文部科学省元事務次官の前川喜平の証言
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「八重山教科書問題」の記事における「文部科学省元事務次官の前川喜平の証言」の解説
前川喜平(文部科学省元事務次官)は、2018年1月5日に沖縄タイムスの取材に対し、八重山教科書問題について「竹富町に対する是正要求は理不尽。正当な根拠はないと思っていた」「無償措置法が改正された現在と違い、八重山地区協議会の結論はあくまでも答申に過ぎず、最終的に決める権限は各市町村教育委員会にあった」「さまざまな協議を経ても教科書が一本化できなかったため、竹富町は仕方なく独自に東京書籍を選んだのであり、石垣市・与那国町が育鵬社を選んだのも同様に独自の判断だ。3市町村ともに一本化できなかった責任があるはずで、竹富町だけが無償給与の対象外になったのは理不尽。本来なら3市町とも無償給与の対象から外す、あるいは例外的に3市町ともに無償給与すべきだった」「そもそも協議会は多数決で教科書を選ぶように規約を変えているが、そもそも協議会に規約を変更する権限はなく、各教委の合意を得る必要がある。それを欠いたままの規約変更は無効のはずだ」「また協議会は竹富町が納得しなかったため役員会で再協議し、さらに3市町の全教育委員でも協議している。再協議に応じた段階で答申を棚上げしてもう一度話し合おうということであり、答申は効力を失っている。文科省が育鵬社を『協議の結果』とみなすのは間違いだ」「当時の制度では協議会の結論はあくまでも答申であり、最終的な決定権は各教委にあった。地区内で意見がまとまらない事態を法律が想定しておらず、文科省も当初は竹富町が自前で別の教科書を購入して無償給与することまでは違法としなかった。それが2012年に民主政権から安倍政権に移行し、下村博文が文科大臣、義家弘介が政務官になると、育鵬社の教科書を事実上強いる姿勢に変わった。是正要求に法的な根拠があるとは思えず、竹富町が国地方係争処理委員会に持ち込めば町側が勝つはずだと思っていた」「(無償措置法改正については)もともと採択地区を郡単位としていた法律が時代に合わず、以前から少なくとも町村単位に変更する必要性が議論されていた。表向きは『長年の懸案を解消するためであり、八重山教科書問題とは関係ない』『改正後も八重山地区は一つであることが当然』という説明をしていたが、法案が通れば竹富町を分離して問題を収束させられると考え、沖縄側とも調整していた」と証言した。 前川の証言を受けて、当時の沖縄県教育長の諸見里明や竹富町教育長の慶田盛安三は「前川氏が幹部官僚として、政治の暴走を何とかしようとしていたことは分かっていた」と当時を振り返った。また、山口剛史(琉球大学准教授)は「竹富町だけでなく関わった県教育行政や文部科学省の官僚までが、『政治介入』に唯々諾々と従うなく取り組んでいた。前川氏の証言は多くの行政関係者の思いを代弁している」と述べた。 ただし、前川は現職文科官僚時代は2014年3月13日の参議院文教科学委員会で「竹富町教育委員会の採択が教科書無償措置法に違反しているという認識につきましては、平成23年当時から今日に至るまで一貫しておりまして、文部科学省といたしましては、その認識に立って、平成23年九9以降、二年以上にわたりまして繰り返し指導を行ってきた」「昨年の10月、沖縄県の教育委員会に対しまして竹富町に是正の要求を行うよう指示した」「(今年の)3月中に竹富町の教育委員会に対して是正の要求を行った」と国の沖縄県や竹富町への是正要求を正当化する答弁をしていた。
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