映画館転換後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 20:59 UTC 版)
第二次世界大戦後には映画の専門劇場に転換し、桟敷席や花道を取り壊して6人がけのベンチ席を設置した。昭和20年代後半には、一日の観客数が1,000人を超えて扉が閉まらなくなることもたびたびあったという。1953年(昭和28年)の上伊那郡伊那町には伊那旭座と伊那電気館の2館があり、525席の伊那旭座は松竹・東宝・新東宝の作品を、500席の伊那電気館は大映・東映の作品を上映することですみ分けを図っていた。伊那町以外の上伊那郡には辰野劇場(辰野町)・松島劇場(中箕輪町)・赤穂映画劇場(赤穂町)の3館があり、下伊那地域の飯田市には銀星会館・常盤劇場・中央劇場の3館があった。市制施行後の1957年(昭和32年)には建物の改修工事を行った。畳敷きだった2階席を栗材の板敷きとし、スクリーンにはシネマスコープを導入した。 伊那地方の映画館(1960年)上伊那地域 伊那旭座(伊那市) 飯伊地域 常盤劇場(飯田市) 伊那電気館(伊那市) 銀星会館(飯田市) 伊那中央劇場(伊那市) 飯田東映中劇(飯田市) アカホ映画劇場(駒ヶ根市) 飯田松竹劇場(飯田市) 赤穂キネマ(駒ヶ根市) 松川文化会館(松川町) 赤穂銀映(駒ヶ根市) 阿島文化会館(喬木村) 辰野劇場(辰野町) 満島劇場(平岡町) 松島映画劇場(中箕輪町) 森盛会館(根羽村) 高遠文化会館(高遠町) 1950年代後半には国鉄伊那市駅前に伊那中央劇場が開館し、日本の映画館数がピークとなった1960年(昭和35年)の伊那市には伊那旭座、伊那電気館(天竜川沿い)、伊那中央劇場(国鉄伊那市駅前)の3つの映画館があった。映画全盛期には400席が常に満席となり、立ち見などを合わせて約600人を収容、1日の観客数は3,000人近くにものぼった。伊那旭座は「(伊那)市民の娯楽の殿堂」と呼ばれた。『全国映画館録 1960』によると伊那旭座の座席数は1,180席であり、邦画も洋画も上映していた。伊那市以外の伊那谷の映画館としては、駒ヶ根市に3館が、飯田市に4館が、上伊那郡には辰野町・中箕輪町・高遠町に1館ずつの計3館が、下伊那郡には松川町・喬木村・平岡町・根羽村に1館ずつの計4館があった。 日本の映画館数は1961年(昭和36年)から1993年(平成5年)まで減少を続けた。1968年(昭和43年)には伊那電気館が閉館したため、1968年には旭座の裏手に伊那映画劇場(現・伊那旭座2)が建設され、松竹・東映・東宝・日活など主要映画会社すべての映画を上映する邦画専門館として開館した。昭和30年代から昭和40年代には映画に加えて実演の興行も手掛け、ザ・ジャガーズなどグループ・サウンズのライブが行われた。 旭座1は20世紀フォックスやコロンビア映画配給作品を中心とした洋画専門館だったが、同じく洋画専門館で国鉄伊那市駅前にあった伊那中央劇場が1970年代前半に成人映画館に転向すると、旭座1で全配給会社の作品を上映するようになった。このように1960年代後半から1970年代前半には近隣の映画館が相次いで閉館したが、『タワーリング・インフェルノ』(1974年、ジョン・ギラーミン監督)は映画館に客が戻ってくるきっかけとなった。 1978年(昭和53年)に公開された『聖職の碑』(森谷司郎監督)は木曽駒ヶ岳での遭難事故を主題としている。伊那旭座だけで6万人の観客動員を得て、東京の映画館をしのいで伊那旭座が日本最高の観客数を記録した。伊那旭座の上映作品では『あゝ野麦峠』(1979年、山本薩夫監督)や『南極物語』(1983年、蔵原惟繕監督)などもヒット作となった。1980年代から2012年までは、自主上映団体の伊那シネマクラブが月1回の頻度で映画上映会を行っていた。 2011年には19世紀に伊那谷で活躍した俳人・井上井月の生涯を描いた『ほかいびと 伊那の井月』(北村皆雄監督)が製作された。公開前日の11月19日には北村監督や主演の田中泯によるトークイベントが開催されている。2012年7月には新田次郎の生誕100周年を記念して、34年ぶりに『聖職の碑』が公開され、公開初日の7月1日には150人もの観客が詰めかけた。横浜聡子監督による映画『俳優 亀岡拓次』は諏訪市や伊那市をロケ地としており、登場人物が映画館に行くシーンは伊那旭座で撮影が行われた。2016年2月27日の公開初日には横浜監督による舞台挨拶が行われている。伊那市は『僕だけがいない街』(平川雄一朗監督)のロケ地となっており、2016年4月には作中で用いた小道具などを展示するパネル展が行われた。 長野県郷土史研究会の調査によると、2014年時点で日本に現存する木造映画館9館のうちのひとつである。同会の機関誌「長野」最新号では伊那旭座も取り上げられている。
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