沖縄核密約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/23 15:38 UTC 版)
佐藤の密使を務めたとされる若泉敬が「1969年(昭和44年)11月に佐藤・ニクソン会談後の共同声明の背後に、有事の場合は沖縄への核持ち込みを日本が事実上認めるという秘密協定に署名した」と1994年に発表した著書『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』で証言した。 2007年には、信夫隆司・日本大学教授によるアメリカ国立公文書記録管理局での機密解除公文書調査で、交渉当事者であった大統領補佐官ヘンリー・キッシンジャーが1969年11月19日から21日にかけての日米首脳会談のためにニクソンに宛て作成した、核密約締結手順を記載したメモが発見された。メモの日付は1969年11月12日付と同13日付で、11月12日付メモは「沖縄返還後の米国の核持ち込みと繊維問題に関する日本政府との秘密交渉」と題されており、核持ち込みについての秘密合意に沿って両首脳の会談交渉の進め方について明記され、11月13日付メモでは「昨日午後、私とヨシダ氏が最終的な協議で行動計画は合意に至った」と記されていた。若泉敬も『他策ナカリシヲ―』中で「ヨシダ」という偽名でキッシンジャーと接触していたことを記しており、若泉証言を裏付けるものとなった。 われわれが共同声明で述べたとおりで、米国政府の意図は、実際に沖縄の施政権が日本に返還されるときまでに、沖縄からすべての核兵器を撤去することである。そして、それ以降は、共同声明で述べたとおり、日米安全保障条約と関連する諸取決めが沖縄に適用される。しかしながら、日本を含む極東諸国の防衛のため米国が負っている国際的義務を効果的に遂行するために、米国政府は、極めて重大な緊急事態が生じた際、日本政府との事前協議(A)を経て、核兵器の沖縄への再持ち込みと、沖縄を通過させる権利を必要とするであろう。米国政府は、その場合に好意的な回答を期待する (B)。米国政府は、沖縄に現存する核兵器貯蔵地である、嘉手納、那覇、辺野古、並びにナイキ・ハーキュリーズ基地を、何時でも使用できる状態に維持しておき、極めて重大な緊急事態が生じた時には活用できるよう求める。 日本国総理大臣 日本国政府は、大統領が述べた前記の極めて重大な緊急事態の際の米国政府の諸要件を理解して、かかる事前協議が行われた場合には、遅滞なくそれらの要件を満たすであろう。 — リチャード・ニクソン米国大統領、1969年11月21日発表のニクソン米合衆国大統領と佐藤日本国総理大臣との間の共同声明についての合意議事録 日米首脳会談はニクソンと佐藤がウエストウイング・オーバルルーム隣の、「書斎」とみられる小部屋で2人きりで署名するとされ、公開された米公文書には2人が小部屋に入る記述があるが、議事録は公開されていなかった。2009年12月22日、合意議事録の現物が佐藤邸で発見された。 2010年(平成22年)3月に政府調査報告書では佐藤がニクソンと交わした、有事の際に沖縄への核持ち込みについて、事前協議が行われた際には日本側が「遅滞なく必要を満たす」ことを明文化した密約の文書が確認されたが、外務省の中で引継ぎがされた形跡がないという理由から日本政府として米国政府と密約したことは確認できないと結論づけた。一方で内閣は鈴木宗男からの質問主意書に対して「発見された佐藤・ニクソン会談議事録は真正文書であると考える」旨の答弁書を閣議決定している。 2010年9月1日に日本社会党(現:社会民主党)所属の村山富市元首相は核持ち込みについて、「私が総理をやっているときには、全然、問題になったこともありませんしね。これは、全然、私は聞いたこともありません。だからこれはわかりませんけれどもね。その程度の話ですね」、「あまり関心もなかった。後からいろいろ出てきて、ああ、こんなこともあったんじゃな、というようなことは思いましたけれどもね。その程度の話ですね。」と述べている。 日米首脳会談で沖縄返還に合意した3日後の1969年11月24日付のリチャード・ニクソンからヘンリー・キッシンジャーに宛てたメモによると、「大変満足できる内容の秘密合意を日本と結んだ」「佐藤栄作との約束に背かない範囲で」「外部に漏れたら密約の存在は否定する」日本政府から秘密裏に「沖縄の基地使用に関する際保証」を得ている事を上院の民主党の有力議員2人に伝えるように指示した事が機密解除され分かり、「核抜き本土並み」の返還のはずが骨抜きにされていたことをニクソン自身が明らかにしていた。 なお、この密約を公開したとして毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった西山事件が起きた。
※この「沖縄核密約」の解説は、「日米核持ち込み問題」の解説の一部です。
「沖縄核密約」を含む「日米核持ち込み問題」の記事については、「日米核持ち込み問題」の概要を参照ください。
- 沖縄核密約のページへのリンク