商標との関係
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保護された地理的表示と混同することを防ぐために、欧州理事会規則ではすでに登録されている商標の権利を認めておらず、これは商標の権利を定めたTRIPS協定16条1項に違反するとアメリカは申し立てた。しかしパネルは、このことはTRIPS協定17条の例外規定によって正当化されるとみなした。
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商標との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 19:44 UTC 版)
前述のとおり、紛争処理のためにWTOに持ち込まれた欧米間の紛争案件であるDS174においてWTOのDSBが設置したパネル(小委員会)では、商標と欧州理事会規則の定める地理的表示の保護の関係についても詳しく検討された。 まず、世界的な取り決めとして、TRIPS協定は商標の所有者がその商標を独占的に用いることができる権利を定めている。 欧州における地理的表示保護の制度においても、商標として登録されている名称は地理的表示として登録できないことにはなっているが、「商標のもつ評判や名声、使用されている期間に照らして」と条件が付いている。先行して商標がすでに登録されていた場合でも、その商標が相応の評判や名声を持っていなければ、地理的表示としても登録され、別々の製品が同じ名前で共存することになる。 この規定で同じ名前が地理的表示と商標で共存したのは、DSBがDS174のために設置したパネルが議論を続けていた時点で一つのケースだけであった。それは2001年に地理的表示保護 (PGI) として登録された“バイエルンビール (Bayerisches Bier)”である。“BAVARIA”や“HØKER BAJER”などの商標が以前から登録されていたが、欧州共同体は混乱する恐れがないとして同じ名前バイエルンの名を地理的表示として登録した。 ただし、混乱する恐れがあるかないかは判断の分かれるところで、バイエルンビールという商標についてはアメリカは混乱する恐れがあると主張した。そもそもアメリカの商標法には“first in time, first in right”(最初の者が、最初に権利を持つ)の原則が適用されていて、先に商標として登録されたら地理的表示と言えども後から権利を主張することはできないことになっているのである。 このパネルの議論においては、いずれにしてもバイエルンビールの例は例外的な例であるというのが欧州側の認識であった。それで当時の欧州共同体は主張するところでは、実際に商標と地理的表示が共存している例が一つあったとしても、欧州においては地理的な名称が商標として登録されることができないことになっていることから、同じ名前が地理的表示と商標で共存するというケースはごく稀であるという主張したのである。ところが、調べてみるとカラブリアという商標がパスタの商標として登録されていたり、他にもダービーやヴィナーヴァルドなどの地理的な名称が商標として登録されていることが分かった。地理的な名称が必ずしも商標登録の際に避けられているわけではないということである。 この他にも、欧州共同体は、商標に使用実績があり、評判や名声を持っている場合については、消費者を混乱を避けるためにそのような地理的表示は登録できないと欧州理事会規則で規定しているとも主張した。 しかし、商標として“バドワイザー”(Budweiser)が欧州内のいくつかの国で登録されているにもかかわらず、"Budĕjovické pivo"(ブジェヨヴィツキェ・ピヴォ / ブドヴァイス・ビール)、"Českobudĕjovické pivo"(チェスコ・ブジェヨヴィツキェ・ピヴォ / チェコ・ブドヴァイス・ビール)および "Budĕjovický mĕšt’anský var"(ブジェヨヴィツキェ・ミェシタネ・ヴァル / ブドヴァイス市民醸造所)が地理的表示として登録されている。このことが消費者の混乱を招きかねないことは、欧州共同体も否定はしなかった。 なお、このバドワイザー という商標が地理的表示と同じであるのは偶然ではなく、19世紀にアメリカの実業家がビールを販売する際、古くからビールの産地として知られているチェコのベーミッシュ・ブトヴァイスにあやかった名前としてバドワイザーと名付けたことによる。さらに、商標の評判があるにしろないにしろ、商標の所有者が、地理的表示として登録されることに対して異議をとなえる機会がないか、限られていることもパネルは指摘した。 このように商標の所有者にとって不利と言える例が存在しないわけではないが、欧州理事会規則の内容は、最終的にはTRIPS協定に定められている例外として認められた。ただし、パネルは以下の事項を理由としてそのことを認めるものとした。 もし新たに登録される地理的表示が、すでに登録されている商標と関係があるものと消費者に誤解されそうな場合、その地理的表示は登録しない。 地理的表示の申請が、利害関係のある第三者の直接の異議申し立ての対象となる。 欧州理事会規則は地理的表示の使用のみを正当化するのであり、先行する商標の所有者はその地理的表示が商標と紛らわしい形で使用されることを防ぐことは許されている。 なお、現行の欧州規則No1151/2012では“異議申し立て手続き”という条項があり(15条)、異議申し立ての方法や期間が規定されている。 一方、欧州自身の商標制度では、地理的表示を保護するために欧州連合の法律・制度あるいは国際協定によって除外されているものは商標登録できないとしている。このことによって、例えば『Mezcal 52』という商標が登録を拒否されたが、その理由の一つが、登録を出願された商標に地理的表示が含まれていることであった。Mezcalはメキシコで地理的表示として登録・保護されている名称である。また、これもメキシコの地理的表示であるTEQUILAを含むとして、『TERRA TEQUILA』という商標がやはり登録を拒否されている。欧州とメキシコの貿易協定によってこれらの地理的表示をヨーロッパでも保護することになっているのである。 証明商標と団体商標は地理的名称が含まれていても登録することができる。例えばパルマハムは『PROSCIUTTO DI PARMA』という名称やパルマハムのロゴが団体商標として登録されている 。
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