「責任ある漁業」へ向けたFAO、各国・地域の取り組み
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「責任ある漁業」の記事における「「責任ある漁業」へ向けたFAO、各国・地域の取り組み」の解説
「責任ある漁業」の重要性は、1995年12月に京都でFAOの協力の下日本政府が開催した「食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議(京都会議)」を経て、1996年11月にローマでFAOにより開催された「世界食料サミット」においても確認された。その後、FAOは、「行動規範」の趣旨に従い、過剰漁獲能力の管理、海鳥の混獲削減及びサメ類の保存管理に関する国際行動計画を関係国とともに策定し、1999年2月の第23回FAO水産委員会で採択した。さらに、不法、無報告及び無規制(IUU)漁業を防止、阻止及び排除するための国際行動計画も同様に2001年3月の第24回水産委員会で採択した。また、「行動規範」の実施を促進するために、FAOは、「責任ある漁業のための技術指針」を策定している。現在以下の29の技術指針が策定されており、今後も同様の指針が策定されることが期待される。 1. 漁業操業 (Fishing Operations) 1-1. 漁船モニタリングシステム (Vessel monitoring systems) 1-2. 漁業における海鳥混獲削減 (Best practices to reduce incidental catch of seabirds in capture fisheries) 1-3. 漁業における海上安全性の向上 (Best practice to improve safety at sea in the fisheries sector) 2. 予防的アプローチの漁業及び新たな魚種の導入への適用 (Precautionary approach to capture fisheries and species introductions) 3. 漁業の沿岸域管理への統合 (Integration of fisheries into coastal area management) 4. 漁業管理 (Fisheries Management) 4-1. サメ類の保存・管理 (Conservation and management of sharks) 4-2. 漁業への生態系アプローチ (The ecosystem approach to fisheries) 4-2-1. 漁業への生態系アプローチのための生態系モデリング (Best practices in ecosystem modelling for informing an ecosystem approach to fisheries) 4-2-2. 漁業への生態系アプローチの人的・社会的側面 (Human dimensions of the ecosystem approach to fisheries) 4-3. 漁獲能力管理 (Managing fishing capacity) 4-4. 海洋保護区と漁業 (Marine protected areas and fisheries) 5. 養殖開発 (Aquaculture Development) 5-1. 養殖餌料製造の適切な実施 (Good aquaculture feed manufacturing practice) 5-2. 水生動物の責任ある移動のための健康管理 (Health management for responsible movement of live aquatic animals) 5-3. 遺伝子資源管理 (Genetic resource management) 5-4. 養殖への生態系アプローチの適用 (Ecosystem approach to aquaculture) 5-5. 養殖への天然魚の餌料としての利用 (Use of wild fish as feed in aquaculture) 5-6. 養殖への天然種苗の利用 (Use of wild fishery resources for capture-based aquaculture) 6. 内水面漁業 (Inland Fisheries) 6-1. 漁業のための内水面の復興 (Rehabilitation of inland waters for fisheries) 7. 責任ある水産物利用 (Responsible Fish Utilization) 8. 海洋漁業の持続的開発に関する指標 (Indicators for Sustainable Development of Marine Capture Fisheries) 9. 不法、無報告及び無規制操業を防止、阻止及び排除するための国際行動計画の実施 (Implementation of the International Plan of Action to Prevent, Deter and Eliminate Illegal, Unreported and Unregulated Fishing) 10. 貧困緩和及び食料安全保障に対する小規模漁業による貢献の促進 (Increasing the Contribution of Small-scale Fisheries to Poverty Alleviation and Food Security) 11. 責任ある水産貿易 (Responsible Fish Trade) 12. 情報と知識の共有 (Information and Knowledge Sharing) 13. 遊漁 (Recreational Fisheries) 米国は、「行動規範」の実施のために、1997年「行動規範の実施計画」を、さらに、2012年にその改訂版を策定した。カナダも、1998年に「責任ある漁業操業のためのカナダ行動規範(コンセンサス・コード 1998)」を策定した。その他の国々も、「行動規範」そのものではなくても、それを実施するために作られた国際行動計画を実施するための国内行動計画を策定することにより、国内での実施促進に取り組んでいる。例えば、過剰漁獲能力の削減については米国が、海鳥の混獲削減のためには米国、日本、豪州、ニュージーランド等が、サメ類の保存管理については米国、日本、豪州、英国等が、IUU漁業対策では米国、韓国、EU、豪州、ニュージーランド、カナダ、チリ等が、国内行動計画を策定している。 東南アジア漁業開発センター(Southeast Asian Fisheries Development Center (SEAFDEC))は、東南アジア地域において「行動規範」の地域化を進め、漁業操業、養殖、漁業管理、漁獲後の処理と貿易の4つの分野で地域ガイドラインを作成した。世界各地に作られている地域漁業管理機関(Regional Fisheries Management Organizations: RFMOs)においてもそれぞれの対象海域、対象魚種、対象漁業種類に関する「責任ある漁業」への取り組みを行っている。例えば、大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas (ICCAT))は大西洋のまぐろ類に関し、科学的根拠に基づく保存管理措置を決めるとともに、その一環として統計証明制度を導入しまぐろ類の原産国を明確化することにより違法に漁獲されたまぐろの国際的な取引を規制しようとする等、責任あるまぐろ漁業を実現するために国際的な取り組みを行っている。また、全米熱帯まぐろ類委員会(Inter-American Tropical Tuna Commission (IATTC) )は、東部熱帯太平洋においてまぐろ類を対象とするまき網漁業によるイルカの混獲防止のための国際取り決めを作り、その大幅な削減に成功している。
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