天体の直径を算出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 21:42 UTC 版)
天体の直径に関して、古代の人々がどのように考えていたのかははっきり分かっていない。しかしながら、天球に開いた針穴やかがり火、窓などの比喩で語られていることから、小さなもの、少なくとも地球より小さなものと考えられていたようである。ギリシアのアナクサゴラスの説はこれとは異なり、紀元前450年ごろ、太陽の大きさをギリシアに匹敵するものと唱えた。アナクサゴラスは世を惑わすものとしてアテネから追放されてしまった。 実験的に天体の直径を測定しようと試みたのはギリシアのアリスタルコスである。紀元前280年ごろ、月食時に写る地球の影の大きさから月の直径を地球の1/3と計算した(実際には1/4)。さらに、三角法を用いて月の直径から太陽の直径を算出した。基本的なアイディアは半月の時点においては、地球、月、太陽が直角三角形の形に並ぶ(直角が月に相当)というものである。月と太陽の視直径が等しいこと(これは日食から容易に推測できる)、月の直径が分かっていることから推論を進めた。光学観測機器が一切利用できなかったことから、太陽の位置が月の20倍(実際には約400倍)、太陽の直径が地球の7倍(実際には約108倍)と、数値的には正しくなかったが、天体の直径が地球と同等かそれ以上であることを合理的に計算したのはアリスタルコスがはじめてである。なお、地球の大きさを三角法を用いて決定したのはギリシアのエラトステネスであり、アリスタルコスの約40年後のことである。 後は月までの距離が分かれば、重要な数値が全て揃う。月の直径を測定により算出したのは、ギリシアのヒッパルコスである。エラトステネスの90年後、紀元前150年であった。ヒッパルコスは三角法の正確な数表を作り上げ、角度から辺の長さが分かるように準備した。その後、地球上の異なる点から月を観察し、視差によって生まれる特定の恒星と月の位置関係の変化をまとめた。これによって、地球-月間の距離は地球の直径の30倍であるとした。エラトステネスが計算した4万kmという地球の大円の周長に当てはめると、月までは38万4000kmと計算できた。21世紀の現在では月の平均軌道半径が38万4400kmと分かっている。
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