特殊な数値流体力学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/01 19:40 UTC 版)
流れの中では多くの物理過程が起こり得、それらが流れと相互作用を及ぼしあうことで多様な現象が現れる可能性がある。重要な応用分野ではこのような物理過程が起きており、CFDの適用が研究、応用されている。 乱流工業分野で現れる流れの多くは乱流であり、乱流モデルを用いた特別な扱いが必要となる。 希薄流体クヌーセン数が0.01以下の流れ場では、流体分子同士が頻繁に衝突しその運動が平均化されるため、流体は連続体とみなせ、流体力学を適用できる。一方、クヌーセン数が0.01以上の場合、流体分子の衝突が極端に減り、別個に運動するようになるため分子運動論的な取り扱いが必要となる。このような流体を希薄流体と呼ぶ。希薄流体では支配方程式として流体力学方程式が成り立たず、ボルツマン方程式が有効となる。この種の数値シミュレーションは半導体微細加工プロセスに用いられている。 極超音速気流マッハ数が5を超えるような極超音速気流では、超高温の衝撃波によってプラズマが発生している。このような気体を実在気体と呼び、解析には前述の流体力学の方程式に加えて熱化学方程式による解析が必要とされる。この種のシミュレーションはロケットなどの設計に用いられている。 アクティブスカラー温度や溶解している物質があっても、それらの変化が小さい場合はそれが流れに及ぼす影響を無視することが多い。この場合の温度や濃度などの物理量はパッシブスカラーと呼ばれ、流れ場を解いた後にこれらを解けばよいため、比較的問題は単純である。しかし、その変化が大きい場合は化学種濃度によって流体の密度や粘性が変化する場合があり、そのことによって流れが駆動される場合もありうる。この場合はアクティブスカラーと呼ばれ、流れ変数との連成問題を解く必要が生じる。 非ニュートン流体粘性応力とひずみ速度が単純な線形関係で表せないような非ニュートン流体を考慮しなければならない場合がある。さらに、粘弾性流体の場合は応力が連立非線形編微分方程式で記述される。 界面流体中を固体物体が動く場合や、液面のように界面自体が流れ場を解いた結果として得られる場合(自由表面と呼ばれる)がある。VOF法(Volume of fluid)や埋め込み境界法などの手法がある。 混相流空気中の粉塵や液滴の噴霧、液中の気泡、沸騰など、複数の相が混ざり合う混相流の場合がある。 化学反応流れの中で化学反応が起こり、さらにその反応が大きなエネルギーを生む場合(燃焼、爆発など)がある。 気象学、海洋学大気や海洋を扱う場合は、きわめて高いレイノルズ数と非常に大きいアスペクト比、そして地球の回転による力が重要になる。数値予報も参照。 プラズマ流、磁気流体力学天文物理学などの分野では電磁気の効果が重要な役割を担い、運動方程式をマクスウェル方程式と共に解く必要がある。
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