学問における正統と異端とは? わかりやすく解説

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学問における正統と異端

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 16:04 UTC 版)

異端」の記事における「学問における正統と異端」の解説

学問世界で正統 / 異端同様の区別論争存在している。 自然哲学においては17世紀段階では、ほぼ全員人々は、物というのは直接ぶつからない互いに影響しあわない、とする考え方世界理解し、それを正統なものとしていた。ニュートンが『自然哲学の数学的諸原理』(1687年)において万有引力という新たな考え方提唱した時にはライプニッツ(およびライプニッツ一派人々)は、その考え方を「オカルト」という言葉呼びつつ排斥しようとし、大陸側イギリス側ドーバー海峡挟んで論争となったその後数十年間大陸側学者たちは「物は直接ぶつからない限り互いに影響しない」とする考え方正統なものとし、「離れていても影響する」という考え方異質な考え方として排斥しつづけた西欧では学問、すなわち知の探求一般的にラテン語等でphilosophia、philosophie(フィロソフィア、「知を愛すること」の意)などと呼ばれていて大学における各学問呼称フィロソフィアであった学問世界ではフィロソフィア正統なものであった。だが(おおよそ18世紀後半から19世紀半ばにかけて徐々にそうしたフィロソフィーの中からある種の(独特の)傾向知識がある考える人たちが増えそのような知識探求する人の数の増加反映し1833年にはウィリアム・ヒューウェルが「scientist サイエンティスト」という語を造語し、自分たちをそう呼ぶことが提案された。だがそれがすぐに定着したわけではなくその時代、大学という制度地位認められ社会的に認められている学者たちは scientiaを正統的でない知識見なしており、scientistたちの社会的な地位概して低かった学者たちは(現代から見ればscientist呼ばれるような内容活動をしている人ですら)他人から「scientist」と呼ばれることは嫌がりphilosophe 哲学者」と呼ばれることのほうを好んだ指摘されている。scientistたちは、人々から正統性認められるには長い年月かかったこのように社会から正統性認められるのに苦労していたscientiaの側からも、すでに1830年代あたり から、pseudo-scientia(疑似科学)という呼称で、正統的でないそれを呼び分けるようなことが行われるようになったポジティヴィズムという、ひたすら自分五感直接的に知覚できることだけを重視しようとする思想学問世界で隆盛極めていた19世紀末当時科学界で大御所とされて一大勢力誇ったエルンスト・マッハなどは、人間直接的に知覚できることだけで科学構築してみようと目論み、直接的に知覚できないことに関する記述は「形而上学」という言葉用いつつさかんに排斥しようとしたニュートン力学体系における「絶対空間」や「絶対時間」の概念を、「形而上学的な要素残滓のこりかす)」と呼んで否定し排斥した(『力学発展史』)。マッハらは、明らかに排斥しようとする意図をこめつつ「形而上学」という言葉用いていた。マッハニュートン力学の<<力>>の概念も「得体の知れないもの」として排斥し、<<力>>の概念抜きで、<<位置>>など、直接的に知覚できる要素だけで力学再構築した。また原子論拒絶した原子などというものを誰も直接見たことは無かったので、見えない原子概念として受け入れてそれを基盤科学組み立てることは拒絶したのである)。大御所マッハは若いボルツマン採用した原子論気体分子運動論排斥し学会執拗に攻撃した。(ボルツマン自殺する原因作った、とも指摘されている) 現代でもやはり、ポジティヴィズム的な考え方正統だと見なし、それからはずれた考え方排斥したがる人々自然科学の分野中心として多く存在しているが、最近人々のあいだでは、直接感覚できないことがらのことは、マッハがそれを「形而上学」と呼んで排斥しようとしてたように、(正式な学問的な用法ではなく、あくまで俗な用法にすぎないものではあるが)「オカルト」と呼ぶようなことが行われている。 科学という概念がようやく広まりつつあったころ、科学者のほとんどはアマチュアサイエンティストであった、また社会的に優遇されているとは言い難かった冷遇されていた)。現代では、科学は(かつての西欧キリスト教同様に国家からお墨付き得て行政的機構にも組み込まれている。政府政府系の組織によって膨大な数の科学者雇われ生活しており、科学一大勢力となっている。現代では、科学者でない一般の人々含めて多く人々が、サイエンス科学)をしばしば「正統」「正統性」というイメージ重ねつつ受けとめている、ということは多く科学哲学者などから指摘されている。こうした社会環境においては科学」 /「疑似科学」 という一対概念が、(ちょうどかつてのキリスト教政治権力と一体となっていた西欧における、キリスト教正統/異端 のように)その判定結果大きな影響を及ぼす概念となっている。何が科学何が科学でないか、ということに関しては、20世紀様々な論争が行われている。これは線引き問題、と呼ばれている。 現代学会などでは(特に自然科学系学会などでは)、古参科学者など新奇な研究新奇な説などを「疑似科学」(や「オカルト」)などと呼んで排斥しようとすることがある現代の科学者にとっては、自分研究に「疑似科学」との烙印押されてしまうと、科学者にとって必須の公的機関からの研究助成金などを支給してもらえなくなり科学者生命絶たれることを意味し、やがて職や収入失いその意味でも死活問題となる。現代の科学者は、先輩同僚科学者たちから「疑似科学」「オカルト」などの言葉異端との烙印押され排斥されることを恐れている。

※この「学問における正統と異端」の解説は、「異端」の解説の一部です。
「学問における正統と異端」を含む「異端」の記事については、「異端」の概要を参照ください。

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