「本当の最終回」
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「ドラえもんの最終回」の記事における「「本当の最終回」」の解説
上記の2エピソードが便宜上の「最終回」であるのに対し、「さようなら、ドラえもん(連載時:みらいの世界へ帰る)」は藤子F自身が正式な最終回として執筆したエピソードである。 『驚きももの木20世紀』(朝日放送・テレビ朝日系)の1997年8月8日放送分「ドラえもん伝説 永遠の漫画少年 藤本弘」によると、テレビアニメ第1作が既に放送終了していたことや、藤子Fが『みきおとミキオ』など新しい連載を抱えていた事情などがあったことから、当初は「みらいの世界へ帰る」を本当の最終回として執筆し連載を終了する予定であった。ただし、このエピソードが掲載されたのは『小学三年生』1974年3月号のみであり、他学年の同月号においては、読者が学年誌を読むのが最後となる『小学六年生』を含めドラえもんとの別離をテーマにした作品は掲載されなかった。 しかし、次の作品のことを考えていても『ドラえもん』のことが頭から離れなかった藤子Fが、思い直して「帰ってきたドラえもん(連載時:帰って来たドラえもんの巻)」を執筆。翌月号である『小学四年生』4月号に掲載されたことにより、連載は一転続行されることとなった(「みらいの世界へ帰る」掲載号発売時には既に連載続行が決定していたため、欄外にその旨が注記されていた)。 「さようなら、ドラえもん」 『小学三年生』1974年3月号掲載(本誌掲載時タイトル:「みらいの世界へ帰る」) てんとう虫コミックス6巻収録 あらすじ いつもの通り、ジャイアンにいじめられて帰ってきたのび太。ケンカに勝てる道具を貸してほしいとドラえもんに甘えるが、ドラえもんはいつになく冷たい調子でつっぱねる。様子がおかしいと思ったのび太がドラえもんを問い詰めると、ドラえもんは未来の世界に帰らなければならなくなったと告白する(理由は不明)。驚いたのび太はドラえもんにすがりつき引き止めるが、ママからは「ドラちゃんにも都合があるのよ。わがままいわないで」となだめられ、パパからは「人に頼ってばかりいてはいつまでも一人前になれない」と叱られ、悩み抜いた末にドラえもんとの別れを受け入れることを決意する。 最後の夜、眠ることのできない二人は一緒に夜の散歩に出かけることにする。涙を見せまいとしたドラえもんと途中で別れたのび太は、夜中に寝ぼけて徘徊するジャイアンをからかい喧嘩になる。何度も何度も殴り倒されるが、のび太は「自分がしっかりしないとドラえもんが安心して未来へ帰ることができない」と必死でつかみかかり、ボロボロになりながらもついに最後にはジャイアンに「おれの負けだ」と言わせる。駆けつけたドラえもんに抱き起こされたのび太は、自分一人の力でケンカに勝ったことを報告する。ドラえもんに担がれながら家に帰る道中、のび太はドラえもんに、もう自分は大丈夫だから安心して未来へ帰って欲しいとうわごとのように繰り返す。肩を借すドラえもんは、大泣きしながらのび太のその言葉を聞いた。 帰宅したのび太は、疲れやドラえもんを安心させたからか、静かに眠り始める。その横に座り、のび太の寝顔を涙を流しながら見守っていたドラえもんは、部屋に朝の陽光が射した時には、もう、どこにもいなかった。 起床したのび太は只の引き出しに戻った机を見つめ、ママから「ドラちゃんは帰ったの?」と問われ、「うん」と答える。ドラえもんがいなくなった部屋でのび太は、ドラえもんがいなくなった寂しさを感じながらも乗り越えようとするのだった。 「帰ってきたドラえもん」 『小学四年生』1974年4月号掲載(本誌掲載時タイトル:「帰って来たドラえもんの巻」) てんとう虫コミックス7巻収録 あらすじ 「二度と帰ってこられない」と言ってドラえもんが未来へ帰った後、心にぽっかり穴が開いたように毎日を過ごしていたのび太。何をするでもなくぼんやり日々を過ごしていたが、ママに「元気出しなさい」とたしなめられて気をとりなおす決意をする。だが、意気揚々と外へと繰り出すも、スネ夫のウソに騙されて野良犬に追い回される羽目にあう。ようやく逃げ切ったところへ今度は血相を変えたジャイアンが現れ、いるはずのないドラえもんを見かけたとのび太に告げる。ジャイアンの言葉を信じたのび太はドラえもんが帰ってきたのだと大はしゃぎするが、しかしその日は4月1日。ドラえもんを見かけたというのは四月バカのウソだと言われ、ジャイアンとスネ夫に大笑いされる。 だまされて部屋で涙に暮れるうちに、のび太はドラえもんが「ぼくが行った後、どうしても我慢できないことがあったらこれを開け」と言って残していってくれた箱のことを思い出す。ドラえもんの形をしたこの箱は、開ければそのときにのび太にとって必要なものがひとつだけ出てくるというのだ(アニメ版では“使えるのは一度だけ、開封の瞬間が最初で最後だから熟考せよ”と説明されている)。箱を開けて出てきたのは、これを飲んでなにかをしゃべると逆の事柄が現実に起こって、しゃべったことがすべてウソになる飲み薬「ウソ800(うそえいとおーおー)」だった。「ウソ800」を飲んだのび太は道具の力を駆使してジャイアンとスネ夫に仕返し2人を嘲笑う(「今日はいい天気だ」と言って大雨を降らせ、「激しい雨が降ってきた」と言ってカンカン照りにするなど)。しかし、ドラえもんのいない現実を前に空しさを覚え、ママの「ドラちゃんはいたの?」との問いかけに対し「ドラえもんは帰ってこないんだから」「もう、二度と会えないんだから」と、ふと本音を呟くのだった。 しかし、部屋に戻るとそこには二度と帰ってこられないはずのドラえもんがいた。「ウソ800」の力で「ドラえもんは帰ってこない」「もう、二度と会えない」という呟きが「ウソ」となり、「ドラえもんが帰ってくる」「再び会える」ことになったのだ。ドラえもんと抱き合ったのび太は大泣きし、「うれしくない。これからまた、ずうっとドラえもんといっしょに暮らさない」と逆さ言葉で再会を喜ぶのだった。 備考 1981年1月3日にアニメ版が放送。その後1994年と1997年のスペシャル放送で再放送され、1998年には「さようなら、ドラえもん」と合わせて『帰ってきたドラえもん』のタイトルで映画化された(感動中編シリーズ第1作)。2009年には第2作第2期でも「さようなら、ドラえもん」と同時放送という形でアニメ化された他、2014年公開の映画『STAND BY ME ドラえもん』でもこの2エピソードの内容が含まれている。 なお、藤子プロが日本国外では「帰ってきたドラえもん」を放送しないという方針を採ったため、国外未放送となっている。これを踏まえて、『決定!これが日本のベスト』(テレビ朝日)にて、複数の外国人にこのエピソードを見せ反応をうかがうといった企画も行われた。しばしば海外における「幻の最終回」として紹介されることがあるが、日本で発売されているDVDの『ドラえもんコレクションスペシャル 春の4』に収録されているため、これを入手してリージョンフリーまたは日本のリージョンコードに対応しているDVDプレイヤーを使用すれば日本国外でも視聴は可能である。ただし、映画版『帰ってきたドラえもん』に関してはこの限りではなく、2005年にスペインでテレビ放送されている。
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