オリエント急行を題材にした作品
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「オリエント急行」の記事における「オリエント急行を題材にした作品」の解説
イスタンブール直通の「オリエント急行」は、上流貴顕の乗車が多く、東洋に連なる列車であることから、エキゾチシズムを伴った豪奢な乗り物というイメージが世界的に広く敷衍していた。また国際的な紛争多発地域であるバルカン半島を経由ルートとしており、第二次世界大戦後の東西冷戦下にはイデオロギーの相違する多数の国々を貫通して運行された。 このような特徴は、古くから興味深い題材として作家たちの関心を集めることにもなり、しばしば小説の「走る舞台」に取り上げられた。モーリス・デコブラの『寝台車のマドンナ』(1925年)にはオリエント急行をはじめとする寝台列車が登場する。グレアム・グリーンによる群像劇的な小説『スタンブール特急』(1932年)は、イスタンブール行のオーステンデ・ウィーン・オリエント急行が舞台である。またアガサ・クリスティは、考古学者である夫マックス・マローワンが中東方面に赴く際に、たびたびシンプロン・オリエント急行に同伴して乗車したといい、同急行を舞台とした『オリエント急行の殺人』を1934年に発表している。この作品は1974年にシドニー・ルメット監督で映画化されており、蒸気機関車はフランス国鉄が動態保存していた230G-353を利用した。この機関車は既述の通り、1988年に日本まで走ったノスタルジー・イスタンブール・オリエントエクスプレスのパリ発車時のスタートを飾る機関車として、その大役を果たしている。 一方、東ヨーロッパ側からは、オリエント急行を批判的に描いた作品も存在する。ブルガリアの作家アーレコ・イワニコフ・コンスタンティノフの小説『バイ・ガーニュ』(1895年)はオリエント急行に乗った成金商人を風刺的に描いている。 第二次世界大戦後には、イアン・フレミングがスパイ小説「007シリーズ」のひとつとして『ロシアから愛をこめて』(1957年)を書いている。作中でジェームス・ボンドはイスタンブールからディジョンまでシンプロン・オリエント急行に乗車する。この小説はのちに1963年にショーン・コネリー主演で『007 ロシアより愛をこめて』として映画化されており、「オリエント急行」でのシーンも見せ場のひとつとして描かれている。 また、この列車を題材とした音楽としては、イギリスの作曲家 フィリップ・スパークによるブラスバンド編成の作品『オリエント急行(Orient Express)』(1986年)が広く知られる。この曲はスパークの代表曲のひとつとされ、欧州放送連合(EBU)のNew Music for Band Competitionで第1位を獲得した。急行列車の出発から到着までの様々な場面を音楽によって描いた、輝かしい曲想を特徴とする楽曲である。曲は、出発時・走行時・到着時等における蒸気機関車の走行音、汽笛の音、車掌の笛の音などが描写され、旅情を伝える一方、中間部では、故郷への郷愁を想起させるようなやや感傷的な旋律も登場する。10分足らずの単一楽章の楽曲で、オリエント急行の旅を描くこの曲は、のちに作曲者スパーク自身の手によって吹奏楽編成へも編曲されており、日本国内においても各種学校から市民バンドに至るまで多くの楽団によってコンサートやコンクールなどの場にて頻繁に演奏され、人気がある。この他、ジャズ/フュージョンの楽曲にもジョー・ザヴィヌルが「Orient Express」という楽曲を作曲している。 日本国内で発行された漫画『月館の殺人』(原作・綾辻行人、作画・佐々木倫子)では、物語の舞台となる夜行列車「幻夜号」の車両や接客サービスの参考にされている。また、オリエント急行を舞台としたサスペンス仕立ての漫画『マダム・プティ』(高尾滋)もある。ギャンブル漫画『100万$キッド』(石垣ゆうき、原案協力・宮崎まさる)の第65話(熱闘!!オリエント急行!!の巻)から第71話では、オリエント急行内でのスタッド・ポーカー対決が描かれている。
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