オルタナ右翼とゲーマーゲート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 22:35 UTC 版)
「ゲーマーゲート論争」の記事における「オルタナ右翼とゲーマーゲート」の解説
駿河台大学経済経営学部専任講師でGLOCOM客員研究員の八田真行は、ゲーマーゲート参加者が全員オルタナ右翼になったわけではないとしている。ジャーナリストであるブラッド・グラスゴー(Brad Glasgow)が行った調査では、多くのゲーマーゲートは自分をリベラルだと考えていた。バラク・オバマに投票した人が多く、死刑反対、公的社会保険賛成など政策的にもリベラル志向が強かった。「ゲーマー=オルタナ右翼」という単純な図式ではない。海外の多くのメディアのオルタナ右翼関連の記事では、マイロ・ヤノプルス(Milo Yiannopoulos)がゲーマーゲートとオルタナ右翼の両方で活躍しており、なんとなく両者を関連づけている、ということが多いとしている。 一方で、マイロ・ヤノプルスのように、ゲーマーゲートからオルタナ右翼へ流れた人も相当数いると考えられる。八田真行は、一部のゲーマーゲーターは、ラディカル・フェミニズムをメディアが結託して支持し、ポリティカル・コレクトネスを錦の御旗に掲げ、適当なことを言って自分たちの好きなゲームをおとしめ、ゲームにおける表現の自由を抑圧しようとしており、そうした「敵」に対抗するための手段、理論的支柱として、アイデンティタリアニズムのようなオルタナ右翼の思想を見いだしたと分析している。 ゲームジャーナリストのマット・リーズ(Matt Lees)は、2017年のゲームズコム(Gamescom)にて、オルタナ右翼とゲーマーゲートについてスピーチを行った。このスピーチ動画は『Cultural Complicity - Matt Lees @ Gamescom Congress 2017』というタイトルでYouTubeに公開されているが、公式チャンネルではなく、コメントも禁止されている。彼の主張は以下のようなもの。 ゲームの主な客層は、社会的権利を失った人間である。ゲームというのは権利の奪われた人間が行く家のようなものである。 ある者は数ヶ月数年ゲームをプレイし、人生がまともになって自然にその家から去るが、ある者はそうならず、権利の奪われた人間でありつづける。やがてより悪いところに行き、ヘイトグループに入ったり、テロリストとなる。 女を支配できる、何でも操れると教え込まれた世代が、それらが出来ないと怒り出す。ゲーマーゲートは女性に対するセクシズムである。ゲーマーゲートは皮肉屋と負け犬のムーブメントである。 彼らは(反ポリティカル・コレクトネスを掲げて2016年に当選した)トランプ大統領を支持した。やがてファシズムとなるだろう。 未来にラディカルな考え方は必要ない。『どうぶつの森』は好きだが、ゲーム内で家を買うようなゲームを作り続けるわけにはいかない。 議論の的になるのはよいことである。主流なゲームでは、論議を起こすような事を何もしてない。 暴力性を排除したポリティカル・コレクトネス的なゲームが必要である。ゲームを次世代の子供達に革命を起こすためのツールとすべきである。 ゲーム業界は、世界を変えるために行動を起こすべきである。次の世代は世界を変えることが出来る。資本主義という古いものは必要ない。私の考えるゲームの仕組みは、次世代の考え方を劇的に変えることが出来る。 これに対し、アイルランドのデイブ・カレン(Dave Cullen)は、「Computing Forever」名義で活動している自身のYouTubeチャンネルに、『Communist Indoctrination in Video Games?(邦題:ビデオゲームにおける共産主義の教化?)』という動画を公開した。2019年4月時点で、Computing Foreverの購読者数は約39万人、視聴回数は9,150万人を超えている。彼の主張は以下のようなもの。 マット・リーズはイギリスの欧州連合離脱(Brexit)とドナルド・トランプ派に反対しており、オルタナ右翼とゲーマーゲートを同類と見ている。総じて彼らは支配階級であり、マスメディア派だと伺えている。 「権利の奪われた人間」が、正しい政治的メッセージを受け取らないことで凶暴化し、テロリスト化する事が心配らしいが、主張全てにつっこむのも大変だ。 論議の的になる物はよいと言うが、今の所、論議の的になる物が売上をアップさせた例も証拠もなく、彼の個人的意見でしかない。 デベロッパーにとって最も重要なのは売上であり、2017年まで最も売れたゲームのTOP10に、論議を呼び起こすようなものはない。人々はゲームに政治を求めていない。 「ビデオゲームは君を憎むべき偏屈者やテロリストに変える」と言うが、全部ただの彼の意見であり、科学的研究も証拠もない。ビデオゲームは個人の問題や鬱の解決のツールではない。プロ(医者)に行くほうがよっぽど良い。 彼は若い人たちに共産主義を教え込もうとしている。それこそ若い人をテロリストに変える。 ファシズムも共産主義も最悪なシステムだ。どんな状況であれ二度と試されてはいけない。共産主義はファシズムよりも最悪で、9000万人を殺している。なのに資本主義の終了を訴えかけている。 人々はビデオゲームに何を求めているのだろうか?少なくともポリコレ進歩主義メッセージは求めてない。ゲームにそれを押し付けず、そっとしておいてほしい。 デイブ・カレンの動画には2019年4月時点で約2,300件のコメントが寄せられている。 なお、2018年にアメリカのマリスト大学世論研究所が実施した世論調査では、公の議論が現状よりも政治的に正しくなることや、ポリティカル・コレクトネスに反対するアメリカ有権者が、全体の52%に上ったことが明らかになった。
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