キクの花言葉
キクは格調高い花として知られており、花言葉もそのイメージを基調としているといえる。日本においては皇室の紋であるという要素も大きく影響しているだろう。
キクの花言葉の由来
#(1)花姿からつけられたという説キクの花姿はしばしば「気高い」「上品」と称される。確かに、凛とした美しさを放ち、存在感が強いキクはいかにも上品な花である。「高貴」「高潔」「高尚」などの花言葉も、そうした佇まいにちなんでいると考えて不自然でない。
#(2)皇室との関係からつけられたという説
キクの花は「菊花紋章」として図案化され、日本の皇室の紋章として代々用いられてきた。この菊花紋章を最初に用いたのは、平安時代後期から鎌倉時代に実権を握っていた後鳥羽上皇であるとされる。菊花紋章は一般の使用を禁じられることも特になく、江戸時代には庶民の間でも広く使われ、そして日本国のシンボルとして定着するに至っている。
#(3)中国の思想からつけられたという説
昔から中国では、物事を陰と陽に分けるという考え方があった。これを「陰陽」と呼ぶ。陰陽に照らし合わせれば、「9月9日」は1年のうちでもっとも陽の力が働く時期だとされる。縁起がいいとされている奇数が重複する日付だからだ。そして、このころに咲き誇るキクも縁起のいい花だとみなされるようになった。ちなみに、9月9日は「菊の節句」と呼ばれている。菊の節句が広まるにしたがいキクは特別で高貴な花として人々に愛されるようになり、花言葉が成立した。
#(4)平安時代の風習からつけられたという説
後鳥羽上皇の時代の前から、キクは宮廷で親しまれていた花だった。そのころの風習も、キクの花言葉の成立に関係している可能性がある。清少納言の「枕草子」では、「重陽の節会」と呼ばれる行事の描写がなされていた。これは、中国の陰陽にならいキクの縁起のよさにあやかろうとする内容である。まず9月8日に、キクの花に真綿を被せる。そして、9月9日になれば、宮廷の人々はその綿で体を拭いた。こうやって、不老長寿や無病息災を願ったというのだ。重陽の節会が代表するように、キクは平安時代中期ですでに、宮廷において親しまれていた花だった。このころにはもう、「高貴」「高潔」「高尚」などの意味が重ねられていた可能性もある。
キクの英語の花言葉
英語でキクは「chrysanthemum」と書く。そして、英語圏におけるキクの花言葉は「cheerfulness(上機嫌、元気)」「You're a wonderful friend(あなたはとても素晴らしい友達)」などである。東洋圏で「高貴」「高潔」といった花言葉が添えられているのに対し、英語圏ではやや印象が異なっている。その理由は、西洋人にはキクの見た目が非常に鮮やかで、上機嫌に咲き誇っていると見えたからだ。その明るいイメージから、西洋では友人に贈る花としても親しまれてきた。やがて、友人を称える意味の花言葉につながっていったと考えられる。キクの色別の花言葉の解説
#白いキクの花言葉「真実」が白いキクの花言葉だ。従来、白は誠実さや正しさを示す色として用いられてきた。キクの場合も、そのイメージが重ねられた形だ。また、白いキクは式典向きの花なので、厳粛な花言葉がつけられた可能性もある。なお、英語圏での白いキクにも「truth(真実)」の花言葉がつけられている。
#赤いキクの花言葉
「あなたを愛しています」が赤いキクの花言葉だ。赤は情熱や愛情を示す色であり、多くの赤い花には恋愛関係のメッセージが込められている。キクもその例外ではない。さらに、赤いキクは10月の誕生花でもある。そのため、あえて前向きな意味の花言葉がつけられたとも考えられるだろう。ちなみに、英語圏でも赤いキクは「I love you(あなたを愛しています)」の意味を持つ。
#黄色いキクの場合
「破れた愛」が黄色いキクの花言葉だ。黄色は多くの花で、ネガティブな意味を担ってきた。キクにおいても、赤色と対照的な花言葉になっている。そして、英語圏では「slighted love(軽んじられた恋)」の花言葉を持つ。日本の花言葉とは似ているものの、こちらは「相手にされない」「弄ばれた」などのニュアンスを含む。
#紫や緑のキクの花
「私を信頼してください」が紫や緑のキクの花言葉だ。紫には「恋の勝利」や「夢が叶う」との意味もある。
#ピンクのキクの花
「甘い夢」がピンクのキクの花言葉だ。ピンクは少女が好む色であり、あどけなさや可憐さの象徴である。キクにも、比較的女性らしい花言葉がつけられてきた。
#そのほかのキクの花言葉
品種改良によって、さまざまな色のキクが生まれている。オレンジや黒など、変わった色のキクについては花言葉がまだ生まれておらず、全般的な意味の「高貴」「高潔」「高尚」が重ねられる傾向にある。
キクの本数別の花言葉の解説
本数によって、キクの花言葉は変わらない。プロポーズのプレゼントに使うなら「多ければ多いほど思いが強くなる」との説もある。ただ、このジンクスはキクに限った話ではない。一方で、陰陽の関係から「9」はキクにとって縁起のいい数字である。そのため、生け花では「9本生け」というスタイルが確立したほどだ。プレゼントや式典でキクを使うなら、9本にすると「高貴」「高潔」「高尚」といった、ポジティブな花言葉を強調しやすいだろう。キクの怖い花言葉
#スプレーマムの花言葉別名「スプレー菊」とも呼ばれるスプレーマムの花言葉は、一般的なキクと異なっている。「逆境の中でもめげない」「私はあなたを愛する」といった前向きな花言葉にまじって、「気持ちの探り合い」との意味もあるのだ。なぜなら、スプレーマムは枝先にいくつもの花を咲かせるからである。肯定的に解釈すれば、「努力してたくさんの花を咲かせている」や「思いがあふれている」と考えられるだろう。しかし、恋愛に重ねて見てみると、「どれが本当の思いか分からない」状態だともいえる。その結果、「気持ちの探り合い」という、複雑な心理を表す花言葉が生まれた。
#寒菊の花言葉
真冬に花を咲かせるキクの一種、寒菊は贈り物に使われることも多い花だ。寒い季節でもめげずに開花する姿が、「けなげな姿」「真の強さ」といった花言葉に派生していったからである。12月は受験やスポーツの大会が大詰めを迎えている時期でもあるので、激励で贈られる花としても有名だ。その一方で、寒菊には「忍ぶ恋」という、少し怖い意味もある。寒空の下、凍えながら咲く姿がいじらしく見えるからだ。その花姿は、浮気や貧しさに苦しみながら、パートナーを愛し続ける人のようである。恋愛が絡む場面の贈り物としては、寒菊を避けるのが得策だろう。
#「死」の花言葉は正しいのか
一部では、キクに「死」の花言葉があるとの意見もある。しかし、キクそのものに「死」の花言葉はない。こうしたネガティブなイメージが広まったのは、キクが葬式で頻繁に使われる花だからだろう。ただ、キクが葬式で飾られるのは、「高貴」「高潔」「高尚」といった本来の花言葉が、おごそかな儀式にふさわしいからだ。また、キクは長持ちがするうえ、花びらが飛び散りにくいとの特徴も持つ。実用的な面からも、キクは葬式で重宝されてきた。葬式で使われているからといって、ただちに「縁起が悪い」イメージに結びつけるわけにはいかないのである。
※ 花言葉の内容は諸説あります。
- キクの花言葉のページへのリンク