八宗体制論とは? わかりやすく解説

八宗体制論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/24 00:10 UTC 版)

八宗体制論(はっしゅうたいせいろん)とは、鎌倉仏教および日本仏教史研究家の田村圓澄によって唱えられた日本の古代仏教に関する理論的枠組み。元久2年(1205年)に奈良興福寺衆徒法然の提唱する専修念仏の停止を求めて朝廷に提出した文書『興福寺奏状』中の「八宗同心の訴訟」という文言に由来する[1]


脚注(※)

  1. ^ 貞慶は藤原氏一族の出身で、後白河法皇の側近として活躍し、平治の乱源義朝挙兵の際に殺された藤原通憲(信西)のにあたる。なお、興福寺は法相宗の大本山であると同時に、藤原氏の氏寺でもあった。
  2. ^ 鎌倉時代の東大寺の学僧凝然の著作『八宗綱要』における「八宗」もまた、南都六宗と平安二宗の総称を指している。
  3. ^ 仏法と王法の相依相即を説き、両者はいわば運命共同体であったと主張するこのような論を、一般に「仏法王法相依論」と称する。仏法王法相依論については、黒田俊雄や河音能平による研究がある。佐藤(1991)p.92
  4. ^ 鎌倉仏教の研究史に画期をもたらすことになった家永三郎の研究には1947年(昭和22年)『中世仏教思想史研究』収載の一連の論文があり、浄土教についてさらに深く追究し、克明かつ実証的な研究によって家永説をささえることとなった井上光貞の理論的著作としては1956年(昭和31年)の『日本浄土教成立史の研究』がある。佐藤(1991)pp.93-94
  5. ^ 黒田による「顕密体制」の議論は、『日本中世の国家と宗教』のほか「中世寺社勢力論」(1975)『寺社勢力』(1980)などに収載されている。佐藤(1991)p.97
  6. ^ 国家的寺院・古代寺院であった東大寺が、荘園領主としての中世寺院へ生まれ変わっていく過程については、稲葉伸道、久野修義、永村真らの研究がある。佐藤(1991)pp.98-99

出典

  1. ^ a b c d e 佐藤(1991)pp.91-92
  2. ^ a b c 佐藤(1991)pp.92-94
  3. ^ 佐藤(1991)pp.94-96
  4. ^ a b 佐藤(1995)p.132
  5. ^ a b 松尾(1995)pp.40-47
  6. ^ a b 佐藤(1991)pp.97-98


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八宗体制論

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興福寺奏状」の記事における「八宗体制論」の解説

詳細は「八宗体制論」を参照 浄土教中心とする鎌倉仏教研究大きな学績のこした田村圓澄は、1969年昭和44年)の「鎌倉仏教歴史的評価」において、奏状中の「八宗同心訴訟」すなわち「伝統仏教八宗が心をひとつにしての訴え」という文言注目し八宗そのように同心して法然排撃ようとする背景には、法然教義に対してみずからの有する特権保守しようとする伝統仏教側の意図があったとみなし、そうした共通の利害にもとづく仏教界の古代的秩序を「八宗体制」と名づけた。 また、奏状第9条には「仏法王法お身心のごとし、互いにその安否をみ、宜しくかの盛衰を知るべし」とあり、ここでいう仏法」とは伝統八宗説く仏法であり、そのような仏法公家政権による王法とが並び立ち、たがいに支え合うことで共存共栄することができると説く論理みられる田村によれば八宗同心訴訟寄せられる公家政権律令国家系譜連なる古代国家であり、それゆえ国家との相補的な関係を理由天皇認可立宗にともなう必須の条件とする興福寺奏状ロジックは、裏返せば八宗体制古代的性格を示すものにほかならなかった。 八宗体制論は、鎌倉新仏教成立を、それ以前貴族的護国的ないし祈祷仏教対し個人救済主眼とする民衆仏教成立ととらえる家永三郎井上光貞らの説いた定説とも調和し1970年代以降仏教史研究大きな影響あたえた。ただ、田村所説従来説とくらべ、それまで混乱分裂イメージとらえられがちであったいわゆる「旧仏教」の側に、共通の利害由来した一定の秩序があることを指摘した点に違いがあり、これはやがて次代鎌倉仏教研究大きな課題をのこす結果となった

※この「八宗体制論」の解説は、「興福寺奏状」の解説の一部です。
「八宗体制論」を含む「興福寺奏状」の記事については、「興福寺奏状」の概要を参照ください。

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