ヴィクトリア朝時代におけるメイドの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 04:25 UTC 版)
「メイド」の記事における「ヴィクトリア朝時代におけるメイドの種類」の解説
ハウスキーパー (House Keeper) ほとんどのメイドを取り仕切る家政婦。自身はメイドではない。メイドの仕事に必要な鍵の管理など、屋敷の管理の全責任を負う。メイドの人事権も持っており、雇用や解雇なども行っていた。相当な下積み期間を経て就く役職であり、ほかのメイドのように相部屋ではなく個室を割り当てられ、食事も個室でとることを許されていたのは上級使用人の特権であった。 レディースメイド (Lady's Maid) レディの一切の身の回りの世話をする。侍女。ほかに、女主人 (Mistress) の宝飾品の管理なども行う。上級使用人の一種で特権があり、女主人の着古した服をもらえることもあった。また、ハウスキーパーの人事権が及ばない特別な地位であるが、若さが売り物の役職であったので、ある程度の年齢になると、解雇や職替えを言い渡されることもあった。 コック (Cook) 上級使用人の一種で、厨房の責任者。料理人。厨房というのは独立した部署であり、ハウスキーパーの管理下にはない。 ウェイティングメイド (Waiting Maid) レディの世話をする。職務内容はレディースメイドと大差ないが、成長したレディに仕えるハウスメイドがこう呼ばれることもあり、地位的には下位に位置する。 チェインバーメイド (Chamber Maid) 主に寝室や客室など、部屋の整備を担当する、専門職メイド。ハウスキーパーの管理下にある。19世紀にはあまりみられなかった種類のメイドであるが、クラス的にはハウスメイドより上で、高給であった。現在の宿泊施設の客室係は、ホテルでも旅館の女中でも英語表記はチェインバーメイドである。 キッチンメイド(Kitchen Maid) コックの指示のもと、台所のひととおりの仕事をこなす。コックの管理下にある。調理はコックが行うのであり、キッチンメイドは、下ごしらえや仕込み、火おこしなど、雑務が中心である。 ハウスメイド(House Maid) いわゆるメイド、といえばこれにあたる。家女中。ハウスキーパーの管理下にある。特にこれといった専門担当を持たず、文字通り、家中の仕事をひととおりこなす。最も一般的な種類のメイド。 パーラーメイド(Parlour Maid) 給仕と来客の取次ぎ、接客を専門職とする。客間女中。ハウスキーパーの管理下にある。接客担当であったため、容姿の良い者が採用され、制服も専用のデザインであることが多かった。 スティルルームメイド(Stillroom Maid) お茶やお菓子の貯蔵・管理を専門職とする。食品室女中。ハウスキーパーの管理下にある。アフタヌーンティの習慣が定着した頃に重宝されたメイド。自らお菓子を作り、パティシエのような仕事もこなす。 ナース(Nurse) 乳母のこと。ハウスキーパーの管理下にある。ナースメイドと呼ばれる部下を従え、自らは子供の躾に専念し、あとの仕事は部下に任せる。なお後にwet-Nurseと呼ばれる。(Nurseが看護婦の意味になっていったため。) デイリーメイド(Dairy maid) バター作りや搾乳を専門職とするメイド。酪農女中。ハウスキーパーの管理下にある。主に地方にみられた。 ランドリーメイド(Laundry maid) 洗濯担当の専門職。ハウスキーパーの管理下にある。使用人の洗濯を担当するものと、主人およびその家族の洗濯を担当するものとに分かれている。 スカラリーメイド(Scullery maid) 鍋や皿を洗ったり、厨房の掃除を行う専門職。コックの管理下にある。キッチンメイドよりも下級に位置し、駆け出しのメイドが厨房配属になるとここから始まる。メイドの中でも下級ということもあり、かなりの冷遇を受けることも多かったようである。 ナースメイド(Nurse maid) 子守担当の専門職。ハウスキーパーおよびナースの管理下にある。基本的にはナースの指示を受け、補佐的な役割を受け持つ。そのなかでも子供を散歩に連れて行くことは、屋敷の敷地外での仕事ということもあり、中心的職務であった。また、ナースメイドはそのほとんどが未成年であり、外出仕事が多かったこともあり、ガールハントの格好の的であったらしい。 トゥイーニー(Tweeny) ハウスメイドとキッチンメイドの両方を兼務するメイド。両方の仕事をこなすため、両職の「間 (between) 」に位置する、ということからこの呼び名がついた。下働きなためかなりの薄給であり、両職にまたがるため、かなりの激務を要した。 メイド・オブ・オール・ワーク(Maid of All Work) 前述した上記すべての役割を1人でこなすメイド。あまり裕福でない家では複数のメイドを雇うのは難しく、ゆえに1人で家中のすべての仕事をこなす必要があった。当時のメイド人口の実に5分の3がこのタイプのメイドであったという説もある。 ステップガール(Step Girl) メイドを雇う余裕のない家で、メイドが「いるかのように」振舞うため、週に1回雇われ、玄関を掃除するメイド。ヴィクトリア朝のイギリスの中産階級以上では、婦人に手袋をさせて「家事をさせていない」ことを誇示するのがステイタスになっていたことから、すこしでも余裕があればすぐにメイドを雇おうとした。しかしその経済力が無くとも外聞を気にしてこの種類のメイドを雇う家もあった。
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