「責任ある漁業」の背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/21 09:26 UTC 版)
「責任ある漁業」の記事における「「責任ある漁業」の背景」の解説
「責任ある漁業」理念は、この15年ほどの間に漁業、環境及び貿易をめぐる国際情勢を背景にFAOを中心に形成されてきた。FAOの出版している「行動規範」には別添として同規範策定の背景とその経緯が記されており、これはそのまま「責任ある漁業」理念形成の背景と経緯とも読み換えられる。 1991年3月に開催された第19回FAO水産委員会(COFI)において、FAOに対し「責任ある漁業」理念とそれを実現するための「行動規範」の策定をすることが勧告された。その背景には、重要な漁業資源の過剰開発、生態系への悪影響、それらに伴う経済的損失や貿易問題などが漁業の長期的な持続性を脅かすのではないかという懸念があった。1992年5月メキシコがFAOとの協力の下にカンクンで開催した「責任ある漁業に関する国際会議(カンクン会議)」で採択された「カンクン宣言」は、環境と調和した持続的な漁業資源の利用、生態系や資源に悪影響を及ぼさない漁獲及び養殖の実施、衛生基準を満たす加工を通じた水産物の付加価値向上、消費者への良質の水産物を供給するための商業活動、の4点を包括する概念として「責任ある漁業」を提示した。さらに、同会議は、FAOに対し「責任ある漁業に関する国際行動規範」を策定するよう要請することも合意した。この会議の直後、同年6月に開催された「環境と開発に関する国連会議(UNCED)」においても「責任ある漁業」への取り組みとFAOの関与が確認された。さらに同年9月に開催されたFAO公海漁業技術会合では特に公海漁業に関する「行動規範」策定が勧告された。 これらの合意と勧告を受けて、FAOは、先ず、現在「行動規範」第6条とされている「一般原則」の策定から着手し、その後、その一般原則をベースとして他のより技術的な条項の策定も進めていった。そして、UNCEDを機に国連の場で協議が行われ1995年8月に合意された「国連公海漁業協定」の内容と公海上の漁業に関しては整合性を取りつつ、1995年10月に第28回FAO総会で「行動規範」が採択された。また、カンクン会議に端を発して、同時並行的に策定が進められていた「公海上の漁船による国際的な保存・管理措置の遵守を促進するための協定(フラッギング協定)」も1993年11月に第27回FAO総会で採択され、「行動規範」と不可分一体をなすものと位置付けられた。
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