比喩、俗語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 10:02 UTC 版)
比喩的な俗語として、直前に分野などの名称を付した「○○警察」という表現がある。「○○」に任意の言葉を当てはめて用いる。2010年代に広まった用法とされ、numanの記事(2017年)やねとらぼの記事(2018年)では、フィクションの作品における表現に対して、実際のものと異なる点を細かく指摘して批判する者を、取り締まりを行う警察にたとえたネットスラングとされている。2020年のizaの記事や三省堂国語辞典の編集委員飯間浩明の語釈では、おおむね同様の説明となっているが対象はフィクションに限定されておらず、飯間は用例として「マナー警察」をあげている。なお英語においてもgrammar policeやfashion policeのように、取り締まりを行う警察にたとえた表現が見られる。日本でカタカナ語として定着しているトーン・ポリシングも、「話し方警察」などと訳されることがある。 三省堂のウェブサイトでは、言語学者田中克彦の著書『ことばと国家』(1981年)に見える「言語警察制度」をあげて「ルール違反を許さないことを『警察』と呼ぶ例」は以前から存在したとし、「ここ10年ほどで使用例が増えたものの、最近までマイナーな印象」であったが、新型コロナウイルスの流行時に生じた「自粛警察」や「マスク警察」などによって、俗語が一般にまで広まったとしている。 2012年6月26日、Kotaku JAPANに作家N・K・ジェミシンによるコラムの訳文が掲載された。そこではファンタジーにおける魔法の法則や整合性に固執し、他者の作品を非難する人々が「ファンタジー警察」(原文ではFantasy Police)と呼ばれ論難されている。 2013年、創作の場を『東方Project』から『艦隊これくしょん -艦これ-』に移した同人作家を特定し、糾弾しようとする一派が「東方警察」であるとされた(ただし「ネタ説が濃厚」でそのような実態はなかったとされる)。ねとらぼではこれが「○○警察」の起源であり、のちに現在の用法へ変化したと説明している。なお当時の東京ブレイキングニュースの記事では、Twitterで噂されるグループとして言及され、同人作家への脅迫もあったとされていた。 2015年には、同年に放送された『艦隊これくしょん』のテレビアニメ作中の表現に対し、現実の弓道とは異なると経験者がSNS上で指摘し「弓道警察」として話題になった。numanの記事では「ファンを激昂させた」とされており、izaの記事においても「反発を招いた」としている。またizaではこの一件が「○○警察」の発端であるとしている。この年には既に三省堂が毎年発表する「今年の新語」で新語の候補として挙げられているが、2017年時点でも飯間浩明(同企画の選考委員で、三省堂国語辞典編集委員) は「『〇〇警察』(例、日本語警察)などを複数の人たちが挙げていました(略)まだ使用者・場面の範囲が狭い感じがします」とTwitterで発信していた。 2020年には、新型コロナウイルスの流行に関連して「自粛警察」と呼ばれる迷惑行為が多発し、ワイドショーなどでも取り上げられた。同年11月30日に発表された「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2020』」では「○○警察」が2位にランクインした。選考結果サイトでは飯間浩明による語釈が掲載されている。毎日新聞校閲センターの谷井美月は「自粛警察」という言葉が生まれる以前の「○○警察」の用例について、着物や日本語といった特定分野における「警察」の指摘が正しいか正しくないかを議論をする場合などに限られていたと考えられる、としている。 ○○警察という表現は中国語圏にも見られる。「的」「地」「得」は中国語で同じ発音(拼音: de)だが、それらを混同している人にわざわざ間違いを指摘する人・行為は「的地得警察」と呼ばれる。他にタイプミスされやすい、同音の文字の間違いを指摘する「在再警察(「在」「再」はいずれも同じ発音〈拼音: zài〉)」、「做作警察(「做」「作」はいずれも同じ発音〈拼音: zuò〉。なお、そもそも「作」は同音の「做」の字を当てて書かれることも少なくない)」、また「标点符号警察」(標点符号警察、句読点警察)といった表現も同様の背景から見られる。
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