カウンター_(タイポグラフィ)とは? わかりやすく解説

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カウンター (タイポグラフィ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/24 10:26 UTC 版)

ラテン小文字「p」のカウンター部分を赤で示した図

タイポグラフィにおいてカウンター (counter) とは、文字記号の内部に生じる空間のことであり、完全に囲まれたもの(閉じたカウンター)と、部分的に開いているもの(開いたカウンター)がある[1][2]。この空間を形作る線の部分は「ボウル」 (bowl) と呼ばれる[3]ラテン大文字のABDOPQRや小文字のa、b、d、eg、o、p、qには閉じたカウンターが存在する。一方でcfhsなどの小文字には開いたカウンターが見られる。数字では04689がカウンターを持つ。開いたカウンターと文字の外側の間にできる開口部はアパーチャー (aperture) と呼ばれる。

カウンターの開閉

カウンターの開閉は字形の違いを生む要因となる。例えば数字の「4」には、上部が閉じてカウンターを形成する字形「4」と、開いたままの手書き風字形「」がある。

ストーリー

ストーリー (storey) とは、積み重なったカウンターの段数を指し、特にagの字形に関連して使われる。

小文字の「g」には代表的に2つの形がある。一階建てgはフック状のテールを持ち、閉じたカウンターと開いたカウンターが1つずつあり、1つのアパーチャーが生じる。二階建てgはループ状のテールを持ち、2つの閉じたカウンターを形作る。一般にセリフ体では二階建てgが、サンセリフ体では一階建てgが用いられる(例:Times New Roman: gHelvetica: g[注釈 1]

アパーチャーの開閉

書体デザインによって、アパーチャーを開いたままにするか、狭めて閉じるかの傾向が異なる。特にサンセリフ体ではストロークが太くなることが多く、その結果アパーチャーが極端に狭くなる場合がある。

3種類のサンセリフ体。Corbel英語版は開いたアパーチャー、Helveticaは閉じたアパーチャー、Haettenschweiler英語版は狭く凝縮されたデザインで、8と9が小さいサイズでは判別しにくい。

可読性を重視した書体では、ストローク間を大きく取り、アパーチャーを開放的にすることで判読性を高めている。これは遠距離から読む標識や、視覚障害者向けの資料、小さなサイズや低品質の紙に印刷される場合に特に重要である[4]Lucida GrandeTrebuchet MSCorbel英語版Droid Sansなどは低解像度のディスプレイを前提に設計され、FrutigerFF Meta英語版などは印刷用途を想定して設計されたが、いずれも開いたアパーチャーを備えている[5]。このような傾向は1980年代から1990年代にかけて広がったヒューマニスト・サンセリフ体の流行や、画面表示に適した書体の需要とともに一般的になった。

Helveticaは万能とは言えない。小さなサイズでは特に非力となってしまう。「C」や「S」のような字形は内側に湾曲しているため、文字の内外を隔てる白い隙間、「アパーチャー」が狭くなりがちである。英語やその他多くの言語で最も一般的な文字である小文字の「e」は、特に厄介な形をとっている。これらの文字は、たった1ピクセルの違いで全く別の文字に誤認されてしまう危険性もはらんでいる。
トバイアス・フリア=ジョーンズ[6]

Helveticaのようなグロテスクまたはネオ・グロテスクのサンセリフ体はアパーチャーが極めて狭く、ストロークの終端を折りたたんで互いに近接させている。この特徴が、これらの書体に独特の引き締まった印象を与える一方で、似た文字の区別をつきにくくする可能性がある。ImpactHaettenschweiler英語版などの凝縮されたグロテスク体では、ストロークを内側に巻き込んだデザインが、89のような文字を小さなサイズで判別困難にしている。書体デザイナーのニック・シンは、このような傾向が19世紀のディドニ英語版様式と同様に、活字への圧力を分散して摩耗を軽減する意図に由来する可能性があると述べている[7][8]

関連項目

注釈

  1. ^ オペレーティングシステムによっては、例示されているフォントがFreeSans/FreeSerifLinux)、Neue Haas GroteskWindows)などの代替書体に置き換えられて表示される場合がある。

出典

  1. ^ Maxymuk, John (1997) (Google books (snippet view)). Using desktop publishing to create newsletters, handouts, and Web pages. Neal-Schuman. p. 33. ISBN 978-1-55570-265-6. https://books.google.com/books?id=1cyy76-taU4C&q=counter 2009年7月19日閲覧. "Counter is the white space center of enclosed letters like Bb, Dd, Pp." 
  2. ^ Narang, Sumita (2006) (Google books (limited preview)). Designing Websites: According to the Ancient Science of Directions. Smita Jain Narang. p. 74. ISBN 978-81-207-3071-7. https://books.google.com/books?id=zVUCxdx7QYcC&q=typography+counter+aperture&pg=PA74 2009年7月19日閲覧. "Open space in a letter is called the counter or the aperture." 
  3. ^ Ilene Strizver. “Anatomy of a Character”. fonts.com. 2025年9月23日閲覧。
  4. ^ Mercury Text: Features”. Hoefler & Frere-Jones. 2014年11月28日閲覧。
  5. ^ Whited, Billy. “Three Exemplary Typefaces for User Interfaces”. The Typekit Blog. Adobe. 2014年11月28日閲覧。
  6. ^ Covert, Adrian (2014年6月3日). “Why Apple's New Font Won't Work On Your Desktop”. FastCoDesign. 2014年11月28日閲覧。
  7. ^ Shinn, Nick. “Modern Suite”. Shinntype. 2021年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月11日閲覧。
  8. ^ My Type Design Philosophy by Martin Majoor



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