地理・生態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 05:59 UTC 版)
海底は5つの盆地から成り、互いに海底山脈で分けられる。ヒスパニヨラ海溝とプエルトリコ海溝は地震の巣であり、過去500年間にマグニチュード7.5以上の大地震が10回以上発生し、津波被害を生じた。カリブ海のほぼ全域がカリブプレートに属する。プエルトリコ海溝付近は北アメリカプレートとカリブプレートの境界線である。地質的には、中央アメリカから大アンティル諸島を抜けてプエルトリコまでの島々をなす中央アメリカ・プエルトリコ山系と、小アンティル諸島を形成する火山帯とは分かれている。小アンティル諸島はカリブプレートと南アメリカプレートの境界線をなすが、ここは沈み込み帯となっており、その影響で火山島が非常に多く、活火山も集中している。マルティニーク島にあるプレー山は1902年の噴火の際、当時のマルティニークの首都であったサン・ピエールを全滅させ、約30,000人の死者を出した。1997年には英領モントセラトにおいてスフリエール山が大噴火をおこし、首都プリマスが火砕流と噴石によって壊滅し、20人の死者・行方不明者を出してプリマスは事実上放棄され、島の首都は北部のブレイズへと移転した。 カリブ海と他海域の境界となっている大アンティル諸島や小アンティル諸島のほかにも、カリブ海には多くの島々が浮かぶ。カリブ海北部にはキューバ島の南に浮かぶピノス島やケイマン諸島、ホンジュラス領のスワン諸島、同じくホンジュラス領で本土のすぐ沖合に浮かび、イスラス・デ・ラ・バイア県を構成するウティラ島・ロアタン島・グアナハ島、ユカタン半島に隣接するメキシコ領コスメル島、そしてジャマイカ島などが浮かぶ。カリブ海南部の中心海域には島はなく、西端のニカラグア近海にコロンビア領のプロビデンシア島とサン・アンドレス島が浮かび、両島はコロンビアのサン・アンドレス・イ・プロビデンシア県に属している。南端のベネズエラ沿海には旧オランダ領アンティルのアルバ島、キュラソー島、ボネール島が浮かぶ。これらの島々はABC諸島と呼ばれ、政治的には1986年にアルバがオランダ自治領となり、2010年にはオランダ領アンティルの解体によってのこる2島も単独の自治領となった。ABC諸島のさらに東には、ABC諸島に連続する形で12の島々が浮かび、政治的にはベネズエラの主権下にあってベネズエラ連邦保護領に属している。また、ベネズエラ領にはほかに、スクレ州の沖合に浮かぶマルガリータ島、コチェ島、クバグア島もあり、この三島はヌエバ・エスパルタ州を構成している。 カリブ海には、西端にありグアテマラ・ベリーズ・ホンジュラスに囲まれたホンジュラス湾や、南端に位置するコロンビアのダリエン湾、ベネズエラ西部に位置し最奥部でマラカイボ湖とつながっているベネズエラ湾などの湾がある。また、ユカタン半島とキューバ島の間のユカタン海峡でメキシコ湾と、キューバ島とイスパニョーラ島の間のウィンドワード海峡によって大西洋とつながっている。イスパニョーラ島とプエルトリコ島の間にはモナ海峡があり、これも大西洋とつながっていて重要な航路となっているが、この海峡は潮流が複雑で航行はやや困難である。 カリブ海に流れ込む河川に大きなものはほとんどない。沿岸にはほとんど小さな諸島や中央アメリカ地峡しかなく、ベネズエラも海岸近くまでアンデス山脈が迫っているためである。オリノコ川はカリブ海ではなく、大西洋へと注ぎ込んでいる。カリブにそそぎこむ川で唯一大河と言えるのはコロンビアを流れるマグダレナ川である。マグダレナ川は全長1540㎞で、北アンデスのコロンビア南部に端を発し、コロンビア中央山脈と東山脈の間を流れ、コロンビア北部で中央山脈と西山脈の間を流れてきたカウカ川をあわせたのち、バランキーヤでカリブ海へと注ぎ込む。 海流は、カリブ海流が東から西へと流れる。この海流は暖流であり、南アメリカ沿岸を流れてきた南赤道海流がカリブ海に入ってきたものである。この海流はユカタン海峡からメキシコ湾へと抜け、メキシコ湾流となって北大西洋へと流れ込む。 カリブ海には世界の9%に相当する5万平方キロメートルのサンゴ礁が広がっており、そのほとんどがカリブ海諸島および中央アメリカの海岸に広がっている。現在異常な水温上昇がサンゴ礁を脅かしている。水温が29℃を超えるとサンゴから褐虫藻が抜けてしまい、サンゴ礁の白化が始まる。 サンゴ礁はまたハリケーンの被害も受ける。北大西洋で発生した熱帯低気圧は大西洋を横断して強さを増し、カリブ海でハリケーンとなってカリブ海諸国と米国を襲うが、この強い波の作用と運ばれる砂と泥でサンゴ礁が死に至る。年平均5個のハリケーンが、とくに8月から9月にかけて発生する。
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