派遣そのもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 06:18 UTC 版)
肯定的な意見 そもそも、派遣地域が支援を必要としている。 治安が不安定なイラクで支援するには自衛もしくは護衛が必要であり、自衛能力を備えた自己完結組織である自衛隊が適している。 アメリカ合衆国ブッシュ政権に貸しを作ることにより見返り(特に北朝鮮による日本人拉致問題の解決のための国際的支持)が得られるなど、日米安保による事実上の同盟を更に堅固なものにすることで、日本は様々な国益を得る。 自衛隊が給水活動を行ったところ、乳幼児の死亡率が3分の1に減った。きれいな水を支援するだけで目に見えて変化があるため、派遣している意義は大きい。 サマーワ市民の期待に添えなかったとしたら、日本の自衛隊は憲法第9条を遵守しているためである。他国の軍隊・国軍の活動とは違い、自衛隊の行動や活動には制限がある。2004年5月、新しく統合したEUは、米国一国による世界の国際紛争の解決を懸念し、独自で軍事力を強化している。世界的に軍隊や軍事力は国際紛争の解決の手段(…及び、外交の手段)として重要なままである。 赤十字といった国際的機関も撤退し、観光目的などで渡った日本人が拉致や殺害されるなどイラクの治安は悪化している。このような地域で自衛能力を有した集団以外の活動は困難である。非武装で活動すればテロに対して格好の標的になり、逆に地元軍・警察や所属国家の手を煩わせることになりかねない。そのため、非政府組織による復興を大規模に行うにはまだ危険であり、復興支援のごく初期段階を自衛隊が行うことは非効率性を差し引いてももっとも確実であるといえる。イラク戦争に反対の姿勢を取っていたカナダも、復興支援のために民間でなく軍の機材を提供している。 イラク武装勢力に拉致拘束された自国民を解放するため、フィリピン政府が自国の軍隊をイラクから撤退させたことは、 米・英・豪など参戦国から「テロに誤ったメッセージを与え、更なるテロを助長した」などの批判が浴びせられた。今更自衛隊を撤退させても、テロに屈したとみなされ日本の国際的な地位や信用を無くすだけである。 小川和久によれば、民生協力によって社会資本の再建を手助けすることは、(貧困がテロを深刻なものにしている一因であることを考慮すれば)テロの温床を根絶することにつながる。これは日本国憲法の前文が示している精神にも適うことである。日本にとってはテロリストと大量破壊兵器の結びつきが現実的脅威となるため、たとえアメリカと同盟関係になくとも、独自に対テロ戦争に関わっていくことになるだろうし、アメリカ合衆国とはこの点において利害が一致しているに過ぎない。貸しを作ることによる見返りを期待することが目的ではないと指摘している。 否定的な意見 自衛隊の派遣は米国によって「有志連合」の一員と見なされている。現地の報道でも日本軍として報じられている。また、自衛隊による輸送は復興支援物資だけではなく、多国籍軍の輸送も行っており、兵站支援であるから戦闘目的の一部であり、武力行使を禁じた憲法第9条違反である。 イラク日本人人質事件が自衛隊イラク駐留を原因とするという主張がある。 自衛隊の派遣は戦闘目的ではなく復興支援である(という立場から)。米は復興支援要員を少なくすることが出来るので戦力を大きくさせることにつながる。 これまでの自衛隊の海外派遣は、主に国連平和維持活動(PKO)の下で活動しており、今回のイラク派遣は国連指揮下ではないことが問題である。 非武装中立で経験の長い非政府組織の復興活動に比べ自衛隊による復興支援は極めて非効率的な上、日本の非政府組織の復興支援の中立性を脅かしかねない。 覇権主義的姿勢の米ブッシュ政権を支持する小泉純一郎政権の外交姿勢に主体性はないに等しい。 自衛隊は日本を守る為にこそ存在するのであり、自民党がブッシュ政権に自分達を認めてもらうために使う私兵ではない。
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