殺精子剤
殺精子剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:15 UTC 版)
精子を殺す作用のある薬剤を性交の一定時間前に膣内に挿入し、避妊を行う。ピルのような全身の副作用がなく、女性自身の手で避妊できるという利点がある。欠点は錠剤やフィルム状の製品は膣内奥に留置するのにコツが必要であり、溶解するのに時間が掛かるので、初心者では失敗しやすく、避妊の確率はあまり高くない(PI:6-26程度)。そのため、他の避妊方法との併用が好ましい。 また、性交後に薬剤が流れ出て下着やシーツが汚れやすいという欠点や、薬剤によるアレルギーで外陰部炎を起こすケースもある。スポンジ以外の製品は、1回の射精につき1つ使用する必要があり、2回目以降の射精では追加投与が必要である。 日本では嘗てマイルーラ(大鵬薬品工業)やサンプーン(エーザイ)等が国内向けに販売されていたが(詳しくは後述)、2015年までに全て販売終了となっている。ただ認可はされているので、世界からの個人輸入で取り寄せることは可能。 以下の5種類のタイプが存在する。 錠剤 溶けるのに時間がかかり即効性でなく、行為の後に流れ出た薬剤で下着やシーツを汚しやすいのが欠点。反面携帯に便利という利点もある。薬剤は膣液で絶えず希釈され体外に流出することもあるので射精のたびに追加使用する必要がある。日本ではエーザイからメンフェゴールを主成分とする「ネオサンプーン ループ錠」が製造販売されていたが、原料の入手難により2011年3月に製造終了した。トローチ状のリング形状をした白色の錠剤であり、膣の奥に入れると膣液で溶解・発泡して効果を発揮する仕組みであった。アメリカでは半固形の坐薬状の形状のものが「Encare」(エンケア)の商品名で販売されている(エンケアの主成分はノノキシノール-9)。 ゼリー 海外ではペッサリーに塗布して使用する薬剤や、アプリケーターで膣内に注入する製品が販売されている。使用直後から効果発揮するのが利点であるが、アプリケーターが必要であり、使用後に洗浄などの手間隙が必要なのが欠点。充填済みの使い捨てアプリケーター形式の製品も海外では販売されている。アプリケーターに充填してから使用する商品では、アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。日本ではかつてFPゼリー:発売/日本家族計画協会(製造/第一薬品産業株式会社)が販売されていた。FPゼリーの成分はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであったが、発売中止されている。アメリカではOrtho(Ortho Options Vaginal Contraceptive Jelly)やOptions Conceptrolという製品が販売されている。 フィルム 3cm四方の半透明のフィルム状の薬剤を折りたたんで膣の奥に留置し、膣液で溶解して効果を発揮するもの。携帯に便利であるが折りたたんだ薬剤を膣の奥に留置するのが難しいという欠点がある。錠剤と同じく即効性ではない。日本ではマイルーラという製品が大鵬薬品工業から販売されていたが、外陰部の刺激症状のトラブル報告などもあり、2001年3月に販売中止された。マイルーラの成分もFPゼリーと同じく、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである。アメリカでは同じ成分の「VCF」という製品が販売されている(VCF Dissolving Vaginal Contraceptive Films)。 スポンジ 殺精子剤を染み込ませたポリウレタン製のスポンジを膣円蓋に留置して避妊するもの。精子を物理的・化学的に阻止する。妊娠阻止率は89% - 91%でアメリカの「トゥデイ・スポンジ」(Today Sponge) が代表的商品。24時間効果が持続するのが特徴で2回目以降の射精に対しても追加で使用する必要は無い。性交渉の後6時間は膣内にスポンジを留置する必要がある。最大留置時間は30時間とされている。スポンジは使用前に水を含ませてから膣内に挿入する。タンポンの使用経験が無い女性には正しい位置にスポンジを留置するのは難しいとされ、使用を避けるべきと説明書には勧告されている。スポンジには子宮頚部にフィットするように凹部が設けられており、また取り出すときに指を引っ掛けやすいようにバンドが取り付けられている。スポンジの硬さは膣組織と同じ硬さに設定されており、性交時の男性側の違和感を緩和する工夫がなされている。1995年に製造元の設備劣化のために販売中止となり、在庫を巡って騒ぎになった。映画『となりのサインフェルド』では、主人公がスポンジを愛用していたが製造中止によって手持ちが少なくなり、使う相手を厳選するというエピソードが紹介されている。2005年に製造権利を買い取った新興企業アレンデール・ファーマスーティカルズ社から再発売された。 フォーム 殺精子剤を泡状にしたもの。スプレー缶に充填されており、使用前にアプリケーターに泡状の殺精子剤を充填し、アプリケーターを膣内に挿入して注入する。特徴はゼリーとほぼ同じで即効性。アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。2000年代までアメリカで流通していたが、その後発売中止となっている。
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