特殊な文字体系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 00:16 UTC 版)
パハウ・フモン文字では、子音と母音の両方を完全な字で表す。しかし表示上の順序は、たとえ子音→母音の順に発音するときでも母音→子音の順である。これはインド系アブギダの /o/ 母音にいくらか似ている。が、パハウ・フモン文字は随伴母音 /au/ を書かないだけではなく、随伴子音 /k/ も書かないという風変わりなものである。音節 /kau/ では、どちらかの随伴音を書かないわけにはいかないので、書くときは /au/ である。要するに、パハウ・フモン文字のアクシャラは、随伴子音のあるひとつの母音として現れる。 アブギダとそれ以外の音素文字体系との間の明瞭な線引きは難しい。歴史上中間的な文字はいくつも生まれている。たとえば古代ヌビアのメロエ文字は、随伴する a を示さない(ひとつの記号が m と ma の両方を表すなど)ため、ブラーフミー系文字のアブギダに似ている。しかし、他の母音は完全な字で示し、ダイアクリティカルマークや変形では示さない。したがってこの文字体系は、本質的にはアルファベットに近いがある母音を表記しないものであったと言えよう。 ターナ文字も、母音をダイアクリティカルマークとして付加するため、アブギダに似ている。しかし、母音のすべてで(母音がないときも)付加する。随伴母音はない。通常、字がダイアクリティカルマークなしで現れることはない。要するにこれは、母音の付加が必須のアブジャドと等価である。なお、これはもともと自分たちの言語をアブギダ表記していた人々の間で発達してきたものである。クルド語の現代のアラビア文字表記やウイグル語のアラビア文字表記は母音を完全に字母で表記するので典型的なアルファベットである。 速記システムには、母音にダイアクリティカルマークを使うものもいくつかあるが、随伴母音がないので、ブラーフミー系文字の文字体系よりもむしろターナ文字やクルド語の文字に似ている。ガベルスベルガー式速記システムとその改良版では後置子音を変化させて母音を表す。ポラード文字は速記を基にしているが、やはり母音にダイアクリティカルマークを使い、子音に対する母音の位置関係で声調を示す。
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