天体の運行の理論とは? わかりやすく解説

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天体の運行の理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 10:56 UTC 版)

イブン・シャーティル」の記事における「天体の運行の理論」の解説

古代後期プトレマイオスアルマゲスト』の理論は、比較単純な天動説的な理論で、天体見かけ位置十分な精度説明できた。その一方地球中心とする等速回転加えて周転円離心円エカント軌道面振動といった仕組み用いた。これらは、アリストテレス的な自然学反すのみならず物理的なモデルとしては、直感的にも不自然であったまた、天体見かけの大きさ視直径)、すなわち地球までの距離についてはあまりよく説明できなかった。特に月についての誤差著しく一つ課題として残されていた。イブン・シャーティルは、『原理修正における究極探求の書』でこれらの問題扱った。後にコペルニクス新たな体系模索始め動機もこれらの問題関係しており、また、コペルニクス天球の回転について』とイブン・シャーティル黄経理論は、天文常数天動説/地動説の差を除けば、ほぼ同一である。 プトレマイオス理論問題点の指摘古く、『アルマゲスト』の中に既にいくつかの問題が(問題困難さ達成大きさ比較しながら)告白されている。その後もたびたび批判はあったが、10-11世紀イブン・ハイサムは『プトレマイオスへの懐疑』などの著作でそれらの問題点包括的に指摘し、また『曲がりくねった運動の困難の解決(qawl fI .hall shukUk .harakat al-iltifAf)』という論考で、軌道面振動への代案提案している。同様の試みは、東西アラビア語圏天文学者哲学者の間で続けられた。その中でマラーガ天文台活動したことのある理論家たち、すなわちナスィールッディーン・トゥースィームアイヤドゥッディーン・ウルディークトゥブッディーン・シーラーズィーら(いわゆるマラーガ学派」)は、回転速度許容する仕組みエカント伴った離心円)や軌道面振動を、球の等速回転組み合わせ説明することを目指した。 イブン・シャーティルは、「マラーガ学派」の成果問題意識引き継いだが、さらに離心円地球中心としない円)も許容されいとした例えば、彼の外惑星と金星の黄経モデルは、ウルディーとほぼ同じで、ただしウルディー離心円用いていたのを、『アルマゲスト』III.1の議論定理用いて周転円一つ追加することで回避している。その結果プトレマイオスは円を二つウルディー三つ使ったのに対しイブン・シャーティル四つ用いることになった彼の理論では、不動地球Tを中心にして等速円運動する点Cl考え、さらにCl中心としてを中心にして等速円運動する点Ciを、Ci中心に等速円運動するCe措定する(右図)。(右図には書かれていないが)惑星Ce中心に周転円沿って等速回転する。なお、水星運行説明には従円と周転円あわせてプトレマイオス3つの円を用いている一方イブン・シャーティル6つ要している。このように円の数は増えるが、外惑星と金星の場合付け加わる円の半径回転周期は、離心率従円回転周期連動しており、モデル指定必要なパラメータの数は、プトレマイオス理論変わらない惑星黄緯理論については、『アルマゲスト』では円の傾き上下振動させて説明していたが、彼は各々の円を一定の角度傾けて外惑星については、ほぼプトレマイオス理論同様の結果再現した。 これらの成果では、『アルマゲスト理論物理的な不自然さ軽減したが、一方理論書き直しただけとも言えた。両者はほぼ変わらない振る舞いをすることが保証されているので、実際計算はどちらでやってもよい。 それに対して月と太陽見かけの大きさについては、イブン・シャーティル理論プトレマイオス理論改善している。プトレマイオス天文理論は、特に月の運行に関して観測結果との不整合大きいことが、約1000年の間、多く学者悩ませてきたが、2次周転円用いイブン・シャーティル説明モデル上掲写本写真参照)には、この弱点がなかった。また、太陽見かけの大きさについては、プトレマイオスはそれを不変としており、明らかに自身太陽モデル矛盾していた。イブン・シャーティルは、太陽の視直径最新観測データをもとに、プトレマイオスのものとは異なる、新たなモデル作ったまた、太陽軌道離心率遠地点移動速度といった常数改定し、後者春分点移動速度とは異なることを明らかにした。 Kitāb Nihāyat al-Su'ūl fī Tashīl al-Uṣūl の西洋近代語への翻訳は、1950年代Kennedy, Roberts et al. により初めなされた。これにより、コペルニクスの『天球の回転について』や『コメンタリオルス Commentariolus』 における惑星運行モデルイブン・シャーティルのものと極めて類似していることがわかった14世紀シリア天文学知の16世紀ヨーロッパへ西漸については、Otto Neugebauer, Edward Kennedy, Willy Hartner, Noel Swerdlow, George Saliba, Jamil Ragepらの研究があったが、反論もあり、イブン・シャーティル天文学そのもの含めて研究まだまだ予備的な段階にある。

※この「天体の運行の理論」の解説は、「イブン・シャーティル」の解説の一部です。
「天体の運行の理論」を含む「イブン・シャーティル」の記事については、「イブン・シャーティル」の概要を参照ください。

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