前置詞≒助詞」に近い発想で、頭から順番に単語帳で調べたような和訳を順次並べていって最後に日本語らしくならべ直す方法(いわゆる逐語訳)でも案外正しい英文が出来上がり正しい訳が得られる。ただし、そのような考えでは極めて大きな誤りを犯すことが(特にIV、V文型の文では)多々ある。英作文においてはそのような誤りの及ぼす影響はなおさら深刻である[F3]。そのような誤りを犯さないためには英和辞典や連語辞典等を活用することが有効である。 基本5文型においては、 副詞相当語句 前置詞句(仮に名詞句や形容詞句の機能を持っていたとしてもダメ、副詞句の機能を持っている場合も当然ダメ)[注2] は原則として文の要素としては扱わない[B7]。書物によっては、第V文型において、前置詞as等に導かれる前置詞句を例外的に文の要素として認めるなどの立場があり[F1]、英語自体の学習者の立場に立った場合にそのような立場をとったほうが見通しがよいことを認める。しかし、狭義の5文型に対する批判や、それに対する個々の学者の文型理論の改良を説明する上では、副詞相当語句、前置詞句を文の要素として決して認めない、やや窮屈な立場に立ったほうが簡単であり、本記事では基本5文型は、この立場から説明する。この立場による基本5文型を、必要に応じて便宜的に狭義の基本5文型(狭義の5文型)とよぶことにする。 狭義の5文型においては、文の要素以外のものを修飾語句と考える言い換えれば、狭義の基本5文型においては、その基本思想において、”文”で述べなければならないことの幹の部分は”文の要素”の部分で述べ、その部分さえ整っていれば文として成り立っているとみなし、枝葉、瑣末な部分を別途副詞相当語句や前置詞句でを別途付加することによって補うという思想が基本5文型にはある[B7]。前置詞句を文の要素に入れない理由は、前置詞句はその着脱に関して、比較的フレキシブル、つまり勝手に付け加えたり取り除いたりしても文として成立することが多いことによる。ただし、実際には(先述のasに導かれる前置詞句以外にも)取り除いたり、移動すると非文となる場合もあるので注意が必要で、英和辞典等での確認を要する[B1,B2,B7,F1-F4]。
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