交通機関での強風対策強化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 23:16 UTC 版)
「JR羽越本線脱線事故」の記事における「交通機関での強風対策強化」の解説
気象庁では、一般の気象レーダーを改造する形でドップラーレーダーの整備計画を推進している。成田国際空港など全国8空港と千葉県柏市のみに設置されていたドップラーレーダーの運用を、2006年12月に新潟地方気象台で開始し、2007年2月には、仙台管区気象台、名古屋地方気象台でも運用を開始した。今後数年をかけて全国の気象台にドップラーレーダーを設置し、一般の気象予報にも活用する計画。2006年に宮崎県延岡市や北海道佐呂間町で発生した竜巻被害を受けて、この整備計画をさらに前倒しするとも言われている。 この事故を受けてJR東日本は2006年2月1日、JR東日本研究開発センター内に「防災研究所」を設立、次いで2007年1月29日には余目駅の屋上に1億円をかけ、JRグループでは初めて(鉄道事業者としても初)のドップラーレーダー(探知可能距離約30キロメートル)を設置し、同年3月より使用を開始した。この事故の対策としてJR東日本が計上した対策費は、防風柵やドップラーレーダーの設置工事を含め100億円を超える。 事故を引き起こした突風への対策として、気象庁気象研究所はJR東日本、鉄道総合技術研究所等と共同して2007年7月より3年計画で事故現場周辺の庄内地域において、突風探知システムの開発へ向けた観測を行った。この研究は、余目駅のドップラーレーダーや庄内空港のドップラーレーダー、25箇所程度の地上気象観測点等から得られたデータを解析およびシミュレーションして突風が発生する詳細なメカニズムを解明し、現在は不可能な突風探知の実現を目指すとともに、将来的には突風探知システムとして実用化することにより鉄道の安全運行に寄与することを目的としている。同年12月には、酒田市内や酒田市沖合いの日本海上において、突風の原因となる雲の渦が発生してから消滅するまでの移動経路や大きさ、風速変化について連続して精密に観測することに成功した。 2016年(平成28年)7月下旬から山形県酒田市内に突風探知の気象異常を目的としたドップラーレーダーが新規着工し、2017年3月27日に観測を開始。そして、ドップラーレーダーを用いた世界初の突風に対する列車運転規制を羽越本線五十川駅 - 女鹿駅、陸羽西線余目駅 - 清川駅間で2017年12月19日10時から実施することがJR東日本により発表された。その後同規制は2019年(令和元年)11月1日よりドップラーレーダーから60km圏内にあたる羽越本線今川駅 - 西目駅間、陸羽西線余目駅 - 清川駅間に拡大、2020年11月1日からドップラーレーダーの観測状況に加え人工知能を活用し、羽越本線今川駅 - 羽後本荘駅間、陸羽西線余目駅 - 清川駅間に拡大された。 この事故を受け、JR東日本は全社的に列車運休にかかわる風速規制を強化し、それまで秒速30メートルで運休となっていた規制値を秒速25mに強化した。この規制強化より、強風・突風による大事故は起こりにくくなった一方、他の私鉄各線より基準が厳しくなったため、JR線は軒並み運休しているにも関わらず、他の私鉄各線は通常運行しているという状況が発生している。平成21年台風第18号上陸の際、首都圏のJR線はほぼすべて運休となった一方で、JR線と併走する京成本線・京急本線といった私鉄各線は運行を続けるなど、会社によって対応がまちまちとなった。そのため、京浜急行電鉄(京急)では振替輸送受託により横浜駅や京急鶴見駅などの対象駅に乗客が殺到したことで駅構内が混雑し、ホーム上に乗客が溢れて危険な状態になったため、全線で運休となった。京急ではその後も列車の遅延が続き、各駅の改札で入場規制がかかる事態となった。このような状況は首都圏を台風が通過したり、東京上空に爆弾低気圧が発生したりした際に起こりやすくなっている。
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