特殊事情の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 02:17 UTC 版)
番付編成後から発表までの間に、通常の引退以外の事情で力士が力士でなくなった場合(現役力士の解雇・死亡など)は番付を再編成せず、その力士がいた地位を空位にすることとなっている。 ただし、1971年(昭和46年)10月に急死した横綱玉の海の場合は、本来ならば翌11月場所の番付は西横綱に掲載される予定であったが、結果11月場所の新番付では玉の海の四股名ごと外されることとなり、又西横綱の番付も空位としなかった。これにより、北の富士ただ一人が東横綱の地位で番付に掲載され、この1971年11月場所から北の富士が名実共に、史上4例目の一人横綱として扱われることとなった。結果的に形式上は不自然な番付にはならず、このケースは一般的には空位の事例として考えられていない。 玉の海とは全く逆のケースとして、1990年(平成2年)1月場所で新入幕を果たし、西前頭10枚目で9勝6敗と勝ち越しながら、同年2月に急死した龍興山の場合は、翌3月場所の新番付は自己最高位の東前頭5枚目に載っていた。これは現役力士が場所後死亡しながらも空位にせず、番付に四股名が掲載されるという珍しい出来事である。この理由には、3月場所は龍興山の出身地である地元大阪で大相撲が開催されるため、「四股名だけでも故郷に錦を飾らせたい」という相撲協会の配慮により、異例ながらも番付に龍興山の四股名がそのまま残された。 1976年(昭和51年)10月に朝日山部屋の相続をめぐっての騒動でトンガ王国出身の幕下以下の力士が廃業に追い込まれた際、11月場所の番付表では幕下以下のそれぞれの部分が空位とされた。 2007年(平成19年)11月場所では、場所前に時津海が引退して年寄・時津風を襲名、番付表では時津風として表記されたため、重複を避けるため西前頭11枚目を空位とした(1人分のスペースが空白となった)。これは幕内では1873年(明治6年)11月場所に、高砂浦五郎とそのグループ(改正組)を除名した際以来134年ぶりの措置であった(この時は、該当者が黒で塗りつぶされていた)。 2008年(平成20年)9月場所では、若ノ鵬が大麻所持で逮捕、8月21日付で解雇され、東前頭8枚目を空位とした(1人分のスペースが空白となった)。番付発表後に露鵬・白露山の2力士が同じく大麻関連で解雇されたが、9月14日付の番付表では同じく空白となっている。2009年(平成21年)3月場所の番付表では若麒麟が2月2日付で解雇されたため、西十両筆頭が空位となった。 2008年(平成20年)1月場所、時津風部屋力士暴行死事件に関連して心労を理由に休場した時津風部屋の3力士の番付は3月場所において据え置かれた。戦後公傷を除き全休力士の番付が据え置かれたことはない。この異例の判断は理事長の北の湖によると「3力士とも捜査に協力しているため、社会通念上決めた」ということだった。 2010年(平成22年)1月場所後、西横綱朝青龍が同場所中の不祥事により引退。形式上は自らの意思による通常の引退であり、番付編成会議後の引退であったが、番付発表まで約3週間の余裕があったために、敢えて四股名ごと削除することとなった。これに伴い、本来なら西横綱に載るはずだった白鵬の地位は、1月場所と同じく3月場所も東横綱に掲載され、番付編成会議後の引退届提出により番付が変動するという極めて異例の措置となり、この場所では幕内全体の人数も定員の42人より1人少ない41人となった。 2011年(平成23年)3月場所は大相撲八百長問題の影響により開催が中止されたことにより番付の発表も行われなかった。番付の編成そのものは完了しており、3月場所で十両への昇進が決定していた力士を初めとする全力士はこの番付に基づいて遇されることになった。これによって決定された地位は2月28日に番付の代わりとなる「順席」として十両以上のみを掲載したものが各相撲部屋に配布され、5月6日に5月技量審査場所用の新地位表が、解雇された蒼国来(後に復帰)、星風の名前を削除して幕下以下も含めて発表された。 2020年(令和2年)5月場所は、番付発表直後に新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言延長を理由に開催が中止。同年7月場所の番付は新規に作成・発表されず、基本的に5月場所のものがそのまま有効(据え置き)となったが、5月場所番付編成会議後に引退・年寄を襲名した幕下の蒼国来と豊ノ島、5月13日に新型コロナウイルス感染症により亡くなった三段目の勝武士に相当する地位は事実上の空位となった。 2021年(令和3年)9月場所では、貴源治の大麻使用(7月20日判明)により7月30日付けで懲戒解雇となったことに伴い、2008~2009年の大相撲力士大麻問題の場合と同様、貴源治の名前が掲載されるはずだった西十両9枚目が空位となった。 2021年(令和3年)11月場所の番付では、白鵬の正式な引退発表が番付編成会議後であったため、本来なら同場所の番付に白鵬の四股名が残るところ、その四股名が外されたため、同場所の番付では幕内力士が定員より1人少ない41人となり、番付編成上は不祥事により引退した朝青龍と同様のケースとなった。
※この「特殊事情の場合」の解説は、「番付」の解説の一部です。
「特殊事情の場合」を含む「番付」の記事については、「番付」の概要を参照ください。
- 特殊事情の場合のページへのリンク