投球判定における実際
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 15:26 UTC 版)
「ストライクゾーン」の記事における「投球判定における実際」の解説
実際の試合においては、投球を判定する球審の裁量で決定される。当然ながら、現実にストライクゾーンの枠や線が設けられているわけではないので、公認野球規則に示されている基準と球審の判断との間に誤差が生じたり、球審を担当する者の間に個人差が生じたりすることも当然ありうる。 公認野球規則の原書であるOfficial Baseball Rulesにおいては、「The STRIKE ZONE is that area over home plate」と書かれている。2000年シドニーオリンピックやIBAFワールドカップ、世界大学野球選手権大会などでも審判員を務めた経験のある小山克仁によれば、エリアとは「おおむねこの周辺」という意味で、つまり「打者が自然体で打てる範囲がストライク」と言うかなりアバウトな考え方であって、審判員が「そこは打てるだろう、打てよ」とジャッジした場合は、ストライク・コールが可能だとしている。 平林岳らによると、2000年以前は、打者がガンガン打って行くスタイルを好むMLBでは、日本プロ野球(NPB)よりストライクゾーンが外角にボール1個分広いといわれていたが、2001年度からクエステック・システムが導入されたこともあり、2008年現在ではルールブック通りのストライクゾーンを適用しているという。これは、同システムによってジャッジの正否を一球ずつ査定されるようになったからであるとされており、それゆえにそう広く取ることはできず、実際1990年代と比較すると大分狭くなっている。とは言え、完全に画一化されたわけではなく、依然として外側を良く取る球審が居ることもまた事実である。特にラズ・ディアズ、ジム・ウルフ、ジェフ・ネルソンらはストライクゾーンが広く、投手有利(打者不利)な球審として広く知られている。また、PITCHf/xが導入された2006年以降はストライクゾーンが拡大し続けており、特に低めのゾーンが広くなっていることが報告されている。一方、教育・育成の場でもあるマイナー(特に低レベルなルーキーや1A)では、かなり広目にストライクを取って行く傾向がある(外角にボール1個半広い)。 日本プロ野球においても、それまではベルト付近が上限だったストライクゾーンを2002年に公認野球規則の通りに改めたが翌年には見直される。パ・リーグでは、2007年度から外角にボール1個半広がった新しいストライクゾーンを採用した。交流戦によって違うリーグの審判の判定を受けるケースが多くなり、選手からセントラル・リーグと比べてストライクゾーンが狭いという意見が出たためである。また、オリンピックなどの国際大会において「日本独自のやり方や解釈は通用しなくなっており、国際基準を視野に入れながら思考・行動する必要がある」という日本野球規則委員会の判断から、ストライクゾーンも含め、さまざまな面で野球規則適用上の解釈の修正が行われている。 ただし、前述の小山克仁によると、「外国人ジャッジのゾーンが広いとはさして思えず、むしろ狭いと感じることすらある、そもそもゾーンの広さが話題に上がるのは日本だけで海外ではまずありえない」と言う。また、視点をひるがえして外国人ジャッジから日本選手を見た場合、正直評判は芳しくない、とも述べている。その理由として、「日本人捕手はボールをストライクに見せかけようとしてミットを頻繁に動かしたり、逆に際どいコースをボール判定された時、無言の抗議としてしばらく動かないことが良く見受けられるが、そのような行いは海外では審判員に対する侮辱行為と解釈されている、心証を悪くするだけでメリットは何一つない、更に日本は試合時間が長過ぎる(打者が打席に入るまでが遅い、投手の間合いも長い、牽制球も多い)こともネックだ」と説いている。なお、ジャッジの正確さと言う点ではNPBが一番ではないか、とも付け足している。 ランディ・バースは引退後に「実はMLBにもそういう“差別”はあるんだ。メジャーでも1年目の選手のストライクゾーンは広いけど、だんだん実績を積んでスタープレーヤーになっていけば、ゾーンは狭くなっていく。新人だったらストライクだけど、あのテッド・ウィリアムズが見逃したらボールっていうことなんだ」と差別的判定について語りつつ「1年目とか2年目はワイドだったね。でも、'85年に打ち出してからはだんだんとストライクゾーンがコンパクトになっていった」と自身も実績を積んで有利な判定を受けられるようになったと実体験を述べている。
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