空港警備上の対応について
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「全日空61便ハイジャック事件」の記事における「空港警備上の対応について」の解説
この事件を受け、運輸省航空局は、犯人が指摘した羽田空港(第1旅客ターミナル)の「警備保安上の問題点」について急遽臨時予算を投じて対応するとともに警備を強化し、全国の空港でも同様の保安上の問題点がないかどうかについての調査・対策を行った。羽田空港における到着ロビーの改修工事(逆流防止工事)は、事件2か月後の9月29日に完了した。おもな対策としては、保安検査場の金属探知機感度の引き上げや、盲点となった1階到着ロビー(受託手荷物返却場)入場後の2階ゲートラウンジ(出発口)への後戻りができないよう、自動改札機に似た逆流防止ゲート(「進入禁止」の標識があり、逆戻りすると警報音が鳴る)の設置とその付近で監視する警備員の配置がある。これにより、「61便の搭乗手続・セキュリティチェックを経て入場したゲートラウンジから到着ロビーの受託手荷物返却場へ向かい、伊丹からの乗り継ぎ到着便の受託手荷物に入れた凶器を取り出してゲートラウンジへ逆戻りすることでセキュリティチェックを免れて搭乗する」という犯人が実践した手段をとることは不可能となった。また、それまで機長の裁量で認められてきたコックピットへの一般乗客の見学・立ち入りを禁止し、当時18空港しか設置されていなかった受託手荷物検査時のX線透視検査装置を、対テロ対策の促進と合わせ全国のローカル空港や定期運航路線のある離島飛行場への追加導入を進めたことなどが挙げられる。 当事者となったANAは現在、搭乗する際のチェックインは2次元バーコードでの読み取りとしている。このチェックインでは入場の際のセキュリティチェックで使用した2次元バーコードと必ず同じものを使用しなければならない。もし、異なる2次元バーコードを使用した場合はチェックイン機で警報音が鳴り、入場時のセキュリティチェックを受けていないものとみなされて搭乗することができない。ANAもセキュリティチェックインで使用した2次元バーコードの紛失や誤用を防ぐため、マイレージカード(含むANAカード)や携帯電話・スマートフォンの2次元バーコードを用いてのセキュリティ通過・チェックインも可とし、カウンターでも利用客からの申請がなければ特に2次元バーコードを発行しないこととしている。 2004年(平成16年)に供用開始した羽田空港第2旅客ターミナル(本事件当事者であるANAが利用)では、出発ゲート(地上2階=到着ゲートのM2相当)と到着ゲート(地上1.5階部分)、ランプバス出発待合室および手荷物返却場・到着ロビー(地上1階)の3層構造とし、ボーディングブリッジを用いる搭乗口では各ゲート階へ通じる緩やかなスロープ型の通路2本がくの字型に設置され、通路前にある扉の開閉により流入をコントロールしている(第1旅客ターミナルや地方空港に見られる従来の搭乗口に出る形式ではない)。2010年(平成22年)竣工の新国際線ターミナル(現・第3旅客ターミナル)でも同様の構造がとられている。また、後に福岡空港でも国内線ターミナルで大幅な改修が行われた際にも第2旅客ターミナルビルに見られる搭乗者と降機者の動線を完全分離する形を取っている。 ただし、前述のとおり、犯人が犯行前の同年6月中旬に保安構造についての改善と自身を警備員として雇用を求める投書を送付したことについて、運輸省(当時)側は民間航空会社との会議の結果、以後対応せずに旅客ターミナルの管理主体である日本空港ビルデングや航空会社など民間側へ丸投げし、受任した民間側もコストを理由に対応しかねていた(放置した)事実が、読売新聞東京本社社会部が2002年(平成14年)に情報公開請求して開示された資料で判明し、5月12日付朝刊でスクープされた。事件が未然に防げた可能性があるとして、各社の対応のずさんさが改めて露呈した。
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