《あなた》の敬語
「あなた」は相手を尊敬して呼ぶときの話し言葉として使われていました。しかし、敬う表現としてはあまり使われなくなった表現で、「失礼にはならない」程度です。自分と対等か、もしくは目下の人を呼ぶときに使われます。
目上の人に対しては、「あなた」ではなく名前や敬称を使うのが適切です。名前と一緒に役職名をつけたり、先輩や先生などの肩書きで呼ぶ方が無難です。さんをつけて、「〇〇さん」と名前で呼んでおけば間違いないでしょう。個人名を頭につけて「〇〇先生」や、「〇〇先輩」などと、親しみを込めた表現方法もあります。
「あなた」を複数の人たちに向けて使うときには、「あなた方」「あなたたち」となります。他にも複数を表現する接尾語としては、「ども」「ら」がありますが、「方」が最も丁寧な言い方です。「先生方・お客様方」などと複数形にすることができます。
「あなた」の敬語表現としては、「貴殿」や「貴台」が挙げられます。「貴殿」はもともと男性を表す表現でしたが、女性に対して使っても問題はないです。「貴殿」よりも、「貴台」の方がやや丁寧な表現です。ただこれらは、あまり口語では使いません。
「あなた様」は少し幼稚な印象を受ける表現ですが、実は正しい敬語表現です。相手の名前が判明していない時などは、使うことができます。こちらも主に文書で使われることが多く、話し言葉として使うのはやや難しいです。目の前で顔を合わせて言われると、少しよそよそしいと相手に受け取られる可能性があります。
「あなた」の敬語の最上級の表現
最上級敬語は、日本語における1番上の尊敬表現のことです。天皇や皇族、あるいは外国の国王・王族などに使われる敬語です。天皇や皇后・皇太后への敬称として「陛下」が使われます。ニュースなどでもよく使われる表現です。皇族の敬称は「殿下」が使われます。いずれも特別な意味を持つ敬語なので、いくら目上の人にでも、敬語としてこのような表現を使うことはありません。「あなた」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメールや手紙などでは、あなたの敬語表現としては「貴殿」「貴台」が使われるのが一般的です。「貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などといった使われ方です。「貴台のますますのご活躍を」といった表現もあります。名前の敬称は、「様」や「さん」が一般的です。メールのような文章のときには、「様」を使うことが多いです。「殿」はあまり一般的な敬語表現としては使用されません。「殿」は、「貴殿」に使われるだけです。名前の後に「殿」をつけることで少し失礼だと受け取る人もいます。手紙やビジネスメールでは、「貴殿」を使っておけばまず間違いがありませんが、若干堅い印象を与えることもあります。名前を昔から知っていて、関係性が近かったり、普段からよく会って話をするような間柄なら、名前と敬称か、役職名で充分です。
「あなた」を上司に伝える際の敬語表現
「あなた」は目上の人に直接使う言葉ではなく、対等か目下の人に使う呼び方です。同僚でも、「あなた」をネガティブなイメージで捉える人がいる中で、上司に対して「あなた」と呼ぶのは間違いです。相手を敬って使ったつもりでも、使うべきではありません。上司を呼ぶときには、役職名で呼んでおくと間違いがないです。〇〇部長や、〇〇課長など役職をつけて呼ぶと、悪い印象を与えません。役職で呼ばれることを中には嫌う人もいるため、その時にはさん付けで呼びます。また、普段からお世話になっていて関係が近い上司なら、さん付けも不自然ではないケースもあります。関係性を考えて、失礼にあたらない呼び方を工夫するとスマートです。社内の慣習やルールで、お互いに全てさん付けで通す企業もあります。そのような場合、上司に対してさん付けで呼ぶことが可能です。
「あなた」の敬語での誤用表現・注意事項
「あなた」を敬語で表現する時、話し言葉と文章とでは、少しニュアンスが違ってくるので注意が必要です。面と向かった会話の中や電話で、「貴殿」とはあまり言いません。相手への敬意を表すための敬語表現なのに、相手に違和感を与えることがあります。シーンによって使い分けられればベターです。「あなた」は漢字で表記すると「貴方」となり、いかにも敬語表現のように見えます。しかし、単に「あなた」では敬語表現には当たらず、取引先や上司・先輩に対して使うのは避けた方が良いです。同僚や目下の人に対して使う言葉なので、「あなた」はやや失礼にあたります。
「あなた」の敬語での言い換え表現
「あなた」の言い換え表現として文章にするなら、「貴殿」がポピュラーです。同等以上の、主に男性に用いられます。さらに敬った表現を使いたいときには、「貴台」があります。取引先の相手方にメールをする時などは、「貴殿」・「貴台」を使えば間違いがないです。同等以上、目上の女性に対して、「貴女」という言い換え表現もあります。近しい先輩などには、「貴兄」とも言い換えられます。主に男性で使用され、軽めの敬意と親しみの気持ちが込められている敬語です。《あなた》の敬語
「あなた」の敬語表現
「あなた」という言葉は、もともと方向を示す意味として使われていました。「こちら」を指していう「こなた」に対して、「むこう」を示す「あなた」というような用いられ方です。その後二人称の人物を呼ぶときの人称代名詞として定着し、この言葉自体に敬意が含まれている時代もありましたが、時が進むにつれ少しずつ用法が変化するなかで、敬語としての意味合いは薄れてしまいました。そのため、目上にあたる相手に呼びかける場合には、そのままで用いず敬語表現に変換する必要があります。たとえば年長者に対して「先輩」、教師に対して「先生」、会社の上司に対しては「課長」「部長」などと、日常生活やビジネスの現場で敬意をこめた呼びかけはよく耳にする表現です。年長者や恩師、上司、会社の取引先などに対しては「あなた」という呼びかけが、たいへんな失礼にあたることを、くれぐれも押さえておきましょう。「あなた」の敬語での誤用表現・注意事項
目上の人に「あなた」と呼びかけるのが礼を失することだという以外にも、「あなた」の敬語表現については注意を要するポイントがあります。たとえば手紙やメールなどで、「貴方」という表現をするケースが見られますが、「貴」という敬意を示すイメージの漢字を交えることで、相手を敬っている意味合いが込められている印象があります。呼びかけはだめでも表記上はいいだろう、というわけです。たしかに「貴社」という表現が敬語として一般的であるように、「貴方」も敬意表現だと思われるかもしれません。しかし、そもそも「あなた」という言葉自体に敬意が含まれていないので、「貴方」と表記しても敬語にはならず、いわば当て字の一つとして用いられているにすぎません。同様な表現に「貴公」「貴女」などがあります。普通に「あなた」と呼びかけるよりも、相手を大事に思っている気持ちは伝わるかもしれませんが、敬語として使用するにはなじみません。「あなた」の敬語での言い換え表現
「あなた」に敬意を込めた言い換えとしては「あなた様」という呼びかけが最も適切です。相手の名前に「様」を付けても敬語として伝わります。文書の中では、「貴殿」という表現を使うこともできます。さらに敬意を込めるのなら「貴台」と書き換えてもよいでしょう。「貴職」という言い方もありますが、これは相手が公務員の場合に限ります。「〇〇社長」のように名前に役職名を付けても敬語として通用します。ただし、その場合は名前+役職名自体が敬称になるので、重ねて「様」を付けないということに注意が必要です。- 《あなた》の敬語のページへのリンク