原案の内容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 05:20 UTC 版)
「モーゲンソー・プラン」の記事における「原案の内容」の解説
1944年の1月から9月初旬の間に書かれたとみられるメモ(モーゲンソー財務長官の署名入りで「ドイツ降伏後のために提案された計画」との題名つき)はニューヨークにある大統領図書館「フランクリン・D・ルーズベルト大統領図書館・博物館」に保管されている。文章および画像はオンラインで読むことができる。 主な条項の要点は次のとおりである。 1. ドイツ非武装化 ドイツ降伏後、可能な限り短い期間のうちにドイツの非武装化を完遂することが連合国軍のなすべきことである。これはドイツ国防軍と人民から武器を取り上げることであり(すべての兵器・軍備の撤去や破壊を含む)、軍需産業の完全破壊であり、その他軍事力の基礎となる主要産業の破壊である。 2. ドイツ分割 ポーランドは東プロイセンをソ連と分割し、またシレジア(シュレジエン)南部の添付図で示した範囲を得る。 フランスはザール、およびそれに隣接する、ライン川とモーゼル川を境界とする範囲を得る。 ルール地方と隣接する工業地帯を含む部分には国際管理地域が創設される。 ドイツの残る部分は二つの別々の独立国に分かれる。バイエルン州、ヴュルテンベルク州、バーデン州の各州とその他周辺地域は「南ドイツ」、プロイセン州(実際には、後に解体)、ザクセン州、テューリンゲン州の各州、その他の地域は「北ドイツ」となる。オーストリアが1938年の併合以前の国境内に復活し、南ドイツと関税同盟を結ぶ。 3. ルール地方の処遇 ルールとその周辺工業地帯(具体的にはラインラント、キール運河、およびキール運河以北を含む)はドイツの工業力の心臓部であり戦争が生み出される大鍋である。この地域は、現存する産業が取り除かれるばかりでなく、予見できる範囲の将来も産業地帯となることのできないよう弱体化と管理が進められなければならない。これを実現するために次のような段階を踏む。戦争終了後6カ月以内の短い期間で、戦争で破壊されなかったすべての工場と設備は完全に解体され移送されるか、あるいは破壊されなければならない。鉱山からはすべての設備を取り除き徹底的に破壊されなければならない。この地域の産業の一掃は次の三段階からなる。この地域に直ちに入る部隊は、動かせない設備はすべて破壊する。 施設と設備の移送は、連合国各国が原状回復と賠償(後述)の一環として行う。 一定期間、例えば6ヶ月間で移動できない施設や設備は、完全に破壊されるかスクラップにされて連合国に輸送されなければならない。 この地域の住民全員は、今後二度とこの地が産業地帯となることを許されない、ということを理解しなければならない。したがって、この地域に住む特別な技術を持つ人物や技能訓練を受けた人物およびその家族はこの地域から恒久的に転出し、可能な限り各地に分散させられなければならない。 この地域は国際連合が設立する国際機関に統治される国際管理地域となるべきである。この地域の統治にあたり、統治機関は上記の目的を進めるよう設計された政策に従わなければならない。 4. 原状回復(restitution)と賠償(reparation) 賠償金は、分割払いなどの形では請求されるべきではない。原状回復と賠償は、次のように、ドイツの資源および領土の移転によって行われるべきである。ドイツによって占領された地域でドイツ人により滅失した財産を原状回復させる ドイツの一定の領土、およびその地にある産業資源に対する私有権を、侵略された国家や国際機関のもとに移転させる 国際管理地域、南北ドイツにある工業施設や設備を荒廃した国々に移転・配分する ドイツ国外でドイツ人に強制労働させる 国外にあるドイツの資産は、どのような形のものであれすべて没収する
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