代謝の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 01:49 UTC 版)
「ATP感受性カリウムチャネル」の記事における「代謝の調節」の解説
特定の化合物のKATPチャネルの開口の調節への寄与の度合いは、組織の種類、より具体的には組織の主要な代謝基質が何であるかによって異なる。 膵臓のβ細胞では、ATPが主要な代謝基質であるため、ATP/ADP比がKATPチャネルの活性を決定する。静止状態では膵臓β細胞の弱い内向き整流性KATPチャネルは自発的に活性化され、カリウムイオンが細胞外へ流出することで負の静止膜電位(K+の逆転電位(英語版)よりやや正の電位)が維持される。グルコース代謝が高い、すなわちATPの相対的レベルが上昇している場合、KATPチャネルは閉じ、膜は脱分極(英語版)して電位依存性カルシウムチャネルが活性化され、カルシウム依存的なインスリン放出が促進される。近接するKATPチャネル分子はC末端領域を介して多量体化しているため、ある状態から他の状態への変化は迅速かつ同調的に行われる。 一方、心筋細胞ではエネルギーの大部分は長鎖脂肪酸とそのアシルCoAに由来する。心筋虚血は脂肪酸の酸化を減速するため、アシルCoAの蓄積を引き起こし、KATPチャネルの開口を誘導するが、遊離脂肪酸は閉じたコンフォメーションを安定化する。この変化は、ATP感受性を喪失したカリウムチャネルを持つトランスジェニックマウスの研究から明らかになった。膵臓ではこれらのチャネルは常に開いていたが、心筋細胞では閉じたままであった。
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代謝の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:05 UTC 版)
生命の恒常性に際しては異化と同化両方の代謝系の調和が成立しなければならない。代謝系のほとんど全ての反応は酵素によるものであるが、したがって個々の反応の調節がなされなければならない。全ての酵素反応を調節するには、非常に複雑で膨大なシステムの存在をイメージするが、生物はその過程をシンプルかつ最小のエネルギーで行えるよう優れたシステムを構築している。 主たる酵素反応の調節には、以下の 4 つがあげられる。 形質膜を用いた酵素の局所化 生体成分の異化および同化を異なる経路で行うこと 熱力学的な反応の調節(基質の濃度差やpHの変化) 酵素活性および酵素の発現量による調節 1. の酵素の局所化については、原核生物の場合は形質膜構造は原則として1つであり、細胞内、細胞外のほか膜内といった区別しかなされない。したがって、原核生物の代謝調節における 1. の依存度は真核生物ほどではない。一方真核生物は、ミトコンドリア、小胞体、リソソームといった多くの形質膜構造からなるオルガネラを有しており、個々の器官において特有の代謝系を有している。例えばミトコンドリアはクエン酸回路および電子伝達系のほかβ酸化系を有している。 2. の異化と同化を別経路に分ける点については上述の異化と代謝のつながりにも筆記している。例えば解糖系と糖新生系は多くの酵素に関しては同一であるが、一部不可逆反応を交えることにより、結果として別経路となっている。また、そのような不可逆反応を行う酵素は酵素活性そのものの調節を受けるアロステリック酵素である場合が多い(後述)。 3. の熱力学的な反応の調節については、基質の濃度差の変化に伴うケースが多い。例えば A→B→C という反応が存在し、細胞のフェーズとして C が必要であるとすると A あるいは B を何らかの形で外部から摂取し、細胞内の A あるいは B の濃度を高めることで C の生合成を助ける。その結果、最終的に C が使用されなくなり C の濃度が細胞内で増加したとすると B→C の反応は濃度差の解消により化学平衡に達する。B と C 間の反応が可逆であり B の濃度が減少すると今度は C から B へと反応が起きる。 4. の酵素活性そのものの調節や酵素の発現量による調節は特に後者は原核生物にて、非常によく研究が進んでいる。酵素活性の調節はアロステリック効果をはじめとした最終産物阻害を中心に、複雑なカスケード系あるいは酵素そのものの化学修飾(一例としてプロテインキナーゼを参照)などがある。酵素の発現量による調節はジャコブとモノーのオペロン説を中心に遺伝子発現と生体成分の協同的なモデルがある(一例としてラクトースオペロンを参照)。
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