挿話にのみ登場する人物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/27 21:11 UTC 版)
「ベーオウルフの登場人物の一覧」の記事における「挿話にのみ登場する人物」の解説
ウェルス(Wæls) シイェムンドの父親。北欧伝承におけるヴォルスング。 エーオメール(Eomær) オッファとモードスリューゾの息子。(1960行) エオルメンリーチ(Eormenric) ハーマにブロージング族の手による首飾りを盗まれた人物。(1201行) エオルメンリーチは四世紀の実在の人物であり、東ゴート族の王だった。彼の獰猛な性格は北欧の伝承や中高ドイツ語の叙事詩で広まって発展し、暴君の代表的な存在として扱われるようになった。詳細はエルマナリク#物語を参照。 オースラーフ(Oslaf) 「フィンの挿話」の登場人物。フィンがフネフを襲撃した戦いの折、生存したフネフの部下の一人。グースラーフを参照。(1148行) 『フィンネスブルグ争乱断章』においてもグースラーフと共に登場する。 オッファ(Offa) アングルス人の王。モードスリューゾの夫でありエーオメールの父親。この人物もまた北欧の伝承に登場する。 ガールムンド(Garmund) オッファの父親。『アングロサクソン年代記』の西暦755年の項に記されたウェールムンドと同一人物か。(1962行) グースラーフ(Guðlaf) 「フィンの挿話」の登場人物。フィンがフネフを襲撃した戦いの折、生存したフネフの部下の一人。和解後にはフィンの領土から離れていたが、後にオースラーフと共にヘンジェストに合流し、彼らによってフィンは殺害される。(1148行) 『フィンネスブルグ争乱断章』17行目においても言及があるのだが、34行目には敵対するフリジア側に同名の人物が登場するため混乱しやすい。 シイェムンド(Sigemund) 北欧伝承におけるシグムンド。『ベーオウルフ』においてシイェムンドは竜退治に挑み生還した人物として描かれ、後にベーオウルフが竜退治に挑む(そして相討ちになる)ことへの伏線となっている。しかし北欧伝承においては、竜退治を成し遂げたのはシグムンドではなくその息子シグルズである。(875-900行) ハーマ(Hama) 北欧伝承におけるハイメ。叙事詩の時代背景よりも昔に、彼がエオルメンリーチからブロージング族の手による首飾りを盗み出し、逃げおおせたことが語られる。(1198行) なおこの「ブロージング族の首飾り」は北欧伝承に登場するフレイヤの首飾りと同一のものと考えられる。 ヒルデブルフ(Hildeburh) 「フィンの挿話」の登場人物。ホークの娘でありフネフの姉妹。フィンの妻。フィンによるフネフの襲撃では兄弟であるフネフと彼女自身の息子を同時に失い、悲しみに暮れる。その後ヘンジェストらによって夫フィンが殺害された後は彼らに連れられて故郷へと戻った。(1071行、1114行) フィテラ(Fitela) 北欧伝承におけるシンフィヨトリ。 フィン(Finn) 「フィンの挿話」の登場人物。フリジア人の王でありヒルデブルフの夫。フィンは彼を訪ねてきたヒルデブルフの兄弟であるフネフとその部下をどういう訳か襲撃し、フネフを殺害してしまう。一方フィン率いるフリジア側の被害も甚大であり、これ以上の戦闘の続行は不可能であった。そこでフネフ亡き後彼の同行者たちをまとめていたヘンジェストとフィンは和平を結ぶ。ところがフィンの下で一冬を客人として過ごしたヘンジェストの復讐心は未だ収まらず、更にヘンジェストにフーンラーフの子やグースラーフ・オースラーフらが合流した結果、仇討としてフィンは殺害される。(1068行、1081行、1096行、1128行、1146行、1152行、1156行) 『フィンネスブルグ争乱断章』においても言及あり。 フーンラーフ(Hūnlāf) 「フィンの挿話」の登場人物。フィンと和平を結び客人として彼の下にあったが未だ復讐心を抑えきれないヘンジェストの前にフーンラーフの子が現れ、剣をヘンジェストの膝に置く。これはヘンジェストがフーンラーフの子に仕えるようになったとも、あるいはフーンラーフの子がヘンジェストに復讐を促したとも取れよう。ともかくこれが原因の一つとなり、ヘンジェストらはフィンを殺害して仇討を果たす。フーンラーフ・グースラーフ・オースラーフの三者は兄弟であったのかもしれないし、あるいはフーンラーフの子とグースラーフは同一人物なのかもしれない。(1143行) フォルクワルダ(Folcwalda) 「フィンの挿話」の登場人物。フィンの父親。(1089行) フネフ(Hnæf) 「フィンの挿話」の登場人物。ヘアルフデネ族の族長。ホークの息子でありヒルデブルフの兄弟。彼は部下を引き連れてヒルデブルフの夫でありフリジア人の首領でもあるフィンの元を訪れてその館に滞在していたところ、フィンに襲撃され激戦の末に死亡する。フィンとヒルデブルフの間の子もこの戦いで落命したため、フネフは甥にあたるこの子と共に荼毘に付される。(1070行、1114行) 『フィンネスブルグ争乱断章』においても言及あり。 ヘムミング(Heming) ガールムンドの縁者。 ヘンジェスト(Hengest) 「フィンの挿話」の登場人物。フィンの襲撃によってフネフが落命した後、フネフの部下を取りまとめていた。両陣営共に消耗が激しくこれ以上の戦闘は不可能であったためフィンと和平を結ぶ。ヘンジェストはフィンの下で一冬を過ごしたが復讐心は抑えがたく、グースラーフ、オースラーフらと共にフィンを殺害して彼の財産の全てを奪い、フィンの妻でありフネフの姉妹であるヒルデブルフを連れ、彼女の故郷でもあるデネへと帰っていった。(1083行 1091行 1096行 1127行) 『フィンネスブルグ争乱断章』においても言及あり。又ヘンジェストは兄弟ホスサと共にイングランドに上陸したヘンイェスト(英語版)と同一人物かもしれない。このヘンイェストは、ベーダの『イングランド教会史』に残された系譜によればウォーダン(オーディン)の玄孫であった。 ホーク(Hoc) 「フィンの挿話」の登場人物。ヒルデブルフとフネフの父親。(1076行) モードスリューゾ(Modþryð) かつては自分を直視した臣下に対し、侮辱の意を込めたと断じて例外なく処刑していた恐ろしい女性。後にオッファ王と結婚し女王となってからはこの凶行は鳴りを潜めた。オッファとの間に息子エーオメールを儲ける。女王として相応しい人格者ヒュイドと比較するために挿話的に語られる人物。(1931-1962行)彼女の名については翻訳者によって相違がある。「モードスリューゾ」はクレーバーやホープス(ドイツ語版)の訳によるものであり他には「スリュース」「スリューゾ」「モードスリュース」などがある モードスリューゾを連想させる、ドリータ(古英語でスリュース)を名乗る女王について『二人のオッファの伝(英語版)』に記述が残されている。この書は『ベーオウルフ』においてモードスリューゾの夫とされるオッファ(以後オッファ一世)と、彼を伝説的な祖とする歴史上の同名人物マーシア朝のオッファ(英語版)(以後オッファ二世)について記した物であり、『ベーオウルフ』とは異なりオッファ一世ではなく二世の妻が悪女とされている。彼女は容姿端麗で生まれも貴いものの性根が悪く、その犯した罪のため小舟にのせて海へと流される。やがて漂着した彼女はその土地の王であるオッファ二世に嘘と美貌を武器に取り入り、彼の妻となる。こうして女王になると彼女はその悪辣さを遺憾なく発揮し、王宮で陰謀を張り巡らせるようになる。尤も、アルクィンの書簡はオッファ二世の妻を非常に敬虔な女性であったと記しているから、何らかの混同があるのだろう。
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