普門示現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 07:42 UTC 版)
観音が世を救済するに、広く衆生の機根(性格や仏の教えを聞ける器)に応じて、種々の形体を現じる。これを観音の普門示現(ふもんじげん)という。法華経「観世音菩薩普門品第二十五」(観音経)には、観世音菩薩はあまねく衆生を救うために相手に応じて「仏身」「声聞(しょうもん)身」「梵王身」など、33の姿に変身すると説かれている。なお、観音経とは別に、密教経典『摂無礙経』にも三十三身の記載があり、両者は細部が異なる。(下記参照) 西国三十三所観音霊場、三十三間堂などに見られる「33」という数字はここに由来する。なお「三十三観音」(後述)とは、この法華経の所説に基づき、中国及び近世の日本において信仰されるようになったものであって、法華経の中にこれら33種の観音の名称が登場するわけではない。 この普門示現の考え方から、六観音、七観音、十五尊観音、三十三観音など多様多種な別身を派生するに至った。 このため、観音像には基本となる聖観音(しょうかんのん)の他、密教の教義により作られた、十一面観音、千手観音など、変化(へんげ)観音と呼ばれる様々な形の像がある。阿弥陀如来の脇侍としての観音と異なり、独尊として信仰される観音菩薩は、現世利益的な信仰が強い。そのため、あらゆる人を救い、人々のあらゆる願いをかなえるという観点から、多面多臂の超人間的な姿に表されることが多い[要出典]。その元となったのが三十三応現身像と言われている。応現身とは相手に応じて様々な姿に変わることをいう[要出典]。 『観音経』の観音三十三応現身の種類及び、対応する仏尊、三十三観音を以下に図とする。 『観音経』の観音三十三身の種類対応する仏尊三十三観音『摂無礙経』の観音三十三身の種類1仏身 阿弥陀如来(観自在王如来) 青頸(しょうきょう)観音 仏身(ぶっしん) 2辟支仏(びゃくしぶつ)身 水月観音 辟支仏身(びゃくしぶつしん) 3声聞(しょうもん)身 持経(じきょう)観音 声聞身(しょうもんしん) 4梵王身 梵天 徳王観音 大梵王身(だいぼんおうしん) 5帝釈(たいしゃく)身 帝釈天 葉衣(ようえ)観音 帝釈身(たいしゃくしん) 6自在天身 他化自在天 瑠璃観音 自在天身(じざいてんしん) 7大自在天身 大自在天 普悲(ふひ)観音 大自在天身(だいじざいてんしん) 8天大将軍身 不明 威徳(いとく)観音 天大将軍身(てんだいしょうぐんしん) 9毘沙門身 毘沙門天 阿摩提(あまだい)観音 毘沙門身(びしゃもんしん) 10小王身 蓮臥(れんが)観音 小王身(しょうおうしん) 11長者身 衆宝(しゅうほう)観音 長者身(ちょうじゃしん) 12居士(こじ)身 六時観音 居士身(こじしん) 13宰官身 一葉観音 宰官身(さいかんしん) 14婆羅門身 合掌観音 婆羅門身(ばらもんしん) 15比丘(びく)身 比丘身(びくしん) 16比丘尼身 15、16をまとめて白衣(びゃくい)観音 比丘尼身(びくにしん) 17優婆塞(うばそく)身 優婆塞身(うばそくしん) 18優婆夷(うばい)身 優婆夷身(うばいしん) 19長者婦女身 馬郎婦(ばろうふ)観音 人身(じんしん) 20居士婦女身 非人身(ひじんしん) 21宰官婦女身 婦女身(ふじょしん) 22婆羅門婦女身 童目天女身(どうもくてんにょしん) 23童男身 童男身(どうなんしん) 24童女身 23、24をまとめて持蓮(じれん)観音 童女身(どうにょしん) 25天身 いわゆる天龍八部衆 天身(てんしん) 26竜身 龍身(りゅうしん) 27夜叉(やしゃ)身 25から27までをまとめて龍頭(りゅうず)観音に配当 夜叉身(やしゃしん) 28乾闥婆(けんだつば)身 乾闥婆身(けんだつばしん) 29阿修羅身 阿修羅身(あしゅらしん) 30迦楼羅(かるら)身 迦樓羅身(かるらしん) 31緊那羅(きんなら)身 緊那羅身(きんならしん) 32摩睺羅伽(まごらが)身 摩睺羅伽身(まごらがしん) 33執金剛身 執金剛神 不二(ふに)観音 執金剛身(しゅうこんごうしん)
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