文化・芸術と眼鏡
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 08:12 UTC 版)
絵画や映画、漫画の中に描かれる眼鏡は描かれる人物の性格を表す象徴であることがあるが、その表す性格は、時代や場所によって異なる。 眼鏡が描かれた最も古い絵画は、トマッソ・デ・モデナが1352年に描いたヒュー・オブ・サン・シェールの肖像画である。ヒューの死後一世紀も経ってから描かれた絵画である(「歴史」を参照)。ヒューの生前には眼鏡は発明されていないが、尊敬のしるしとして描かれたものである。眼鏡が発明される以前に没した人物の肖像画に当時存在していなかったはずの眼鏡を描き入れる慣行はその後、数世紀にわたって続く。学識とか識字能力の持ち主、あるいは当代の実力者であることの証と考えられていたのであろう。眼鏡が日本国内で一般化したのは江戸時代、元禄・享保期頃である。日本の江戸時代の浮世絵や黄表紙本の挿絵に描かれる眼鏡は、知性よりもむしろ職人的な細かい手仕事の象徴であり、年配の職人が眼鏡をかける姿が多く描かれた。 近現代の創作を含めた、眼鏡をかけた登場人物の描写については眼鏡キャラクターを参照。 このうち片眼鏡は、今日の映画や漫画では片眼鏡が悪人や盗人の象徴として描かれる。ドイツでは、第一次世界大戦時の軍作戦本部で地図を見るときに目が悪い者は片眼鏡を用いるという習慣があった。他国で片眼鏡が廃れた後も、ドイツでは第二次世界大戦までその習慣を続けた者が多く居たため、ナチスの軍人と片眼鏡のイメージとが重ね合わされたのかもしれない。今日では悪人の象徴として描かれる片眼鏡だが、日常的に使われていた記憶が薄れていない時代には事情が異なった。P・G・ウッドハウスが1930年に示した小説家向けの眼鏡装用基準では、眼鏡の種類ごとにそれを掛ける人物を列挙しており、当時で言うスペクタルズ、現在でいう一山を掛ける者の筆頭に善良なおじさん(good uncle)、鼻眼鏡を掛ける筆頭に善良な教師、片眼鏡を掛ける筆頭に善良な公爵と、多くの種類で善良な人物を筆頭に挙げていた。鼻眼鏡と片眼鏡については悪人はこれを掛けないとも述べている。手塚治虫のスター・システムの最古参である花丸博士も多くの役柄で片眼鏡をかけているが、専ら善人を演じた「スター」である。 近年の漫画・アニメでは、逆ナイロール形式の眼鏡が、キャラクターの外観を大きく変えることなく、眼鏡キャラクターとしての個性も表現するための漫画的デフォルメ描写に好んで使われる。キャラクターの瞳の印象が見た者に素直に伝わるため、瞳を大きく描く萌え絵においてはこの表現が用いられることがある。また、キャラクターの造形もしくは絵柄によってはフルリムの眼鏡を掛けさせる事が困難な(あるいは、掛けさせると不恰好となる)ため、それを回避するためにこの表現を用いることもある。現代のアニメは眉の形状によって表情を表現することが多く、上半分のないフレームとすることで表情を容易に表現できるというメリットもある。一方、『涼宮ハルヒシリーズ』に登場する長門有希が使用しているのは、逆ナイロールでない、普通のナイロールである。また、テンプルが描かれないこともあるが、その場合、鼻眼鏡をかけた人物という設定なのか、通常の眼鏡をかけた人物のテンプルの描写が省略された結果なのか、判別しがたい。 日本では、10月1日が「メガネの日」とされている(1001すなわち一〇〇一が、眼鏡のツルとレンズの並びに似ているため)。徳島県鳴門市の葛城神社は眼病の治癒にご利益があるとされ、眼鏡を供養する「めがね塚」が1998年に建立されている。 2019年12月3日、女性グループは外見・服装について不要なルール強制はパワーハラスメントにあたると明記するよう緊急要望書を出した。美容部員や企業受付の女性だけに課せられているメガネ禁止などがこれに当たる。
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