エンジン・ドライブトレイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 03:14 UTC 版)
「スバル・アルシオーネ」の記事における「エンジン・ドライブトレイン」の解説
エンジンは、レオーネ1.8 L GTターボと共通の水平対向4気筒OHC「EA82ターボ」(最高出力:135 PS / 5,600 rpm、最大トルク:20.0 kgf·m / 2,800 rpm(いずれもグロス値))を搭載。低くスラントしたフロントノーズのために補機類配置が見直されている(スペアタイヤは、エンジンの上でなく、後部トランク内に収納されている)。 VRターボAT車には、急加速時、急制動時、雨天時に、アクセル、ブレーキ、ワイパーと連動して、自動的にAWDに切り替わる 「AUTO-4WD」 システムが搭載されていた。これは当時パーツサプライヤーの供給するABSの作動精度が現在に比べ著しく甘く、そもそも前後のドライブトレインを連結したAWDなら、加速・制動時のホイールスピンやロックを防ぐために効果的であることから考えられたシステムで、現在のAWDの高度な駆動力制御の先鞭をつけたものといえる。VRターボの5速MT車は、副変速機「デュアルレンジ」を装備しない、当時の富士重工業のAWDラインナップの中でも最も簡潔なシステムが与えられた。VSターボは、国内向け3代目レオーネにはFF+EA82型ターボの設定がなかったため、当時の富士重工業のラインナップの中でも異色の存在だった。 1987年7月のマイナーチェンジで追加された2.7VXには、既存のEA82型エンジンに2気筒を追加した、水平対向6気筒OHC「ER27」エンジンが搭載された。ボアおよびストロークは「EA82」と共通であるが、このエンジンがアルシオーネ以外に搭載されることはなく、事実上、専用設計となっている。最高出力:150 PS / 5,200 rpm、最大トルク:21.5 kgf·m / 4,000 rpmを発生した。 2.7VXおよびVRには、MP-Tの油圧をパルス制御することによって、前後の駆動力配分を自動的かつ連続的に変化させる 「電子制御アクティブトルクスプリット4WD(ACT-4)」 を搭載。これは2WDに比べ駆動力に優れる AWD 本来の特性に、前後の駆動力を変化させることで自動車の操縦性まで変化させることを可能にした画期的な駆動力制御で、現在の 「VTD-AWD」 につながる富士重工業のAWDシステムの中核に位置する技術である。また、2.7VX、VRのATには、それまでの3速に代わり、4速の 「E-4AT」 が与えられた。6気筒・4気筒シリーズともにトランスミッション・ギヤ比は共通である。また、このマイナーチェンジで、VRの5速MT車は、それまでのパートタイムAWDから、レオーネRX-II と同じバキューム・サーボ式デフロック機能を備えた、遊星歯車センターデフ付のフルタイムAWDに改められた。 2.7VX 専用の水平対向6気筒エンジン「ER27」は、1985年10月、第26回「東京モーターショー」に参考出品されたアルシオーネベースのコンセプトカー「ACX-II」で公開されている。「ACX-II」は走行可能なコンセプトカーで、走行シーンも公開されたが、この時点では、同時に参考出品されていた「レオーネ3ドアクーペ・フルタイム4WD」と共通のバキューム・サーボ式のデフロックを備えた傘歯車式センターデフ・マニュアルトランスミッションとの組み合わせで、ブリスターフェンダーによって3ナンバーに拡幅された全幅やショーカーらしい数々のギミックは明らかに商品化を前提にしたものではなかった。 しかし、1985年9月の「プラザ合意」以降の急激な円高は、それまで廉価を売り物にアメリカ市場でのシェアを拡大してきた日本車に、軒並みアメリカへの工場進出によるアメリカ社会との共存と付加価値の高い高級化への路線転換を迫った。 当時、レオーネとアルシオーネ、収益率の悪いジャスティしか持ち駒のなかった富士重工業にとって、主要マーケット・アメリカでの深刻な販売不振の打開策として急遽「ER27」エンジンの市場投入は決定した。しかし、商品化に2年もの時間を必要とした上、レオーネの狭いエンジンルームには搭載することは不可能で、この後、1980年代後半にかけての富士重工業の混迷振りを象徴するような商品化となったのは皮肉な話である。
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