核攻撃発言
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2005年7月14日、香港にて『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『フィナンシャル・タイムズ』など各国の報道機関を前に、アメリカが台湾有事に介入した場合、中国は核戦争も辞さないと発言し、個人の見解とした上で、アメリカの数百の都市と引き換えに西安より東の都市すべてが壊滅することも厭わないと述べた。また、「世界の人口は無制限に迅速に増加している。今世紀中に爆発的増加の極限に到達するはずだ。しかし地球上の資源は有限なのだから、核戦争こそ人口問題を解決するもっとも有効で速い方法である。(世界人口在无限制地迅速增长,在本世纪内就要达到爆炸的极限,而地球上的资源是有限的,核战争是解决人口问题最有效最快速的方法)」と核戦争を賛美する発言を行った。 朱成虎少将の発言は以下の通り。 「もしアメリカが中国と台湾との軍事紛争に介入し、ミサイルや誘導兵器を中国領土内の標的に向けて発射すれば、中国は核兵器で反撃する。現在の軍事バランスでは中国はアメリカに対する通常兵器での戦争を戦い抜く能力はないからだ」 「アメリカが中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、中国側からのアメリカ本土核攻撃は正当化される。(アメリカによる攻撃の結果)、中国側は西安以東のすべての都市の破壊を覚悟せねばならない。しかしアメリカも数百の都市の中国側による破壊を覚悟せねばならない」 — 朱成虎、2005年7月6日 朱成虎の会見に参加していた『ウォール・ストリート・ジャーナル』のダニー・ギティングス記者によると、朱将軍は流暢な英語で「(中国は一貫して)核兵器先制不使用」は軍事戦略の基本方針であり、非核の通常兵器による戦争になっても、先に核兵器は使用しないと宣言してきたが、「核兵器先制不使用」は「非核の国との戦争にのみ適用される原則だ」とか「この種の方針はよく変わる」などと明言した。 即座に7月15日アメリカでも一斉に報道され、ヨーロッパ、台湾などでも物議をかもし新聞などで一斉に報道された。7月15日、この朱成虎発言に対してアメリカ合衆国国務省スポークスマンのショーン・マコーマックは「極めて無責任で、中国政府の立場を代表しないことを希望する。非常に遺憾」と非難した。中国政府はのちに公式見解ではないと発表したが、同時に「中国は台湾の独立を絶対に容認しない、中国国家の分裂を促すあらゆる行動を許さない」と強調した。これについて台湾高等政策研究協会執行長官楊念祖(中国語版)は、「核攻撃発言はアメリカと日本に向けられたものであり、中国政府はこの発言で、米日両国の反応を試し、両国の態度を探りたいのだろう」という見解を示した。また、大陸委員会のスポークスマンは、朱の発言は非常に不適当で、中国のタカ派の強硬な態度を示したとコメントした。 7月17日の『ワシントン・タイムズ』の報道によると、アメリカ国防総省の高官は「朱成虎氏の発言は、おそらく事前に中国高層部の許可を得た、中国政府の見解を代表するものだろう。戦争計画の一部を無意識に漏らした可能性もある。この発言の意図は、アジア国家にアメリカの軍事力を恐れていないことをアピールするものだろう」と分析した。 『産経新聞』ワシントン支局長などを務めた古森義久は、この発言を「衝撃的というか、驚愕というか、びっくり仰天し、そのあとに肌寒い恐怖に襲われる」と述べている。 事態を重く見たアメリカ合衆国議会は即座に反発し、7月22日に発言に対し発言撤回と朱成虎の罷免を求める下院決議を採決した。それを受けて、中国外交部は、朱の発言は中国政府の立場を表すものではないとのコメントを出し、中国人民解放軍は同年12月、朱に「行政記過」(過失を記録に残すの意)処分を下し、1年間の昇進停止としたが、これは2番目に軽い罰則と報じられている。アメリカ合衆国下院が求めた罷免は行われず、国防大学からも更迭は行わなかった為、その後も教鞭をとっている。
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