人間の影響と保護
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 03:36 UTC 版)
「オーストラリアの動物相」の記事における「人間の影響と保護」の解説
少なくとも40,000年の間、オーストラリアの動物相はアボリジニの従来からの生活様式に不可欠な役割を演じた。そして、彼らは食物と皮革を求めるために多くの種を利用した。カンガルー科やポッサム、オットセイ、魚類、ミズナギドリなどを狩猟で得ていた。一方、主に食物としていた無脊椎動物はヤガの幼虫であるボゴン・モス(英語 Bogong moth)、ボクトウガ科の一種の幼虫であるウィチェッティ・グラブ(Witchetty grub)、軟体動物などがあげられる。燃え木農業(狩りをするのを容易にするために低木林地の広い帯状地帯を焼いていたアボリジニの土地管理活動。“火かき棒農業”とも)によって植物相と動物相に変化が加えられた。燃え木農業には有毒蛇の生息を阻み、繁茂した植物を焼き払い、アボリジニの移動を容易にし、また彼らの食物となる動物を火によって追い立てるなど、多様な効果があった。これにより、むしろ「生物の多様性」が促進された一面もある一方で、農業方法が飛べない鳥であるゲニオルニス(Genyornis)属の絶滅の一因になったと考えられている。オーストラリアの大型動物相の絶滅の先住民による狩猟と景観改変の役割は、議論の対象である。 固有の種の個体数に与えたアボリジニの影響は、後のヨーロッパからの植民の大きな影響に比べれば、それほど重要ではないと考えられる。ヨーロッパからの植民以来、固有の動物相の利用、生息域破壊、外来種の捕食者と競争的動物種の導入などが、27種の哺乳類、23種の鳥類、4種のカエルの絶滅を引き起こした。現在、オーストラリアの動物相の多くは法律によって保護されている。注目に値する例外は一部のカンガルー類であり、増えすぎているため、定期的に駆除される。 連邦政府による1999年環境・生物多様性保護法(EPBC法)は、1992年の生物の多様性に関する条約の調印国としてオーストラリアの果たすべき義務を明確にするためにつくられた。この法例ではすべての固有の動物相を保護して、絶滅危惧種の識別と保護を規定する。各々の州と準州では、法で定められた絶滅危惧種のリストがある。現時点では、380の動物の種は絶滅危機種(endangered)と絶滅危惧種(threatened)の両方が連邦政府によるEPBC法のもとで保護され、他の種は州および準州の法の下に保護されている。オーストラリアの動物相と生物多様性の保護において重要な段階となる、オーストラリア中のすべての種の完全な目録の作成が着手された。1973年に、植物相と動物相の分類学、識別と分布区域の研究を統合するため、連邦政府はオーストラリア生物資源研究会(Australian Biological Resources Study:ARBS)を設立した。ABRSは、記録されたオーストラリアの植物相と動物相を分類している無料のオンライン・データベースを維持している。 オーストラリアは国際捕鯨委員会のメンバーで、商業捕鯨に強く反対する立場である。オーストラリアの水域において、すべてのクジラ類は保護されている。またオーストラリアは絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)の調印国でもある。したがって、絶滅の危機にある種の輸出も禁止している。固有の生態系を保護して、保存するために保護区がすべての州と準州で作られた。これらの保護された地域は国立公園と他の地域(ラムサール条約に登録された64の湿地と16の世界遺産)を含む。2002年現在、オーストラリアの総陸地面積の10.8%(774,619.51km2)は、保護区である。海の生物多様性を保つために多くの地域で保護海域が作られ、2002年現在、これらの地域は、オーストラリア海洋の管轄区域のおよそ7%(646,000km2)をカバーする。 グレート・バリア・リーフ海洋公園局は、連邦および州の特定の法律の下で、グレート・バリア・リーフを管理している。オーストラリアの漁場は、その多くは既に開拓されている。そして、漁獲高の割り当ては海産魚類の個体数を維持できる分に設定されている。 連邦政府に対し、民間の研究者によって作成された環境状態報告書(2001年)において、環境の状態とオーストラリアの環境管理が以前(1996年)のレポートの時よりも悪化したと結論づけた。とりわけ野生生物保護に関連する部分において、土壌の塩化、水系の撹乱、土地開拓、生息域の分断、沿岸環境の貧弱な管理などのような多くの行為、活動がオーストラリアの生物多様性を保護するにあたり、大きな問題となっていると述べている。
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