フラットディスプレイパネル用光学フィルム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 03:01 UTC 版)
「フィルム」の記事における「フラットディスプレイパネル用光学フィルム」の解説
フィルムの用途として近年急速に拡大している市場にLCDやPDPなどフラットディスプレイパネル(FDP)の構成材料の分野がある。画面の大型化や表示画像への要求が高まるにつれ、光学特性を有しかつ軽量なフィルムが数多く採用されている。 FDPの急速な普及に伴い、光学フィルムには様々な技術的命題が課せられている。LCD用を例に挙げると、主なものに広幅化とコストダウンがある。FDP用フィルムは基本的に画面サイズよりも小さなフィルムを繋いで使用することができない。従来は32~37インチが主流だったLCDは大型化の流れが進んでおり、今後は40インチ以上のものが中心になると言われている。フィルム原板から切り出す際の効率を理由に、これら大画面化に対応すべく従来の1,500mm幅から2,000mm幅以上のフィルムを量産する技術確立への取り組みが為されている。 一方、トータルコストを抑えるべく、複数の機能を1枚のフィルムに統合する開発も行なわれている。実例として偏光層保護フィルムと位相差フィルムを1層化したフィルムなどが上市されている。 反射防止フィルム(LCD用、PDP用) 「防眩(アンチグレア - AG)フィルム」とも呼ばれ、画面の最も外側にあり保護や防塵とともに外からの光の映りこみを防止する。主に厚さ100µmのPETやTACフィルムに、フッ素モノマーその他複数の屈折率が異なる反射防止材料を多層コーティングして製造される。ディスプレイ以外にも、自動車のメーターパネルや住宅・建築用途などでも使用される。 配向フィルム(LCD用) LCDの液晶層にじかに接触し、あらかじめラビング処理を施して設けられた表面の微細な溝は液晶分子にプレチルト角を付与する。液晶との強い相互作用、高い異方性、高耐熱などの要求物性から、ポリイミド樹脂(PI)フィルムが主に使用されている。しかしながら、異物混入を最大限排除しなければならないLCD製造工程においてダスト発生が起こりやすいラビング処理を排除するため、改良が検討されている。 偏光フィルム(LCD用) LCD内部には、液晶層を挟み、光線吸収軸を直角に交差させた2枚の偏光フィルムが使用されている。その要求物性は単体偏光度(T1)および2枚を平行に重ねた時の偏光度(T2)がより高く、2枚を直交して重ねた時の偏光度(T3)がより低いものが好ましい。材料は基材のPVAフィルムをヨウ素や有機系染料で染色し、2~3倍程度に一軸延伸することで染料分子を規則的に並べ、吸収二色性を持たせている。 偏光層保護フィルム(LCD用) 強度に劣る偏光フィルムを支持・保護する。透明性を持ちつつモアレ模様などの光学的な不均一性が起こらないPETやTACフィルムを主な素材としている。 位相差フィルム(LCD用) 「光学補償フィルム」のひとつ。バックライトの光は1枚目の偏光フィルムで一旦は直線偏光化されるが、液晶層などを通じて楕円偏光化してしまう。これを再び直線偏光に変換する。複屈折率の高さ、位相差の均一性、低吸湿性、耐熱性などの要求に加え、加工性の良さから延伸されたPCフィルムが主に用いられる。最近は、液晶ポリマー(LCP)フィルムや広幅化などに対応するシクロオレフィン樹脂(COP)フィルムまたはアクリル樹脂系フィルムの使用も増えている。 視野角向上フィルム(LCD用) 「光学補償フィルム」のひとつ。黒のコントラストをどの方向から見ても鮮明にするため、屈折率を一定に保持し光の洩れを抑えてコントラストを高めることで視野角を拡げる機能を持ち、LCDの大画面化には欠かせない。TFT液晶向け視野角向上フィルムは「ワイドビュー(WV)フィルム」とも呼ばれ、主にTACフィルムにディコティック液晶を特定の向きに固定しコーティングして製造される。 輝度向上フィルム(LCD用) バックライトから照射される光を集光し、LCDの輝度を高める。異なる屈折率を持つ二層で形成され、波長に合った光を選択して透過させ、反射した光はミラー層で跳ね返して再度輝度向上フィルムに照射する。これを繰り返して透過光の量を効率的に高める。最低限光の三原色に対応するそれぞれの層を積層させる必要がある。材質はアクリル樹脂を積層したPETフィルム、コレステリックLCPフィルム、無変性と変性NYの多層フィルムなどが使用されている。 電磁波シールドフィルム(PDP用) プラズマディスプレイパネルが放出する電磁波(近赤外線 - NIR)を、可視光を透過させつつ遮蔽する。微細な金属粒子をコンパウンドまたはコーティングなどの手法で混ぜ込む方法が主流。
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